2023年10月頃、オーストラリアのクイーンズランド州で、低空飛行する「チヌークヘリコプター(後述)」が、ワニの交配フィーバーを引き起こした。
ワニたちはその騒音と振動を交配の合図と感じ、繁殖の時期が来たと勘違いしたという。
ワニの交配フィーバー
クイーンズランド州のワニ農場には、約4,000を超えるワニが生息している。
飼育員は「ヘリコプターの通過後、ワニたちは狂ったように交配をはじめた」と述べている。
農場のオーナーによれば、チヌークヘリコプターのパイロットたちは、飛行中にコースを変更するための目印としてワニ農場を利用しており、最近では低空飛行を行い、乗客たちがワニの写真を撮影できるようにしていたという。
農場のオーナーは次のようにコメントしている。
「大きなワニのオスたちは皆立ち上がって、空を見上げて咆哮し唸り声をあげた。そしてヘリコプターが去った後、彼らは狂ったように交配を始めた」
チヌークヘリコプター
チヌークヘリコプターは、ボーイング・ロータークラフト・システムズ社が開発した大型輸送ヘリコプターである。
その巨大なローターによる揚力と推進力によって気流の変化が生まれ、音や振動も強力だ。
この大型輸送ヘリコプターが、なぜワニたちに変化をもたらしたのだろうか?
音波の効果
イギリス・ウルヴァーハンプトン大学の爬虫類学者によれば、ヘリコプターの音がワニの交配フィーバーを引き起こす可能性はいくつか考えられるという。
その理由の一つは、ヘリコプターの発する音波が、ワニたちにとっての「雷雨が迫っている警告サイン」に酷似していることだ。
豪雨は、多くのワニ類にとって媚薬のような効果をもたらすと言われている。
仕組みは謎であるが、農場のオーナーによれば「雷雨の中で交配することで、ワニの子供たちはより穏やかな環境で孵化できるようになる」という。
ワニの感覚器官
ワニは水中の動きや大気圧の変化、極低周波の音など、変化を感知するための「外皮感覚器(ISOs)」と呼ばれる多感覚器官を持っていて、この感覚器官がほぼ全身に広がっているという。
チヌークヘリコプターが超低周波の音、つまり人間の耳では検知できないほど低い周波数の音を発していて、ワニがそれをISOsで感知している可能性が高い。
チヌークヘリコプターは、雷雨が始まる音を人工的に再現してしまっているのかもしれない。
4,000を超えるワニたちの交配は、迫力満点のとんでもない光景だったであろう。
ワニは、環境変化に想像以上に敏感な生物である。
人間のふとした活動が、ワニの生態系にどれだけの影響を及ぼしているのかが判明した一つの事例といえよう。
参考 :
Low-flying helicopter sparks massive crocodile orgy in Australia | Live Science
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