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画像:石畳や杉並木が続く「箱根旧街道」(photoAC)
日本はもちろんのこと、海外からの観光客にも大人気の箱根。
訪日観光情報サイト・ジャパンガイドの「2023年訪日観光地ランキングベスト20」では、東京・京都・大阪に次いで第4位に入っています。
そんな箱根のなかでも、自然が豊かな山間の木々に囲まれた箱根旧街道沿いに佇むのが、江戸初期に創業した「箱根 甘酒茶屋」です。
創業当時から変わらぬ製法で作り続けている名物の甘酒を味わい、爽やかな新緑と江戸時代の旅人気分を味わいに行ってきました。
創業は江戸時代初期・400年の時を経て続く茶屋
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画像:新緑に囲まれた「箱根 甘酒茶屋」
(撮影/桃配伝子)
「箱根 甘酒茶屋」は、芦ノ湖から旧東海道を箱根湯本方面に進むと、豊かな木々に囲まれた空間に突然姿を表します。
茅葺き屋根の家屋は、そこだけまるで江戸時代にタイムスリップしたかのような雰囲気です。
「箱根八里」で知られる箱根旧街道は、江戸時代の初期に徳川幕府が整備した東海道の一部になります。そして、箱根湯本〜箱根関所間の通称・東坂は、道が険しくかなり困難だったと伝わっています。
当時、その道中には「甘酒」をふるまい旅人たちが疲れを癒す茶屋が設けられ、文政年間(1818〜1829)の記録では箱根地域には9ヶ所設けられていたそうです。(その他にも4箇所、追込坂上・樫木坂上・猿滑坂下にもあったそうです)
しかしながら、明治13年(1880年)には国道1号の開通などから、街道を歩く人は減少。令和になった現在では、「箱根 甘酒茶屋」のみとなりました。(店舗にある「甘酒茶屋」についての看板より引用)
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画像:お店の庭にある「甘酒茶屋について」の説明看板(撮影/桃配伝子)
最後の浮世絵家と呼ばれ、明治を代表する浮世絵師・小林清親(こばやしきよちか)の作品の中に、34歳のときに箱根を訪れた際に描いた「箱根山峠甘酒茶屋」という1枚がありますが、茶屋の前に石畳の旧街道が描かれています。
ちなみに、「箱根 甘酒茶屋」の現在のご店主は13代目ということです。
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画像:小林清親 「箱根山峠甘酒屋 春の日午後六時」
茅葺き屋根の茶屋では美味しい甘酒や食べ物が
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画像:「箱根 甘酒茶屋」の店内にある囲炉裏(撮影/桃配伝子)
「箱根 甘酒茶屋」のお店は、茅葺き屋根の日本家屋。2009年に、昔の資材を再利用して新しく建て直したそうです。
その際には、多くのお客さまから「ここは変わらないでほしい」という声がたくさん寄せられとか。
また、店の庭には、切り株の椅子と木のテーブルが並んだテラス席となっていて、木々のざわめきや鳥の囀りを聴きながらくつろぐこともできます。
屋外席はワンちゃん連れのお客さんでもOKなのが、うれしいところでしょう。
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画像:店舗の横にある屋外席。ワンコ同伴OKなのも嬉しい。(撮影/桃配伝子)
ほんのり甘くて体に優しさが染み渡る名物の「甘酒」
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画像:無添加の甘酒ときな粉のうぐいす力餅(撮影/桃配伝子)
「箱根 甘酒茶屋」では、まず名物の甘酒をいただきます。
お店の公式ホームページによると…… https://www.amasake-chaya.jp/
〜甘酒茶屋の甘酒は、蒸した米に麹菌を種付けし、繁殖・発酵させることによってできる「米麹」と米だけで作っています。麹菌にあるアミラーゼが、米のデンプンに作用してブドウ糖ができ(糖化)、甘みが生まれます。砂糖は入っていませんし、もちろんノンアルコールです。しかも、この製法は、江戸の昔からずーーっと変わっていません。ちなみに「酒粕」を原料に「砂糖」を加えて作る甘酒とは、味も成分も違います。〜
とのこと。ビタミンB類・食物繊維・必須アミノ酸・ブドウ糖ほかさまざまな栄養がたっぷりな甘酒は、疲労回復・夏バテ防止・美容には最適な飲み物なので、昔は夏の飲み物で、現代でも「夏の季語」だそうです。
「箱根 甘酒茶屋」の甘酒は、砂糖など無添加の自然な甘みで、ひとくち飲むとほっとため息がでる優しさ。
この日いただいたのは温かい甘酒で、木々の間から吹き抜ける山風が少しひんやりしていたので、体を温め旅の疲れを癒してくれました。
甘酒に添えられたふきのとうも美味しいです。
お餅や味噌おでんなどもおすすめ!
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画像:ぷりぷりの玉こんにゃくは自家製味噌を付けていただく(撮影/桃配伝子)
小腹が空いている場合は、お餅や味噌おでんなどの茶屋メニューもおすすめ。
「力餅」は海苔を巻いたお醤油味のいそべと、うぐいす(ほんのり黄緑色のきなこ)などがあります。
味噌おでんは、ぷりぷりの食感がいい熱々の玉こんにゃくに、自家製味噌とごまが添えられたもの。シンプルながらしみじみと美味しい味です。
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画像:小腹が空いたら甘酒とお醤油が香ばしいいそべ力餅がおすすめ!(撮影/桃配伝子)
「資料館」も必見です
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画像:「箱根 甘酒茶屋」店舗隣にある資料館とお休み処(撮影/桃配伝子)
「箱根 甘酒茶屋」の店舗の隣には、無料の休憩所兼資料館があるので、そちらも必見です。
奥の方には「雨の駕籠の旅」と題した旅行列のジオラマ、昔の駕籠・御用薬箱・長持ちなどの道具を見学できます。
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画像:資料館にある箱根の峠越えのジオラマ(撮影/桃配伝子)
また、赤穂浪士四十七士の一人「神崎与五郎詫証文の場」を再現した展示物も。
大石内蔵助の命を受けて江戸に急ぐ途中、馬子の国蔵に「馬の荷物を崩された」と因縁をつけられたものの、仇討ちという大事を控えて争いごとを起こしなくないために、屈辱に耐えながらも酒代を払い詫び証文を書いたというお話です。
実は、本来この話は、同じ四十七士の一人だった大高源吾の話でした。
時の流れとともに主人公は神崎与五郎になり、その舞台も三島宿から「箱根甘酒茶屋」へと変化して伝わっているそうです。
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画像:資料館にある「神崎与五郎詫証文の場」(撮影/桃配伝子)
美味しい甘酒とお餅や味噌おでんでお腹もいっぱいになり、疲れも癒えたあとはこの資料館もぜひ見学してみてください。
江戸時代に戻ったような建物や大自然に囲まれ、街の喧騒を忘れて静かなひと時を過ごせる「箱根甘酒茶屋」。訪れたときは、連休後だったので大賑わいのピークは超えたそうですが、それでもひっきりなしに次々と観光客が訪れていました。
欧米系の外国人の旅人が多く、甘酒を片手にほっこりと和んでいたりお餅を食べたり、皆さんのんびりとなごんでいたのが印象的でした。
箱根を訪れた際にはぜひ足を運んで、甘酒とともにくつろぎのひと時を過ごしてください。
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画像:店内はほの暗く落ち着く雰囲気(撮影/桃配伝子)
「箱根甘酒茶屋」公式HP
「箱根甘酒茶屋」公式インスタグラム
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