日本一高い山、富士山
観光名所として日本人だけでなく、外国人からも大変人気のある観光スポットである。
しかし、いつからか富士の樹海である青木ヶ原が「自殺の名所」としても有名になってしまい、富士山は闇の部分においても注目を浴びる存在となってしまった。
2020年の山梨県内での自殺者は181人であり、人口10万人当たりの自殺死亡率は22.3人となり全国ワーストとなった。
県障害福祉課によると、自殺者は県外在住者の割合が高く、青木ケ原樹海(富士河口湖町、鳴沢村)などで自殺する傾向が継続しているという。
一体なぜ富士の樹海が「自殺の名所」となってしまったのか?
松本清張の『波の塔』
青木ヶ原は、もともとは樹海を抜ける自然歩道がある美しい観光地として知られていた。
1959年、松本清張の小説「波の塔」の連載が「女性自身」で始まると、一躍人気となりベストセラーとなる。1960年には映画化され、その後8度もテレビドラマ化されるなど「波の塔」は国民的人気作品となった。
「波の塔」は、ヒロインである人妻、結城頼子が新米の若い検事、小野木と禁断の恋に落ちる物語であり、最後に頼子が青木ヶ原の樹海に入っていくところで物語が終わるのである。
「青木ヶ原」は、かつて小野木と一緒に行こうと語った場所であり、物語の中ではヒロインにとって美しい終焉の地だったのである。
このことからも当時の「青木ヶ原」は今のようなイメージではなく、人気の観光地だったことがわかる。
しかし「波の塔」が人気となり何度もドラマ化されたことで、次第に「青木ヶ原 = 自殺」のイメージが定着してしまい、自殺志願者が訪れる場所となっていった。
1974年には、「波の塔」を枕にした女性の白骨死体も発見されている。
そしてそのイメージは現在でも払拭できず、「波の塔」を知らない世代においても「自殺の名所」というイメージだけが残り続けてしまったのである。
本来、青木ヶ原は「美しく神秘的な観光地」だったのである。
参考文献 : 地理の話大全
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