2019年2月、私は仕事の関係で韓国に渡航した。時期的に冬のソウルは日本の北海道と同じ気温と考えていい。
仕事でなくてはこの時期を選ばないが、逆に冬だからこそ楽しめたこともある。とはいえ、政治レベルでの日韓関係は悪化の一途をたどっていた。一連の徴用工問題に自衛隊機への韓国軍によるレーダー照射問題など、社会的に見れば仕事であっても渡航をためらうレベルである。では、実際の韓国、それも一般庶民の生活や思想などはどのようであったのか?
観光地だけではわからない一面を調べてきた。
いざソウルへ
出発当日は、身を切るような寒さにくわえ、生憎の雨である。ガラス越しに見えるアシアナ航空の旅客機も雨に煙っていた。
搭乗時刻となり、定時で羽田を離陸した飛行機は、すぐに雨雲の上に飛び出した。韓国企業のアシアナ航空では、韓国語、英語のアナウンスに続いて日本語のアナウンスがある。キャビンアテンダントは韓国人が多いようだが、韓国語・日本語・英語に対応しており、はじめての利用でも安心できる。
機内食は写真に収めるまでもないものだったらしく、記憶にもないが、初日はホテルへチェックインさえすればいいスケジュールだったので、マッコリやビールを頼んだ。ふと前の座席に設置された地図を見ると、飛行機の現在位置が示されているのだが、一際目立つように独島が強調されている。
独島の日本名は、ご存知の通り竹島である。日本人も多く利用する航空会社だけに一抹の不安も感じたが、約2時間半のフライトを無事に終え、リムジンバスで明洞(ミョンドン)にあるホテルへと向かった。ホテルではまず英語で出迎えられる。勿論、日本語に対応できるスタッフもいるのだが、英語ほど流暢ではないので英語のほうが意思の疎通がしやすい。ゲストもスタッフも互いに外国語のほうが話が通じるというのは面白いものだ。
韓国語?英語?
2日目、いよいよ仕事のために移動する。東大門(トンデモン)市場の外れへ地下鉄で向かう。
ソウルの地下鉄は東京の地下鉄のようにソウル中に張り巡らされ、日本よりも割安である。番号や色で駅や路線が分けられているし、交通系電子マネーの「T-money」は、日本のSuicaやPASMOなどと同じように気軽に使える。カードの購入も専用販売機があるので韓国が初めてという旅行者にもオススメ。一度買えば、再度訪韓したときにはまた使えるのも魅力だ。
午前中の仕事を終えた私は、せっかくなので屋台で腹ごしらえすることを決める。市場には様々な飲食店があるが、やはり本場の空気を感じたいなら一度は屋台で食事をしてほしい。といっても、多くの屋台が並ぶ通りには、どの屋台も他と変わらないメニューとなっていて、どこも変わらないならと客引きの印象で決めることにした。
適当に豚のモツ煮、ソーセージ、トッポギを頼み、午後に影響が出ないほどでマッコリも頼む。この日のソウルの気温は氷点下10℃前後と非常に厳しい寒さのため、少しでも暖を取るには体の内側から温めるしかない。
韓国では昼間から酒を提供する店は多く、コンビニではマッコリ(マッコルリ)や焼酎(ショジュ)も約1,500ウォン(約150円)ほどで、清涼飲料水と変わらない。
さて、韓国ではほとんどの市民が韓国語しか話せない。
ホテルや観光地では日本語でも通じるが、屋台となると、結局はカタコトの英語で話したほうが通じる。
つまり、韓国を旅行するには、日本語と簡単な英語だけ喋れるだけで十分通じるのだ。
韓国の現実
3日目は、趣味を兼ねて龍山(ヨンサン)のショッピングモール「アイパークモール」へ。
実はここにガンダムのアイテムを揃えた「ガンダムベース龍山」が入っているのだ。商品は、お台場にある日本の「ガンダムベース東京」と変わらず、日本で作られているプラモデルがメイン。箱も説明書も日本語のままで、日本で販売されているものと全く同じものが売られていた。
荷物になることを知りつつも、せっかくなのでプラモデルを購入し、再び地下鉄で移動をすることに。
そこでは、韓国では当たり前でも、日本人には馴染みのない設備をホームで見かけた。
ガスマスクである。韓国が「戦時中」だと知る読者がどれほどいるかは分からないが、1950年に勃発した北朝鮮との戦争は現在でも「停戦中」であり、テロ活動などの有事に備えて、ガスマスクはどこのホームにも設置されているのだ。
韓国 の本当の姿
さて、仕事での渡航だったため、観光名所などはほぼ訪れることはなかったが、それでも韓国の本当の姿を感じることがいくつもあった。
ずばり、「反日」を感じることはこの旅行では一切なかった。これは、政治的な韓国の姿勢を肯定するわけではない。ただ、どこの店、どの人でも日本人だからといって嫌な顔はしない。それどころか、日本の観光客を歓迎するという姿勢である。私も食堂や街中で若い日本人女性の声を聞くチャンスが多かった。彼女らの目的はグルメ、コスメ、美容などだろう。
日本からわずか2時間半、時差もなく、日本円のレートとの計算も簡単だ。2019年6月現在、1円が約10ウォンとなっている。つまり、ウォンの表記を10で割れば日本円での価格となる。
気候も夏なら涼しいほどで、ソウル郊外にも様々な観光地がある。日中なら治安も東京とほぼ変わらない。今回、交通の便を考えて宿泊したホテルは明洞だったが、ここも日本での渋谷と原宿を合わせたような街で、あまり日本との違和感を感じない。韓国に対していいイメージのない読者の方にはぜひ「食わず嫌い」をせずに訪れていただきたいものだ。
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