豊臣兄弟!

【豊臣兄弟!】少年時代の秀吉が蜂須賀正勝の刀を盗んだ驚きの逸話

大河ドラマ「豊臣兄弟!」皆さんも楽しんでいますか?

第7回放送「決死の築城作戦」で初登場した蜂須賀正勝(高橋努)と刺激的な出会いを果たした正勝と秀吉ですが、実はかなり昔から面識がありました(諸説あり)。

今回は『常山紀談』より、少年秀吉(日吉)と蜂須賀正勝(小六)のエピソードを紹介したいと思います。

「刀が欲しくば盗んで見せよ」

画像 : 日吉丸。月岡芳年「本朝智仁英勇鑑 蜂須賀小六正勝」より

ある時、日吉は小六の刀が欲しくなりました。

とても立派でよく斬れる。自分の腰に佩いたなら、さぞカッコよかろうなぁ……そこで日吉は、小六にどうか譲ってほしいとお願いします。

欲しいものを欲しいと言える欲望に正直なところが、日吉の憎めなさだったのでしょうか。

小六はしばし考えて、こう言いました。

「この刀は、昔さる所から盗みとったものだから、そなたもわしから盗みとるがよい」

こうして二人の間で、ちょっとした勝負が始まりました。

勝負のルールは、おおむね以下の通りです。

一、勝負の日限は3日。

一、盗む現場を発見されたら失格。

一、あくまで盗みとること。強奪は禁止。

一、日吉が一人で盗みとること。協力禁止。

一、小六も一人で守り切ること。協力禁止。

一、刀は小六の居室に飾り、隠すなどは禁止。

果たして日吉は、首尾よく小六から刀を盗みとれるのでしょうか。

日吉はなかなか動かない

画像:蜂須賀小六 public domain

さて、あっという間に最終日を迎えました。まだ刀は盗まれていません。

「おい猿(日吉)、もう刀は諦めたのか?」

毎晩厳重に警戒しているから、日吉も手を出せないのだろう……小六はそう思っていました。

わっぱ相手に、少しムキになりすぎたか。いやいや、甘やかしたらつけ上がってしまう。とは言え、何もなしでは面白くなかろう。勝負が終わったら、粗末な刀でもくれてやるか……などとも考えていたかもしれません。

しかし日吉は不敵な笑みを浮かべて言いました。

「いえいえ、勝負は最後まで分からないから面白いのです」

その面構えや眼光から、負け惜しみでないことが見てとれます。

やはり最後まで油断はならんな……小六はあくびを噛み殺しながら息を呑みました。

雨の夜に

画像 : 蓑笠姿の日吉(イメージ)

とは言ったものの、一体どうすればよかろうか……日吉は自分の部屋に寝っ転がりながら、思案に暮れます。

その内、雨が降り出しました。雨音を聞いてひらめいた日吉は、笠をかぶって蓑(みの)を着て、小六がいる部屋の庭先へ向かいます。

いっぽう小六は、庭先で人の気配を感じました。

「何じゃ?」

障子をのぞくと、笠と蓑をつけた日吉が、茂みに身を隠しているようです。

なるほど。猿めは廊下からでなく、庭先から忍び込んでくるつもりか……小六は一層気合いを入れて刀を見張りました。

が、ここ数日ほとんど寝ておらず、睡魔との戦いは一進一退。小六はそろそろ限界のようです。

対する日吉はと言うと、つけていた笠と蓑を庭木に結びつけ、早々に自分の部屋へ戻っていきました。

小六からは、あたかも自分がまだ雨の中で待機しているように見せかけています。かくして一晩中降り続いた雨は、笠と蓑を叩き続けるのでした。

そして夜が明け、一番鶏の声で小六は目を覚まします。気づけば刀がありません。

「やられた!」

連日の疲れで、すっかり寝入ってしまった小六はまんまと刀を盗まれてしまったのです。

蓑笠に当たる雨音から「日吉は庭にいる」とばかり思い込み、つい屋内に対する警戒が緩んでしまったのでしょう。

「約束どおり刀はくれてやろう……それにしても、まったく盗人の上前をはねるとは、末恐ろしい小猿じゃわい」

感心するやら呆れるやら。かくして刀は日吉のものとなったのでした。

終わりに

画像 : 落合芳幾「太平記英勇傳 八菅與六正勝(蜂須賀小六正勝)」

(六十六)日吉蜂須賀小六の下にありけるに小六の所持なせる刀如何にも鋭利(よか)りければ恋々の情止み難く終に小六に向ふて之(これ)を乞ひけるに小六の云へるやう此の刀は嘗て盗み取りしものなれば汝(なんじ)も亦(また)宜しく之を竊み(盗み)取るべし然らば之を與へんとて日限を定めて約せしかば小六は猿兒(かやつめ)今宵は必ず来ぬらんと大の眼を八角(はった)と見開き張臂(はりひじ)羽翼の如く左右に広げ甚と(いと)苛(いか)めしく◆扣へ(ひかえ)たり折りしも雨降来りければ日吉は是れ幸ひの事と竊(ひそかに)小六が居間の側辺の庭なる樹枝に菅笠を結び付け其身は己が居間に立帰りて安らかに横臥(ねころび)けるに此方は小六今宵は必ず来ぬらんと想ひしに違えず笠に雨滴(あまだれ)の落つる音しける程に今か今かと気を張りて終夜(よもすがら)寝ざりければ終に身心疲労(つかれ)果て其體は起き其目は開きしと雖も(いえども)其心は既に寝て茫然たり斯くて(かくて)夜の将(まさ)に明けなんとする比及(ころあい)に日吉は勃然(むくむく)と起き上り時ころ善しと竊(ひそやか)に小六の居間に忍び入りしに案に違わず小六が居睡(いねむり)してありける程に難なく彼の刀を奪取りまんまと首尾も吉野山と頬被(ほっかむり)を取り外し我が居間を指して落行きけるとは夢にも知らぬ小六は嗚呼寝るともなしに思はず居睡(まどろみ)しか剣呑々々と傍(かたへ)を見れば呆然(おやおや)◆や今までありし刀何処(いずく)に行きけん居間になし偖て(さて)は他人の所為か左りとも猿兒(かやつめ)の竊(ぬすみ)取りしかと暫し茫然自失なしける所へ日吉やって来り賊魁(◆やかに)難なく竊取り候へば御約束の通り賜はらんと云ひければ小六愕然(びっくり)として驚き偖て(さて)も偖ても機敏き(すばやき)猿兒(こざる)なる哉(かな)盗賊(ぬすびと)のうはまへ取りとは其れ汝が謂ひかとて又茫然自失するもの良久しかりけるとなん

※『常山紀談』より

今回は少年秀吉(日吉)が蜂須賀小六(正勝)から刀を盗み出すエピソードを紹介してきました。

『常山紀談』の史実性は疑わしいものの、人々は「秀吉ならこのくらいやってのけそうだ」という期待が、こうした伝説を生み出したのでしょう。

果たして秀吉と小六の関係がどのように進展していくのか、漢たちの熱い絆を楽しみにしています!

※参考文献:
・湯浅常山ら『常山紀談』国立国会図書館デジタルコレクション
文 / 角田晶生(つのだ あきお) 校正 / 草の実堂編集部

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