ネアンデルタール人は、約40万年前に出現し、約4万年前に絶滅したヒト科の絶滅系統である。
彼らは、現生人(ホモ・サピエンス)と交雑(後述)していたことが知られている。
主にヨーロッパやアジアに生息していた。
ネアンデルタール人は、数十万年前に地球を闊歩していた人類に最も近い親戚である。そして彼らの遺伝子は、現代人のDNAの中にまだ残っている。
この記事では、ネアンデルタール人とは何者だったのか、何を食べていたのか、いつ現生人類と交雑したのか、生活はどのようなものだったのか、という疑問について、前編と後編にわたって考察する。
目次
ネアンデルタール人とは?
ネアンデルタール人は、私たちに最も近いと考えられており、ヒト族(ホモ属)に属し、現生人類(ホモ・サピエンス)と現在絶滅した親類を含む系統である。
研究によると、現生人類(ホモ・サピエンス)とネアンデルタール人は、約60万年から80万年前に共通の祖先を持っていたと考えられているが、正確な分岐時期については現在も議論されている。
ネアンデルタール人は、約40万年から35万年前に独自の集団として出現し、約4万年前には絶滅した。しかし、その正確な理由は明らかではない。
ネアンデルタール人は、デニソワ人と呼ばれる、あまり知られていない別の絶滅した人類の近縁種と密接な関係にあった。
科学者たちは、スペインのシマ・デ・ロス・ウエソス(骨の穴)として知られる遺跡から出土した「ネアンデルタール人の以前の種」の集団のDNAを分析し、ネアンデルタール人とデニソワ人が43万年前以前に分岐していたことを発見した。
ネアンデルタール人は、我々とは異なる種だったのか?
ほとんどの専門家は、ネアンデルタール人が我々とは別種であることに同意している。
ネアンデルタール人の骨格は、現生人類の骨格とは明らかな違いと微妙な違いの両方があり、1864年に科学者たちはネアンデルタール人をホモ・ネアンデルタレンシス(Homo neanderthalensis)という種名とした。
古代のDNAを現代的に分析した結果、ネアンデルタール人は古代の現生人類(ホモ・サピエンス)と交雑し、繁殖能力のある子孫を残したことがわかった。そのため、同一種に分類されるのではないかと考えられることがある。
しかし、ホッキョクグマやヒグマのような近縁の動物種も、繁殖可能な子孫を残すことができるが、同一種とはみなされていない。
これは、生物の種を分類する際には、繁殖可能な子孫を残せるかどうかだけでなく、他の要因も考慮する必要があるためだ。
例えば、ネアンデルタール人と現生人類は、骨格や遺伝子などの特徴に明らかな違いがある。これらの違いは、両種が長い間別々に進化してきたことを示唆している。
したがって、ネアンデルタール人と現生人類は、繁殖可能な子孫を残すことができたとしても、同じ種のグループに分類されるかどうかは、他の要因も考慮して判断する必要があるのだ。
具体的には、遺伝的距離、形態学的特徴、生態学的特徴、行動学的特徴のような要因を総合的に考慮し、ネアンデルタール人と現生人類は同じ種のグループではなく、異なる種のグループに分類されると考えられている。
ネアンデルタール人は、どこに住んでいたのか?
ネアンデルタール人の中心的な生息範囲は、ユーラシア大陸西部であった。
西は現在のウェールズまで、東はシベリアのアルタイ山脈まで生息していた。また、地中海周辺ではイスラエルまで南下し、現在のイランから中央アジアの平原地帯のウズベキスタンまで生息していた。
数十万年の存在の中で、氷河期から現在の気候よりもわずかに暖かい温暖期まで、さまざまな地球規模の気候変動を経験したのだ。
ネアンデルタール人は、これらの気候変動に適応して生き延びた。氷河期には、寒冷な気候に適応した狩猟採集生活を送り、温暖期には気候の変化に伴う食料の変化に対応した。
気候変動に対する適応能力は、彼らが長い間生き延びることができた理由の一つと考えられている。
草原や温暖な森林で繁栄し、その強力なアスリートのような身体能力は、彼らが森の中で狩りをするのに役立ったと考えられている。
2021年に発表された研究によると、約12万3000年前に現在のドイツの森林地帯に住んでいたネアンデルタール人は、植生を燃やしたり伐採したりすることで、景観を変えた可能性があるという。
また、2023年に同じチームが行った別の研究では、ネアンデルタール人が巨大なゾウを狩猟していたことを示唆しており、これらの巨大な食物源が比較的大きな集団の人々を養っていたと考えられている。
ネアンデルタール人は、どんな姿をしていたのか?
ネアンデルタール人は、全体的に私たちとよく似ている。
後ろから見ると、少し背が低いかもしれないが普通に直立して歩く人間の姿に見えるだろう。しかし、彼らが振り向けば、明らかな違いが見えるだろう。
頭蓋骨と脳は私たちと同じように大きかったが、形状は異なっていた。頭部は球形ではなく長く、前頭葉と頭頂葉が低かった。
脳の内部構造も私たちとは異なっていた。研究者たちはネアンデルタール人とホモ・サピエンスを区別する解剖学的特徴をいくつか突き止めてきたが、なぜ私たちと見た目が異なっていたのかを正確に説明するのは、まだ難しいという。
2018年の研究によると、大きな胸郭や鼻などの特徴は、寒冷への適応だけでなく、身体的にハードな生活を送っていたことも関係している可能性があるとしている。
ネアンデルタール人は、何を食べていたのか?
2023年の研究によると、ネアンデルタール人は主に肉食で、大型または中型の獣を食べていたが、鳥、ウサギ、さらには海岸で採集した食べ物も食べていたようだ。また、植物も食べていたという証拠も増えてきている。
狩猟や採集をするために道具を作り、使用していた。考古学者は、効果的な木製の投げ槍や掘削棒を発見している。
また、狩猟した動物を解体するために鋭い石器を使用していた。
ネアンデルタール人には、食人の習慣があった?
ネアンデルタール人には「食人の風習」があったと考えられている。
ネアンデルタール人による食人の事例はこれまで、スペインとフランスに存在した南欧のネアンデルタール人個体群でしか見つかっていなかったが、2016年に国際研究チームは、旧石器時代より住居として使われていたベルギーのゴイエ洞窟で、解体のために切断された痕跡がある人骨を発見し「洞窟に居住していたネアンデルタール人が、骨髄を取り出すために人骨を粉砕するなど食人行為をしていた」と結論づけた。
人骨の一部は、石器の刃を研ぎ直して、切れ味を良くするための道具を作るのにも使われたという。
一方、反対意見として、ネアンデルタール人の食人は「埋葬に当たっての儀礼的な意味合いが強かった」とする説もある。
食人行為が行われていた理由と、どの程度の規模で行われていたかについては、現在も謎のままである。
後編では、ネアンデルタール人が言葉を話していたのか、現生人類とどのように交雑していたのかについて掘り下げていきたい。
参考 : Neanderthals: Our extinct human relatives | Live Science
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