近年、ニュース等で話題になっている依存症。
薬物やギャンブル、アルコールなど、さまざまな依存症が取り上げられている。
これに対し、甘え、意思の力が足りないなど非当事者からの厳しい批判が投げられることは少なくない。
今回は、その中でもひときわ偏見に晒されがちな「性依存症」について見ていきたい。
■3つに大別される依存症
さて、依存症について、詳しく考えたことのある人はあまり多くないだろう。
まずは、依存症の種類について紹介していきたい。
依存症の種類は大きく3つに分けることができる。
一つ目は、物質依存。
これは最も知名度が高く、理解しやすい人も多いのではないだろうか。
アルコール、ニコチン、薬物などへの依存がこれに相当する。
二つ目は、プロセス依存。
これは特に近年話題になることが多い。
ギャンブルや買い物、ゲームやネットへの依存は物質依存ほど深刻に捉えられず、気合の問題だと認識されやすい。
三つ目は、関係依存。
こちらは共依存に宗教依存、そして性依存症が含まれる。
プロセス依存と似ているが、プロセス依存が患者一人で完結できるものであるのに対し、こちらは基本的に他者との関係性が関わっているのが特徴的だ。
■依存症に対する世間の認識と実際
依存症とは、「やめたくてもやめられない」状態に陥り本人や家族の生活に支障が出ている状態のことだ。
世間では冗談半分や軽い気持ちで「スマホ依存症」「ラーメン中毒」といった表現がされる。
このように、気軽に使われる言葉のイメージも手伝って、実際の依存症についても表面的な認識に終始してしまいがちである。
実際の依存症患者は、脳内に分泌された快楽物質と中枢神経の興奮というサイクルが形成され、意思によってコントロールできる範囲を超えてしまっている。
これはヒトとして普遍的な脳の仕組みによるもので、当事者の意思や良心とは関係なく依存対象を求めてしまう疾患である。
非当事者は一般論で依存症患者の善悪を論じたりしてしまうが、当事者は罪悪感や疎外感を感じれば感じるほど苦しくなり、むしろ依存行動への歯止めが効かなくなるジレンマを抱えている。
そもそも、依存対象に手を染めるきっかけが本人の根深い精神の苦痛であることも少なくない。当事者を責めることは、百害あって一利なしの愚行なのだ。
■身近で治療の難しい性依存症
さて、依存症の中でもひときわ偏見を持たれがちな性依存症。海外の研究によると全人口の3~10%にものぼると言われている。
有名な例では、米国のゴルフ選手であるタイガー・ウッズが性依存症の診断を受けセラピーを受け回復している。
不倫や借金、性犯罪の原因ともなりうるこの依存症は確かに治療が必要なものであるが、アルコールやギャンブル等の依存症対策事業にも含まれず、相談できる窓口や自助グループも少ない。
また、依存対象が対象なので当事者の家族も世間の目を恐れて相談できないままでいることが多い。
日本では精神疾患への理解が不十分なため興味本位に見られがちである。
それでいて性的な娯楽や話題は豊富であり、正しい性知識や人権意識をはるかに上回るため、依存症の入り口はそこかしこに存在するといえるだろう。場合によっては「浮気は男の甲斐性」などというフレーズによって問題が可視化されないことも起こりうる。
健全な精神では耐え難い過剰なストレスに晒された働き盛りの会社員が、社会人生命を冒してまで痴漢行為に及ぶ、「毒親」に育てられた自己肯定感のない若い女性がSNSで不特定多数の性交渉相手を募るなど、決して笑いごとではないリアルがすぐそこにあるのだ。
このような性依存症患者が病を克服するには、性依存症を診察できると掲げている適切な心療内科の受診や、性依存症当事者同士が安心して自らの体験を話し合える自助グループへの参加が必要になる。
とはいえ、こういった場所に足を運び長い治療を続けるには周囲の理解や本人の病識も必要になる。
重篤な場合、もう既にトラブルを起こしたり巻き込まれたりしてしまっているケースもありうる。
いずれにせよ、目で確認できない精神疾患だからと言って甘く見てはいけないのだ。
■非当事者ができること
依存症による犯罪は法が裁くシステムになっている。
また、病としての依存症は当事者達と医療福祉が治療する。
非当事者はニュース等で知りえた依存症患者を気軽な噂話のタネとしたり、素人目線での決めつけで論じてしまいがちだがそれは改めなければいけない。
なぜか?それは、依存症患者や予備軍はどこに存在しても不思議ではないからだ。
そして依存症は、自分が見放されている、自分は駄目人間だ、という思いによってたやすく重篤化する。
非当事者ができることは、勝手な判断で依存症を語らず正しい知識を得て実践することだ。
もし腹の底から納得できなくとも「そういう難しい状態なのか」「本人の意思ではどうにもならず大変らしい」と認識し、言動にも表すことはできる。それによって、あなたは苦しめる依存症患者に寄り添うことができるのだ。
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