私がサラリーマンだったときには、ランチを牛丼で済ませることが多かった。
今でも急にあの味が恋しくなってふらりと寄るが、女性客や家族連れが多くなったものだ。今でこそ安くて手軽な食事は多いが、牛丼というと吉野家しかなかった頃は、格段に安く食べられる「男の店」という感じがした。
でも、味わって食べたという記憶がない。かっ込むように食べて長居はしない。それが牛丼という食べ物だと当然のように思っていた。どの店でもいいから近くにあれば入る。それだけだった。
そこで、吉野家、松屋、すき家という三大チェーンの牛丼の味を食べ比べてみた。
牛丼の歴史
牛丼の歴史は明治時代にまで遡る。
「牛丼」の名称は、吉野家を1899年(明治32年)に創業した松田栄吉が名付けたとされ、牛鍋(すき焼き)の具材を丼飯に乗せたものが原型だった。牛鍋そのものは、明治時代の文明開化により牛肉を食べる習慣が広まり、東京・芝に外国人向け食肉加工場が完成。
結果、肉質が良くなるにつれて、関東地方の味付けは味噌から醤油と砂糖などを調合したタレ(割下)が主流になっていった。
1887年(明治20年)頃になると、具材において牛肉や野菜の他に白滝や豆腐が使われ始め、今の我々が知るようなすき焼きの形に変化してゆく。
その後も牛丼は庶民の味として広まり、1973年から吉野家がファストフードとしてチェーン展開したことで爆発的な人気を得た。さらに他社も参入した結果、現在の三大チェーンが主流として人気を分けている。
さて、食べ比べの話だが、ここでいくつかルールを決めてみた。
まず、食べ比べなので順位を決めたり、採点するようなことはしない。すべて私が食べた感想なので、簡単に決められるものではない。あくまで参考として欲しい。注文はどれも「牛丼並盛り(グループによって名称は違うがそれに相当するもの)」、紅ショウガや七味唐辛子などは入れずに、牛丼だけの味を調べてみた。
たかが牛丼というなかれ、まぁ、しばらくお付き合いいただきたい。
吉野家
※吉野家の牛丼1
ご存知、株式会社吉野家ホールディングス(略称:吉野家HD)の孫会社・株式会社吉野家が運営する牛丼チェーン店の老舗。
1899年(明治32年)に日本橋にあった魚市場に個人商店吉野家として創業。その後は 関東大震災に伴う魚市場の築地市場移転に伴い、築地場内へ移転して第一号店となった。
吉野家の牛丼(並盛)は、税込み380円。
※吉野家の牛丼2
食べてまず思ったのは、つゆと白飯の相性がいいことだ。はっきり言って、白飯にこのつゆだけかけただけでも食べられる。「つゆだく(つゆ多め)」を注文する人が多いわけだ。かといって、味が濃いわけでもしょっぱいわけでもない。つゆは見た目よりも甘さがあり、どちらかというと薄味といってもいい。
タマネギも一切れが大きく、存在感がある。それでいてしっかり煮込まれているので柔らかいのが面白い。
肝心の牛肉だが、まず柔らかい点が挙げられる。口の中でほろっと崩れるが、こちらも一切れが大きいので満足感が大きかった。なにより、なじみのある味という点での安心感も大きい。しかし、ひとつだけ気になったのは昔食べたときの「風味」が感じられない。うまいんだが、何かが物足りない気がした。自分の中で美化しすぎたか?
しかし、まさに「バランスの吉野家」である。逆にいうと、これといった特徴がないのが特徴。良くも悪くも「優等生」な牛丼だった。
松屋
※松屋の牛丼1
株式会社松屋フーズが運営するチェーン店である。その特徴は牛丼だけではなく、カレー、定食など幅広いメニューだ。
創業者の瓦葺利夫が吉野家の味に感銘を受けたことなどにより、牛丼の研究を重ね独自の味を完成させて、1968年(昭和43年)6月に東京・江古田に牛めし・焼肉定食店としての「松屋」をオープンさせた。これは2011年(平成23年)現在の江古田店であり、これが1号店としてカウントされる。
牛丼以外のメニューが多いのは、1号店の江古田店周辺は学生や独身サラリーマンが多い場所だったため、その名残りらしい。
松屋のプレミアム牛めし(並盛)は、税込み380円。
※松屋の牛丼2
メニューを良く見るとプレミアムとなっていたが、どうも店舗によりプレミアムか普通の牛めしのどちから一方しか扱っていないらしい。
HPにも「※主に関東地方の松屋にて「プレミアム牛めし」を販売しております。」と記載があるため、今回はプレミアム牛めしで食べ比べてみた。
うん、私の口には合わない。
なぜ?普段は何も気にせず、他のチェーン店と同じように食べていたのに、今回は何が違うんだ?
