人物

実在したインディアン女性・ポカホンタスの悲劇の人生

読者の皆さんは、1995年に公開されたディズニーのアニメーション映画『ポカホンタス』をご覧になったことがあるだろうか。

このお話は、インディアンの美しい少女・ポカホンタスと、インディアンの地にやってきたイギリス人青年・ジョン・スミスとの恋模様を描き、自然の中に存在する精霊たちや、可愛らしい動物たち、そして作中の美しい音楽が話題となり、ディズニー作品の中でも長く愛されている作品である。

(ディズニー映画『ポカホンタス』の劇中歌“Color Of The Wind”。先住民たちの自然と共生する考えを、ヒロイン・ポカホンタスが歌っている。)

このポカホンタスという少女は、実際に存在していたインディアンの女性であり、イギリスに渡ってキリスト教の洗礼を受けたとされている。

ディズニー作品の中では美談として描かれていた、ポカホンタスとジョン・スミスの関係であるが、実は彼女の生涯はとても悲しいものであったということをご存じだろうか。

この記事では、そんな悲劇のインディアン、ポカホンタスについてご紹介したいと思う。

ポウハタン族のポカホンタス

ポカホンタス

(1616年頃に描かれた、ポカホンタスの肖像画)

ポカホンタス(1595?~1617)は、ネイティブアメリカン・ポウハタン族に生まれた女性である。
※インディアンという言葉は蔑称にあたる可能性があるため、ここからはネイティブアメリカンと記すことにする。

ポカホンタスという名前は実はニックネームで、本名は“マトアカ”という名前だったようだ。
ちなみにポカホンタスには、「おてんばな娘」という意味があり、彼女は小さな頃からおてんばで、明るい女性であったということがわかる。

ポカホンタスはポウハタン族の酋長の娘として生まれたが、彼女が生きた時代は先住民たちににとって、辛い歴史の始まりの時代であった。

その頃、世界では、まだ未開であったアメリカ大陸の植民地化をめぐり、イギリスとフランス、オランダやスペインなど数々の国が争いを続けていた。
そんな中、イギリスの部隊はヴァージニアと呼ばれる土地を植民地にするため、1607年頃からアメリカ大陸に入植を始めていた。

ポウハタン族は、突然やってきた侵入者たちに対して怒りをあらわにし、イギリス人を捕らえて捕虜にしていた。
その報復として、植民地政策の指導者、キャプテン・アーゴールは、酋長の娘であるポカホンタスを誘拐するよう指示、彼女を人質に、捕虜となっていたイギリス人たちの解放を命令し、ポウハタン族は泣く泣くその命令に従うことになった。

しかしこの話には、ポウハタン族が和解のために、自らの娘であるポカホンタスをイギリス人側に送った、という説もあり、どちらが本当のことなのかはわかっていない。

また、その時に酋長が怒り、船隊の隊長であったジョン・スミスを処刑しようとしたところ、ポカホンタスが酋長の前に躍り出て、彼の処刑を止めるよう懇願されたという伝説があるが(このはたらきにより、白人とポウハタン族との間が友好的になったと言われている)、これは後年、ジョン・スミスが作った美談だとされている。
ジョン・スミスとポカホンタスが恋愛関係になるという設定は、ディズニーが創作した架空の設定である。

ポカホンタスとジョン・ロルフ

ポカホンタス

(ジョン・ロルフとポカホンタス。この絵は後年、かなり美化されて描かれたものだといわれている)

ポカホンタスは溌溂とした少女で、なおかつ頭の回転が早く利口であったため、イギリス人集落の中であっという間に人気者になったと言われている。
イギリス人たちは集落の中で、トウモロコシの栽培を行っていたが、その中でタバコの栽培を始め、大成功をおさめた男がいた。

それが、ポカホンタスの夫となるジョン・ロルフである。

2人の馴れ初めは明らかになっていないが、おそらくポウハタン族とイギリス人たちの和平を図るための、政略結婚的な側面があったのだろうと推測されている。

ジョン・ロルフと結婚をすることになったポカホンタスは、イギリス人牧師の家に寝泊まりし、その時にイギリス流のマナーや、キリスト教の教えを受けていた。
そして1614年、洗礼を受け、『レベッカ』と改名したのである。

ポカホンタス

(洗礼を受けるポカホンタス)

ポカホンタスは夫とともにロンドンへと迎えられ、“インディアンの王女様”として結婚生活を送ったと言われている。

ポカホンタスの死

「聖ジョージ教会」に建てられた銅像

ポカホンタスは結婚後、トーマスという男の子を出産したが、23歳頃、夫に連れられた船旅の途中で病気にかかり、あっけなく命を落としてしまった。

彼女は生まれてから自然とともに成長し、ロンドンの地を踏むまで文明生活というものをしたことがなかったため、大幅に変化した環境によって体調を崩してしまったものと思われる。
死因は判明していないが、後年の資料によっては、天然痘や肺炎、結核に罹患したと記されている。

夫・ロルフは、ポカホンタスの死後、息子をイギリスに残し、自分はヴァージニアへ戻って早々に再婚したと言われている。
その数年後、ロルフは不審な死を遂げるが、実はポウハタン族に殺害されたのではないか、という説もあるという。

映画『ポカホンタス』が浴びた批判

ポカホンタス

(19世紀頃、当時流行していたロマンティックなタッチで描かれたポカホンタス。もはや彼女の面影はなくなっており、神話化されていることがわかる)

ディズニーは映画『ポカホンタス』を製作するにあたり、インディアン団体に協力を求めることになった。
しかし、彼らは『ポカホンタス』の中に設けられた設定が歴史と大きく違い、かつでたらめだとして、時代考証や風俗に関する協力に反対したと言われている。

また、ポカホンタスの顔立ちはインディアンの女性の特徴をとらえておらず、黒人女性をモデルにしたのではという疑惑が起こり、インディアン団体から抗議のデモが起きるなど、社会問題に発展した。

また、劇中ではイギリス人たちがインディアンを「野蛮な一族」と罵るシーンが多いため、「子供たちに差別を助長するのではないか?」という意見などが上がり、これらは現在もなお問題としてしこりを残している。

ネイティブアメリカンの歴史は、侵略と虐殺に包まれた悲しい側面を持っている。
それでもなお、現在も、ネイティブアメリカンの血をひく人々が、祖先の考えや宗教、そして歴史をゆがめないように、多くの人々に向けて発信をしている。

世界中の子供たち、そして大人たちに夢を見せているディズニーに限らず、私たち人間は『他民族に対する差別』について、もっと考え続けなければならないと思う。
そして、自分とは違うルーツを持つ人々に対して、歩み寄り、理解しあうことが出来れば、歴史の中での悲劇を繰り返すことはなくなっていくだろう。

 

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アオノハナ

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