宗教

神社の正しい祈り方について調べてみた

日本古来の宗教である神道は実に懐が広い。

神道では自然や物、死者などあらゆるものを敬い、八百万の神に祈るわけだが、クリスマスを祝った翌週に初詣をしても、迎え入れてくれる。

これは、キリスト教やイスラム教、仏教のように開祖やカリスマ的創唱者が存在しなかったこと、聖書やコーランのように公式に定められた「正典」が存在しなかったことなどにより、「自然を通して神を敬う」という日本人の自発的な行為から生まれたことと関係している。

つまり、形式や教義に捕われず「感謝の心」「祈りの気持ち」こそが一番大切なのだ。とはいえ、神様にお祈りするのだから、形式的にも正しい祈り方をしたいものである。

そこで今回は神社における正しい祈り方、お参りの仕方について調べてみた。

1.神様のご神威と人間の願い

神社の正しい祈り方

神社をお参りするということは、「神様に願いを叶えてもらうため」という認識が一般的である。その認識は間違っていない。しかし、神道にこのような言葉が伝わっている。

“神は人の敬(うやまい)によりて威を増し 人は神の徳によりて運を添う”

神様を敬い、感謝することで神様は力を増し、人はその力で神様のご加護を得られるということだ。

神様に感謝する気持ちが強く、気持ちが純粋なほど神様はさらにご神威を発揮され、我々に多くのお恵みをくださる。逆に、いくら神社を参拝しても、神様を尊敬する態度のない人や、ただお願い事だけを伝えても、ご加護は期待できないということになる。

姿形は見えなくても、神社には必ず神様がいるのだということを忘れないようにしたい。

また、出来ることなら参拝の際にはカジュアルな服装ではなく、正装をするほうが望ましい。

2.鳥居から参道へ

さて、本題の祈り方だが、鳥居をくぐるときから始まる。

鳥居は、神様がいる「神域」と人間が住む「俗界」とを分ける「結界」であり、神域への入り口を示すものだ。

そのため、まずは 一礼してからくぐる ようにしよう。

他人の家に行き、挨拶もせずに入る者はいない。ましてや神様が祀られている神域なのだから、当然の作法である。

また、鳥居をくぐる際は、道の左側を歩く人は左足から、右側から歩く人は右足から鳥居に入るようにしなければならない。

参拝をしている姿から、神様はその人の霊格を見ていらっしゃるのだ。

また、参道も中央は避け、左右のどちらかを歩く

参道は、文字通りに参拝する人々のための道だが、同時に中央は「正中(せいちゅう)」といい、神様の通り道なので中央を開けるのが礼儀である。

神社によっては正中に石畳があり、その左右に玉砂利が敷き詰められていることがある。そのような神社では、玉砂利の上を歩いても良い。むしろ、玉砂利の上を歩いたほうがいい。玉砂利の道を歩くとザクザクと音が鳴り、この音も心を鎮める効果があるとされる。

参拝には正装で」と先述したが、玉砂利は、雨の日の泥跳ねを防ぐ目的もあり、服を汚さないためにも敷かれているのだが、正装にともなってヒールがある靴を履いているときは、石畳の左右どちらかを歩くようにしよう。

3.手水舎にてお清め

参道を社殿まで歩くと、その脇にあるのが手水舎(ちょうずや・ちょうずしゃ)である。
ここで参拝者は手や口をすすぎ清める。なぜこの段階で清めるのかというと、我々の目には見えないが、俗世で身についた自分の「」や「穢れ」を祓うためだ。

まず、

右手に柄杓(ひしゃく)を取り、左手を洗う。

次に左手に柄杓を取り、右手を洗う。

もう一度右手に柄杓を持ち替え、左手に水をためて口をすすぐ。

最後に柄杓を立てにして、残った水で柄杓の柄に水を流す。

柄杓にすくった一杯分の手水(ちょうず)を使い、一連の所作を行うため、途中で汲み足したりしないように。もちろん、口をすすぐのに直接、柄杓に口をつけることなどは厳禁だ。

柄杓を元の位置に静かに戻してから、一揖(いちゆう/軽い会釈)する

のが正しい。

4.神前

いよいよ、神前にてお参りをするのだが、その際に欠かせないのはお賽銭だ。

お賽銭は「神や仏に奉納する金銭のこと」という認識で間違いはないが、お祈りをする前に「金銭」を納めるという行為に俗気を感じた人もいるだろう。しかし、お賽銭はその後のお祈りのために納めるのではない。お賽銭の「賽」という字は「神様から福を受けたことに感謝して祀る」という意味があり、日頃より神様のご加護を受けていることへの感謝の気持ちなのだ。さらに、賽銭箱に硬貨を入れる音で罪祓う(鈴と同じ)とする説もある。

いずれにせよ、お賽銭は神様に納めるものなので投げずに、そっと入れるようにしよう。

鈴を鳴らしたら2礼2拍手をし、その後手を合わせて普段の暮らしに感謝の祈りをする

鈴は、その清々しい音色で参拝者を敬虔な気持ちにするとともに参拝者を祓い清め、神霊の発動を願うものなので、ここでも改めて気持ちを込める。

神道では特別な唱え言はないのだが、心の中で「自分の名前」「感謝の気持ち」「誓い」を伝えると良いといわれる。

よく「神様に願い事をする」というが、実際には願いではなく誓いである。自分がこうしたいという思いと、神様への感謝を伝えることで、目標を成就させるために神様がお力添え下さるのだ。

祈り終えたら一礼をして、神前を後にする。最後に鳥居をくぐり、俗世に戻る前にも一礼することを忘れないように。

これが、神社での正しい祈り方である。

5.言霊

先ほど、神道では特別な唱え言はないと述べたが、誓いがないときなどは次のように祈っても良い。
小声でもいいので

「祓え給い、清め給え、神ながら守り給い、幸え給え

(はらいたまい、きよめたまえ、かむながらまもりたまい、さきわえたまえ)」

と唱える。

この言葉には、「お祓い下さい、お清め下さい、神様のお力により、お守り下さい、幸せにして下さい」という意味がある。

「お守り下さい、幸せにしてください」というのは「裕福にして下さい」という我欲ではなく「健康で幸せに暮らせますように」という意味で祈る。

神道では自らの祓い清めが信仰的にも神様に近づくための大切な行いとなっているからである。

同時に、我が国には古来、言葉には霊力が宿り、口に出すことによって、その力が発揮されるという言霊(ことだま)の信仰があった。神社にお参りする際に具体的な願い事を声に出して唱えるのも、こうした信仰に基づくものである。

最後に

繰り返すが、神社でのお祈りは形式ではなく「気持ち」が大切だ。

例え、この祈り方の一部を忘れてしまっても、神様への感謝と尊敬の気持ちを忘れずに祈ればいい。

極端な話だが、初詣の行列などで神前まで行けなくても、鳥居をくぐり神域に入った時点で社殿に向けてお祈りをするだけでも気持ちは伝わる。

まずは「事故や病気などの災厄に見舞われることなく、無事にお祈りに来ることが出来たこと」自体を感謝しよう。

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