海外

ヘリコプターの音で、なぜかワニが大興奮 「狂ったように交配を始める」

2023年10月頃、オーストラリアのクイーンズランド州で、低空飛行する「チヌークヘリコプター(後述)」が、ワニの交配フィーバーを引き起こした。

ワニたちはその騒音と振動を交配の合図と感じ、繁殖の時期が来たと勘違いしたという。

ヘリコプターの音で、なぜかワニが大興奮

画像 : ワニ農場のワニ by D-Stanley is licensed under CC BY 2.0

ワニの交配フィーバー

クイーンズランド州のワニ農場には、約4,000を超えるワニが生息している。

飼育員は「ヘリコプターの通過後、ワニたちは狂ったように交配をはじめた」と述べている。

農場のオーナーによれば、チヌークヘリコプターのパイロットたちは、飛行中にコースを変更するための目印としてワニ農場を利用しており、最近では低空飛行を行い、乗客たちがワニの写真を撮影できるようにしていたという。

農場のオーナーは次のようにコメントしている。

大きなワニのオスたちは皆立ち上がって、空を見上げて咆哮し唸り声をあげた。そしてヘリコプターが去った後、彼らは狂ったように交配を始めた

チヌークヘリコプター

ヘリコプターの音で、なぜかワニが大興奮

画像: チヌークヘリコプター CH-47F CC BY-SA 2.0

チヌークヘリコプターは、ボーイング・ロータークラフト・システムズ社が開発した大型輸送ヘリコプターである。

その巨大なローターによる揚力と推進力によって気流の変化が生まれ、音や振動も強力だ。

この大型輸送ヘリコプターが、なぜワニたちに変化をもたらしたのだろうか?

音波の効果

イギリス・ウルヴァーハンプトン大学の爬虫類学者によれば、ヘリコプターの音がワニの交配フィーバーを引き起こす可能性はいくつか考えられるという。

その理由の一つは、ヘリコプターの発する音波が、ワニたちにとっての「雷雨が迫っている警告サイン」に酷似していることだ。

豪雨は、多くのワニ類にとって媚薬のような効果をもたらすと言われている。

ヘリコプターの音で、なぜかワニが大興奮

画像 : 跳び上がるイリエワニ publicdomain

仕組みは謎であるが、農場のオーナーによれば「雷雨の中で交配することで、ワニの子供たちはより穏やかな環境で孵化できるようになる」という。

ワニの感覚器官

ワニは水中の動きや大気圧の変化、極低周波の音など、変化を感知するための「外皮感覚器(ISOs)」と呼ばれる多感覚器官を持っていて、この感覚器官がほぼ全身に広がっているという。

チヌークヘリコプターが超低周波の音、つまり人間の耳では検知できないほど低い周波数の音を発していて、ワニがそれをISOsで感知している可能性が高い。

チヌークヘリコプターは、雷雨が始まる音を人工的に再現してしまっているのかもしれない。

画像: イリエワニ public domain

4,000を超えるワニたちの交配は、迫力満点のとんでもない光景だったであろう。

ワニは、環境変化に想像以上に敏感な生物である。

人間のふとした活動が、ワニの生態系にどれだけの影響を及ぼしているのかが判明した一つの事例といえよう。

参考 :
Low-flying helicopter sparks massive crocodile orgy in Australia | Live Science

 

lolonao

lolonao

投稿者の記事一覧

フィリピン在住の50代IoTエンジニア&ライター。
antiX Linuxを愛用中。頻繁に起こる日常のトラブルに奮闘中。二女の父だがフィリピン人妻とは別居中。趣味はプチDIYとAIや暗号資産、マイクロコントローラを含むIT業界ワッチング。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 【王国・帝国・公国】国の呼び方の違いの意味を調べてみた
  2. 金正日について調べてみた【世襲はなぜ隠されたのか】
  3. 魅力満載のカラフルなポルトガル宮殿 「シントラのペーナ国立宮殿」…
  4. 【夫が3人いる妻】 中国四川省の「一妻多夫制の村」とは
  5. エンスラポイド作戦【ナチス親衛隊No.2暗殺作戦】
  6. 【奈良公園の鹿たち】なぜそこに集まったのか、その生態と歴史を探る…
  7. 中国の人身売買について調べてみた 「誘拐されて眼球を売られる」
  8. ブロンテ姉妹とは(シャーロット、エミリー、アン)【全員短命の天才…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

千葉を発展させた漁師 について調べてみた

醤油で有名なヤマサ醤油の本社は千葉県銚子市にある。キッコーマンに次いで全国シェア第二位の規模だ。…

【三笘アシスト!】 18歳が躍動したブライトンの変化とは? 【今週末、日本代表はドイツ戦】

9月2日(土)から9月3日(日)にかけて、プレミアリーグ第4節が開催されました。三苫薫が所属…

『インド人女性5億人を救った』アルナーチャラム・ムルガナンダム ~生理用ナプキンの開発

人類の文明社会は約5000年前に始まったとされ、医療や文化は世界各地で発展を続けてきた。…

睡眠中の体には何が起きている?調べてみた

生き物の三大欲求の一つとして人間が日々行っている活動「睡眠」。一生のうち、三分の一ほどの時間…

500年後に大悪人となったコロンブス 【奴隷貿易の生みの親、原住民を大量虐殺】

15世紀にアメリカ大陸を発見し冒険家として知られるクリストファー・コロンブスは、ヨーロッパに…

アーカイブ

PAGE TOP