アイヌとは
アイヌとは「人間」を意味する。
アイヌ民族にはたくさんの神が存在し、そうした神々(カムイ)に対する概念としての「人間」という意味づけであったとされている。
北は樺太から、北東の千島列島・カムチャッカ半島、北海道を経て、南は本州北部にまたがる地域に居住していた民族である。
永くオホーツク海地域一帯に経済圏を有していた。生業から得られる毛皮や海産物などをもって黒竜江下流域や沿海州との山丹交易を仲介した他、カムチャッカ半島南部の先住民族のイテリメン族と交易を行っていた。
和人(つまりアイヌ民族以外の大和民族)とも交易を行い米などの食料や漆器、木綿、鉄器などを入手していた。19世紀に列強の国々による領土拡張の際、世界各国で多くの先住民族が列強の国々に編入され、アイヌも同様の運命をたどった。
1855年に日露和親条約で北方地域における国境線決定により、当時の国際法の下、日本とロシアの各々の領土が確定、アイヌは日本国民もしくはロシア国民となった。
現在、アイヌは日本とロシアに定住する少数民族である。正確な数はわかっていない。
アイヌ民族の特徴
アイヌは古来から日本にいた縄文人を先祖に持つ。
アイヌの顔立ちは彫りが深いのが特徴である。目は二重瞼は多く唇が厚い。眉毛が太く、濃く直線的になっており福耳が多い。口元は引き締まっており髪の毛は天然パーマである。これらはそのまま縄文人の特徴である。
その反対に弥生人は目は一重、唇が薄く口元は出っ張り気味で、髪の毛は直毛である。
アイヌは弥生人の血が混ざっておらず、はっきりとした顔立ちのアイヌの特徴から、モデルや俳優に見られる整った顔立ちの人が多い。
アイヌ語
アイヌ語は話者の少なさから、2009年2月に極めて深刻な消滅の危機にあると分類された。
2007年の段階で、アイヌ語を流暢に話せる母語話者は10人しかいなかった。平均年齢も高く「消滅した言語」状態となっている。
アイヌ語は漢字が伝わる前の日本と同様、口承のみによって受け継がれてきた。そのため古い彼らの記録はヨーロッパ人や和人によって書かれたものが残っているのみである。アイヌ自身による領土記録は、大正時代からラテン文字などを用いて書かれるようになったと言われている。
アイヌ語は5つの母音を持つ。子音は12種が数えられ、無声音と有声音の区別は存在しない。
日本語にはほとんど現れない閉音節(子音でおわる音節)が見られる。高低アクセントで、アクセントのある音節は高く発音される。
文法の基本的な文型は主語・目的語・動詞の順で、この点では日本語と同じである。ただし、動詞に主語および目的語の人称および数を表す接辞やその他の意味を加える接辞が付加されるため、場合によっては動詞だけ文に相当する表現が可能である。
アイヌ語は他の言語との系統関係が不明な孤立した言語である。日本語や朝鮮語などとの関係性が指摘はされるものの系統関係を見出すことはできない。言語類型の観点からは北米インディアン諸語との間で最も共通点が多いとする結果がある。
アイヌ語に起源を持つと推測されている地名は多くある。
北海道の地名に多く見られる。サッポロやニセコがそうである。
日本の本州島以南にもアイヌ語を起源とする地名が、かつて多数住んでいたアイヌの痕跡として残っているという。
今を生きるアイヌ
数が少なくなり、時代に忘れて去られそうになっているアイヌ民族。
「アイヌ民族が今もここに生きていることを知ってほしい」アイヌの男性は言った。
「多様性と調和」という理念を掲げた東京オリンピックで、アイヌは世界にマイノリティーのメッセージを発信したいと競技会場で伝統舞踊を披露した。そこにはアイヌの歴史を知ってほしいという彼らの切実な願いが込められていた。
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