親しみやすい雰囲気や、楽しい空気感を創り出す根底には、人の「笑顔」がある。
物事を前向きに捉えたいと気持ちを切り替えるときにも「笑う」ことが必要不可欠といわれているが、それは「笑う」ことで脳内に幸福感が広がり、心の安定を維持してくれる心理学的効果が発揮されるためだ。
「笑う」ことで心の安らぎ、ストレス解消に繋がることを、文字通り「笑活(わらかつ)」と表現するメディアも多く、リラクゼーション効果に特化したトレーニングとして「笑顔」を意識する人々も増えてきている。
治療法としても期待されている「笑い」のメリットとは?
「笑う」という行動には、精神の安らぎをもたらす幸せホルモンのひとつ『セロトニン』を生み出す特性がある。
この『セロトニン』が生み出される度に、人間の体内では、幸福感と免疫力の上昇が起こり続けるという研究結果が証明されたこともあり、「笑顔」は医学界においても一目置かれる治療法と呼ばれるようになった。
医療の現場において「笑う」ことを一種の治療法と捉えている理由には、「笑う」行動を繰り返すことで刺激される脳の血流効果への期待もある。人間の生命力の基盤である酸素と栄養は、脳の血流が促進されることで活性化するため、脳の働きや筋肉の発達を助ける有酸素運動が効果的といわれているが、その有酸素運動と同じくらいの運動量が得られる手段もまた、「笑う」行動なのだ。
ガン細胞やウイルス減少、突発的な脳梗塞の発症予防に「笑う」行動が推進される背景にも、活性化された脳の血流効果が関わっており、「笑う」ことは、体内のウイルスを撃退するナチュラルキラー細胞(NK細胞)の力を高めることに繋がるとの見解もある。
ことわざにも活かされる「笑い」の偉力
笑い声が絶えない家庭には幸福がやって来るという意味を表す『笑う門には福来る』という有名なことわざが存在するように、「笑い」には、人間の身近な状況や感情との深い結び付きがあると実感させられることが多い。
生活の中に笑いを取り入れることで心身の健康が保たれる状態を、ことわざでは『笑いは百薬の長』と表現され、人生を健康的に生きるために必要な活力源を得る方法は「笑い」であると『健康と笑い』の結び付きを強調している。
「笑う」ことで得られる活力には、免疫力、集中力、記憶力があるが、これらの活力が養われる切っ掛け自体にも「笑い」がもたらす快眠作用が関係しているというから驚きだ。
声を出してよく「笑う」ことは、筋肉と内臓を刺激しながら、全身の体温を上昇させる行動に当たり、反対に「笑う」ことを止めると、人間の体温は自然と低下していく。
つまり、体温が下がったタイミングで眠気を感じやすい人間にとって、「笑う」ことで起きる体温の変化は、睡眠の質を高めることに効果的な要素なのである。
笑うことがトレーニング!?注目が集まる「笑いヨガ」の影響力
「笑い」が人の心と身体を元気にするという思想は、ヨガの発祥地であるインドでも根強く受け継がれており、リラックス効果があるヨガの呼吸法に「笑い」を取り入れた「ラフターヨガ(Laughter Yoga)」、通称「笑いヨガ」を真っ先に発明したのもインドだといわれている。
「笑いヨガ」の基本的なトレーニングは、特定の「笑う」対象がいない環境で、深い腹式呼吸と手拍子に合わせて自ら笑い声を出し、笑顔を作るという至ってシンプルな内容だ。
一見、不思議な光景に見える「笑いヨガ」でも、大人数で実践すれば自然と本当の「笑い」が起こり、人の感情の中に、喜びと安心を共有できるという安心感が生まれてくる。安心感を得ることは、人間の自律神経バランスを整えることに直結してくるため、「笑いヨガ」は、健康要素を好循環させる機会の場でもあるのだ。
また、「笑いヨガ」を行っている最中は、常に口角を上げている状態のため、以前よりも柔らかく優しい顔つきに変わってきたという声も聞く。
「笑いヨガ」を継続することで鍛えられる表情筋や、改善される肌のハリやシワ、デトックス効果は、人の表情を豊かにすることにも良い影響を与えているのである。
笑うたびに人は若返るという意味を持つ『一笑一若(いっしょういちじゃく)』ということわざが表現するように、人間の本来の美しさは「笑う」ことで引き出され、「笑顔」で過ごしているときが最も人間が輝いていられる瞬間だ。
毎日のマスク着用が習慣化された現在は、「笑顔」を意識するどころか、感情表現に無関心である、あるいは相手の感情が見えにくい状況が続き、精神的ストレスを感じやすくなるケースも増えているだろう。
しかし、そんな出口の見えない今だからこそ、「笑う」ことを意識的に行っていく必要があるのだ。それがマスクの下の「笑顔」であったとしても、安定や癒しといった心理的効果が発揮されることに変わりないのだから。
参考 : 日本笑いヨガ協会
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