二口目を食べてみて分かった。脂っぽいのだ。とにかく脂っぽい。肉もつゆも、つゆを吸った白飯も脂っぽい。肉の種類なのか、調理法なのかは分からないが、こんなに「アブラアブラ」してたっけ?
普段は、最初から紅ショウガと七味をたっぷりかけて食べていたので分からなかったのだろう。うーん、紅ショウガと七味恐るべし。
七味といえば、このプレミアム牛めしには木箱入りの七味が提供される。この七味もプレミアムなのかは不明だが、使いにくかった。普通の容器でいいから、ささっとかけたいものだ。
※松屋の牛丼3
味は吉野家と同等か、それより若干薄め。肉、タマネギ共に一切れが小さかった。肉が硬いのも少し気になったが、白米は他社より美味い。
この三社では唯一、味噌汁も付いてくるので「コストパフォーマンスの松屋」といったところか。
すき家
※すき家の牛丼
すき家(すきや)は、ゼンショーホールディングス傘下のすき家本部が運営する牛丼チェーン店。
店舗数では吉野家を抜いて店舗数で業界最大手となった。また、売り上げも2009年度における日本国内売上高で、吉野家を抜いた。
メニューの特徴はトッピングが豊富な牛丼と、カレーである。松屋ほどではないが定食もあり、主にファミリー層をターゲットとしている。さらに同グループ傘下に丼やうどんを提供する「なか卯」もあるが、こちらは知名度、店舗数なども考慮して今回の対象には入れていない。
すき家の牛丼は、税込み350円(並盛り)
※すき家の牛丼2
すき家の味付けと見た目は、吉野家や松屋とは逆の濃いめだ。
濃いといっても前者と比べての話で、しょっぱいわけではない。それでも、つゆの味がハッキリわかるので「牛丼を食べている」といった実感、満足感は大きかった。
松屋ほどではないにせよ、やや脂っぽかったこと、タマネギが全体的に硬く、肉も一切れが細かいところなどは気になった。単品での価格は一番安く、味もハッキリしているのでサラリーマンや現場仕事の人には向いているかもしれない。
「ガッツリ系牛丼」とでも言えばいいか。
BSE問題
2003年に端を発したBSE(狂牛病)問題は、牛丼業界に深刻な影響を及ぼした。
豚肉を使った「豚丼」や牛肉をアメリカ産からオーストラリア産に切り替えるなど、各社が企業努力で乗り切ったが、現在では吉野家と松屋がアメリカ産牛肉を、すき家はオーストラリア産牛肉を使用している。
そこで、思い出したのが吉野家の味付けが「物足りない」理由だ。どうもアメリカ産牛肉が輸入再開されたあたりから味が変わったような記憶がある。
試しに知り合いの元吉野家の店長に話を聞いたところ、やはり「味付けを変えた」というのだ。どうも、以前と使用する部位が変わったらしく、それにともなってつゆの味も変わったという。
非常に残念だが、もうあの「独特な風味」は味わえない。
最後に
今回は、やや松屋に対して厳しい評価をしてしまったが、あくまで私個人の感想である。しかし、薬味がないだけでここまで味に違いがあるとは思わなかった。たぶん、この記事をみなさんが読んでいる頃には、たっぷりの紅ショウガと七味をかけて松屋の牛丼を食べているかもしれない。それだけ、牛丼に細かな味を求めるのは野暮ってことがわかったからだ(笑)
やっぱり、ガッとかっ込んで、早々に店を出る。それでいいじゃないか。
吉野家公式HP→https://www.yoshinoya.com/
松屋公式HP→https://www.matsuyafoods.co.jp/
すき家公式HP→http://www.sukiya.jp/
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吉野家は味そのものは一番良いのですが塩気が強く、すき家は甘く味付けしています。
松屋の味が薄いというのは正解です。
吉野家がバランス良いと感じるということは、ライターさんは、普段から塩気の強いものを好まれるようですね。
松屋のプレミアム牛めしは値上げの口実でした。
プレミアム牛めしが発売当初はそれなりに良い肉を使用していましたが、半年もしない内に肉質を元に戻しました。
また、地方によっても味を変えています。
例えば、関東地方の牛丼と東北地方の牛丼は同じチェーン店でも味が違います。
とはいえ、店舗毎に大鍋に牛丼の具が漬かっている時間でも肉質が大きく変わります。
客の回転が悪く肉が長いこと鍋に漬かっている店舗はそれだけ、肉が縮んで肉から油が流れ出します。
逆に煮込み足りず、タマネギが硬く辛味を残している場合もあります。
均一の味で提供するだけでも、難しい。
牛丼フリークではありませんが、面白いですよね。食べ比べ。