ルイ16世は、ブルボン朝第5代のフランス国王である。
この名前を聞いて、どんなイメージが思い浮かぶだろうか。
おそらく、「背が低く太っている」「性的不能者」「愚鈍」というような、悪いイメージを持っている人が多いだろう。
日本では『ベルサイユのばら』の影響からか、ルイ16世のイメージは、おそらく今でもそれで固定されてしまっている。
しかし実際のルイ16世は、どうもそれとは大分違った人物であったようだ。
背が高くて痩せていた
太った姿で描かれている肖像画が多く残っているが、実際は(特に若い頃は)痩せていた。
また、この家系の男性は皆背が高く、ルイ16世も身長が192cmもあった。
皇太子時代の肖像画は、痩せた姿で描かれたものが多いが、国王になってからは太った姿で描かれるようになった。
恰幅のよい姿の方が、王としての威厳があるように見えるためである。
真面目な性格
当時のベルサイユでは、男性は軟派な言動をするのがよいとされる風潮があった。
女性を口説いたり、ダンスに誘ったりするのが上手い男性ほど、よくモテたのだ。
しかしルイ16世は大変真面目で、へらへらと女性と喋ったりするような性格ではなかった。
漫画や小説では「口下手」と表現されることが多い。確かに当時の感覚では、口下手というマイナスな評価だったのかもしれない。
現代であれば、むしろ好意的に受け取られるのではないだろうか。
優秀な勉強家
ルイ16世は4歳の頃から帝王学を学び、1日12時間も勉強していた。
英語やドイツ語、イタリア語、スペイン語を話すことができた。
錠前作りという一風変わった趣味のおかげで、オタクっぽいイメージを持たれているが、錠前作りには理系の知識と技術が必要であった。
物理学や数学、地図作製術、航海術に秀でていて、読書が好きで、とにかく勉強熱心であった。
ルイ16世の死後、「愚鈍な王」というイメージを持たれたのは、重罪である“国王殺し”を正当化するためにゴシップ誌が嘘八百を書き連ねたためである。
「性的不能者」というのは嘘
「ルイ16世が性的不能者」という話は、かなり一般的に知られた話だ。
しかし、これが全くの嘘だったのである。
こんな間違った噂が広まってしまったのは、シュテファン・ツヴァイクが書いた小説『マリー・アントワネット』に書かれた記述が原因だ。
ツヴァイクはルイ16世を性的不能者と決めつけ、性器の手術までしたと書いているのだが、これはあくまで巷の噂を基にした記述である。
残っている史料によれば、ルイ16世に身体的問題はなかった。医師がそのように2度も診断している。
また、王妃マリー・アントワネットの兄が書いた手紙には、ルイ16世とマリー・アントワネットの夫婦生活についてかなり生々しく詳細が書き残されている。その内容を見ると、ルイ16世の身体は至って健康だったようである。
長年子供に恵まれなかったのは、2人がまだ心身ともに幼かったことや、2人の結婚に反対している勢力が子供を作ることに反対していたという、政治的な理由などが考えられる。
おわりに
ルイ16世は、「ヴァレンヌ逃亡事件」で捕まるまでは、フランス国民に大変慕われていたという。
慎ましく勉強家で、愛人を1人も持たなかったというルイ16世は、王としてはかなり変わったタイプだった。
大きな歴史の流れの中で、悪人にされ、処刑され、後世に残った悪いイメージが一人歩きしたままになっている、不憫な王。
彼の真実の姿が、新たな彼のイメージとして、今後広く定着することを願っている。
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