昭和の食卓
明治、大正の時代にハイカラと言われた洋食文化がすこしずつ家庭にも浸透し、肉を使った惣菜やコロッケなどが食卓に並ぶようになってきたのが、昭和の初期の日本の食卓です。
その後、戦中、戦後になると配給だけでは満足できず、家財や着物を売って闇市に走らねばならないほどに最悪になってしまった日本の経済と食事情。栄養失調で亡くなるこどもや老人が多数でした。
戦後まもなくすると、アメリカ主導による余剰小麦の流入で学校給食のパン食化が始まります。それに伴い洋食化も進みます。
アメリカの農産物が大量に輸入されることになり食生活が豊かになり、高度経済成長を遂げた日本の食生活は格段に向上しました。
とはいっても昭和中期の食生活は一汁一菜、もしくは一汁二菜が基本。
主食の米(麦入り)を中心に魚介、豆、野菜、海藻のおかずに味噌汁の食卓でした。
お父さんの帰りを待って、ちゃぶ台を囲む家族団らんの食卓です。
野菜、海藻、豆が主流の副菜は食物繊維が豊富で低コレステロール、低カロリー、肥満とは無縁の食事です。副菜に多用された魚料理に含まれるDHA、EPAはコレステロール値を下げ、血液さらさらに、頭をよくする効果もあります。
味噌や納豆、漬物などの発酵食品は腸内環境を整えて、免疫力もアップさせてくれます。
健康効果が抜群で生活習慣病など無縁であった食卓から、現在の食生活へと変貌していったのにはどんな背景があったのでしょうか?
食生活の変化の背景
1955年に自動式電気釜が発売され、主婦がつきっきりで台所で火の番をすることから解放されました。
1968年、世界初のレトルト食品のカレーが日本で発売されます。これを皮切りに日本の食事情は便利さへと変貌を遂げていきます。
1970年代になると外食産業が到来します。
ファミリーレストラン、ファストフード店、コンビニエンスストアの登場が日本の食事事情を更に塗り替えていくことになります。プラスチックの食品トレーが登場したのもこの頃です。
内容物が確認できる透明な食品トレーの登場で安心安全が確認でき、対面販売であった商品がスーパーでの陳列販売へと変化していきます。
買い物かごを提げて、こどもの手を引き、商店街に買い物へ。経木にくるまれた切り身の魚や肉を買って帰る母子の姿が消えていくのもこのころからですね。
便利さは家庭に縛り付けられていた女性が社会進出していくきっかけになりました。
昭和の時代から現代へと刻々と変化を遂げた食生活、そこに抱える問題点とはどんなことでしょうか?
現代の6つのこ食の問題
6つの「こ食」と言われる問題点があります。
1 孤食
家族不在の孤独な食事。
好き嫌いを増長。コミュケーション不足。社会性の欠如を招く。
2 個食
家族がそろっていても各々が好きなものを食べる食事。「ばらばら食」。
栄養が偏りがちで生活習慣病を招く。精神的には協調性を欠き、わがままで切れやすいこどもを育てやすい。
3 粉食
パン、ピザ、パスタ、ラーメンなど小麦粉を使った主食を多く獲る食事。
米食に比べカロリーが高くなりがち。おかずやトッピングなども脂肪分が多く、栄養が偏る
4 固食
決まったものしか食べない食習慣。「ばっかり食べ」。
栄養の偏りから生活習慣病を招き、精神的に不安定にもなりやすい。
5 小食
運動不足やダイエットから少量の食事しか摂らず、栄養不足に陥りがち。
成長期のこどもには発育不足を招き、女性のダイエットにより低体重のこどもの出産を招く危険性がある
6 濃食
加工食品の多用で、塩分、糖分過多の味の濃い食事を多く取る。味覚の鈍化と肥満を招く
現代食は悪いことばかりなのか?
このように乱れた食生活や過食、偏食は生活習慣病を招き、無理なダイエットにより摂食障害、過食と拒食などの現代病も蔓延させています。
では現代食は悪いことばかりなのでしょうか?そうとばかりは言い切れません。
・経済の拡大と情報網の確立により学校給食の充実
・食育の意識の高まり豊富な情報による安全な知識が得られる。
・流通網の拡大で新鮮な食材が手に入る
・企業のコストカットにより安い食材、加工食品が手に入る
・宅配業の進歩で共働き世帯の買い物の簡略化、孤独な老人家庭への宅配弁当の配送
・食のバラエティ化
・食材の長期保存が可能
・栄養価が高くなりこどもの発育が良くなる
このように大きな利点もあるのです。
情報をうまく使い、心と体に安心安全な食生活を手に入れていきたいものですね。
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