古代文明

チワワの祖先 「テチチ」は食用犬で儀式の生贄だった

チワワの祖先

画像 : チワワ pixabay

最も小さい犬として世界的に大人気の チワワ

人懐っこくて賢く、うるうるした瞳は飼い主のハートをわしづかみにします。

そんなチワワは南米出身の犬ということは結構知られていますが、チワワの祖先は具体的にどういう犬だったのでしょうか?

チワワの祖先は「テチチ」

チワワの祖先はいくつか説があるようですが、最も有力とされているのが南米大陸を原産とする「テチチ」です。

チワワの祖先

画像 : チワワの祖先であると思われるテチチ画 wiki c leonaldo090

DNA解析により、チワワがメキシコ起源の犬と同じDNAサンプルを持っていたことと、メキシコにチワワ州という州があり、チワワの命名はそこから来ていることから「テチチ」がチワワの祖先というのが通説となっています。

それでは「テチチ」はどんな犬だったのでしょうか?

テチチは食用犬だった

テチチは西暦800年代(9世紀)に、南米の先住民・トルテック族によって飼われていたことが確認されています。

マヤ族が出現する5世紀以前には既にこの土地にいた、という文献もあるそうです。

テチチは毛色によっては「神聖な生き物」とみなされていたようで、「飼い主の罪を変わりに引き受けてくれる」とされ、儀式の生贄として一緒に埋葬されていました。
メキシコや南米では、人の墓からテチチの骨が出土しています。

トルテック族の次に栄えたアステカ文明になると、テチチは主に食用として飼育されるようになります。

穀物などで太らせて大切に飼育していました。

チワワの祖先

画像 : トウモロコシを運ぶテチチ像 wiki c Juan Carlos Fonseca Mata

しかし15世紀になり、スペイン人たちが南米大陸に入植してくると事態が変わります。

なんとスペインの探検家や調査団たちは、テチチを食べ尽くしてしまったのです。その数は少なくとも10万匹以上と言われています。

栄養価が高く味も美味しかったようで、テチチを初めて見たフランシスコ・エルナンデスは「いわゆるごちそうではなく、一般的な食材として食べている」と報告しています。
先住民たちは長い間テチチを大切に育てていましたが、スペイン人たちはあっという間に絶滅させてしまったのです。

その後、テチチの目撃証言は途絶えていき、19世紀中には絶滅したと考えられています。

絶滅寸前の19世紀中頃に、メキシコのチワワ州でアメリカ人によって発見され、品種改良されたものがチワワの源流となりました。

現在、本場メキシコにはチワワはほとんどいませんが、アメリカで品種改良された「チワワ」は世界中で愛されています。

 

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 『そっくりだけど別物』違う種の生物がなぜ「似た姿」になるのか?収…
  2. 【美しい花には毒がある】 身近にある意外と危険な毒植物 「野菜の…
  3. 【交尾のしすぎでオスだけ集団死】 絶滅危惧種の小型カンガルー
  4. 猫は「300種類の表情」でコミュニケーションをとることができる
  5. 人間も大型動物も食い殺すアリ 「最強軍隊アリの生態」
  6. 古代文明が誕生した意外な条件とは? 「砂漠が増えたことで文明が発…
  7. 最初に世界遺産に登録されたものは何なのか?
  8. 韓国の若者の間で急増している動物保護活動 『イ・ヒョリ』の影響力…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

庭の木が屋根より高くなると死人が出る? 【庭木の吉凶】

「庭の木が生い茂るのは家運繁盛の兆し」、「ハチや鳥が庭木に巣をかけるのは縁起が良い」といった言い伝え…

有名な戦国大名たちの忍者集団 ①【饗談、甲賀、伊賀、透波、軒猿、乱波、風魔】

忍者とは忍者は歴史的には「忍び」と呼ばれ、史料上確実に存在が確認できるのは、南北朝時代以…

日本vsアイヌ…という単純な話ではない?「シャクシャインの戦い」について解説

現在の北海道が日本人による統治を迎えたのは日本の歴史の中で見れば比較的最近のことで、1885年(明治…

杉田玄白は実はオランダ語ができなかった【解体新書の翻訳者】

玄白と解体新書杉田玄白(すぎたげんぱく)は江戸時代中期の蘭方医であり、歴史の教科書にも「…

ラスプーチンの怪奇な能力について調べてみた【ロシアの怪僧】

※Grigori Rasputin (1864-1916)「わしはサンクト・ペテルグでこ…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP