神話
中国には多くの神話があり、現代の人々の生活にも深く関わっている。
日常生活の多くの場面で目にするのは、中国伝説上、神話に出てくる想像上の生き物である。
主に縁起物として扱われていることが多いが、中には人間に害をもたらすものとして恐れられているものもある。
そもそも神話とは一体何なのか?神話とは人類が認識する自然物や自然現象、または民族や文化・文明など様々な事象を、神など超自然的な存在や文化英雄などと結びつけた出来事として説明する物語である。
このような性質から神話が述べる出来事は不可侵であり、規範として従わなければならないものとして意義づけられている。
今回は、日本にも馴染みの深いいくつかの中国の幻獣について解説する。
龍
龍は、中国の民間伝承において最も一般的な伝説上の生き物であり、神獣や霊獣として崇められる。
水中か地中に棲む神格を持った獣として描写され、啼き声によって雷雲や嵐を呼んだり、竜巻となって天空に昇り飛翔する能力を持ち、口の周りには長髯をたくわえ顎下には宝珠を有し、水や雨を支配している。
強大な吉祥の力の象徴であり、幸運のシンボルであると同時に強烈な力の象徴をされてきた。
そのため「史記」おける劉邦出生伝説をはじめとして、中国では皇帝のシンボルとして扱われている。
興味深いことに龍には善悪があり、法行龍と非法行龍があるとされている。
また龍には、一つに熱風熱沙に焼かれる苦悩、二つに住居を悪風が吹きさらし宝を失い衣が脱げる苦悩、三つに金翅鳥に食される苦悩があるとされている。
麒麟
キリンビールのラベルに描かれている幻獣である。
泰平の世に現れ、獣類の長とされている。鳥類の長たる鳳凰としばしば対に扱われる。
形は鹿に似て大きく背丈は5mあり、顔は龍に似ており牛の尾と馬の蹄を持つ。
背毛は5色に彩られ毛は黄色く身体には鱗がある。古くは一角や角のない姿で描かれることが多く、後世では二本角や三本角で描かれる例もある。
性格は穏やかで優しく殺生を嫌い、寿命は1000年と言われている。麒麟は神聖な動物であり、傷つけたり死骸に出くわしたりすることは不吉なこととされる。
孔子の著書とされる古代中国の歴史書「春秋」の最後に「獲麟」という記事がある。
魯の国に麒麟が現れ捕らえた人々が麒麟を知らずに気味悪がって打ち捨ててしまった。泰平とは縁遠い時代に出てきてはならない麒麟が現れた上に、捕まえた人々が神聖な麒麟に恐れをなすという異常事態に、孔子は自分が今までやってきたことは何だったのかというやり切れなさから、自分が整理してきた魯の歴史記録を打ち切ったとされる。
鳳凰
鳳凰は中国神話の伝説の鳥である。
徳の高い君子が天子の位に着くと出現するめでたい禽鳥と考えられた。日本や朝鮮など東アジア全域にわたって装飾やシンボル、物語、説教などで登場する。
中国最古の類語辞典によれば、頭は鶏、頷は燕、頸は蛇、背は亀、尾は魚で、色は黒・白・赤・青・黄の5色で高さは6尺程とされる。
民話伝説で伝えられてきた鳳凰は人の性格を見定め、栄誉ある人々や親切な人々を祝福すると。鳳凰が降り立つ地には大切なものがあるとか、天女に変身する力があるとされる。
鳳凰は霊泉の甘い泉の水だけを飲み、60年から120年に一度だけ実を結ぶという竹の実のみを食物とし、梧桐の木にしか止まらないという。
神話は何を伝えているのか?
中国の神話上の生物は、海や時代を超えて世界中に伝わっている。
ある研究によると、人間の無意識層には個人を超えて共有される部分があると想定されている。そうすると遠く離れた地域でも個人の夢が似通ったり、神話が似ることがあっても不思議ではない。
神話上の生物の多くは、人々の生活に吉祥をもたらすという人間の根本的な願望を表している。どんな国に住んでいてもどんな立場でも人類の願いは一つであり、幸福と平和を願うものである。
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