孔子とは
孔子は、言わずと知れた中国の思想家である。
儒教の創始者であり、彼の教えが書かれた「論語」は孔子の弟子たちで編成された。
「子曰く」の子とは孔子の事である。
孔子の一言一言は名言となり、現代にまで伝わっている。
ところがこの偉大な教師も小さな子供に教えられたことがあるという。
孔子と子供との興味深い問答を見てみよう。
7歳の子供から教えられる孔子
孔子はある日、馬車に乗って旅行に出かけた。
ある場所に着いた時、一人の子供が石を使って城を作っていた。城の周りにぐるりと石を積み上げており、子供はその「城」の中に座っていた。
孔子の馬車を見ても一向に道を譲ろうとしない。孔子は馬車を止めさせ、子供に言った。
孔子「ぼく、この石をどけて道を譲って私たちを行かせてくれないか?」
子供は答えた「今、私は城を築いています。道を譲ることはできません。今までに馬車が城を避けて通るという話は聞いたことがありますが、城が馬車を避けて通るなど聞いたことがありません。どうぞ、回り道をなさってください。」
孔子は仕方なく回り道をする事にしたが、この賢そうな子供を試してやろうと考えた。
孔子と子供の問答
孔子「こういうのはどうだろう。私が一問、君が一問、交互に問答をする。お互いに答えてどちらが正解するかで、どちらが先生になるか決めるのはどうかな。」
子供は自信たっぷりに答えた。「いいですよ。先生のおっしゃる通りにしましょう。」
孔子「ははは。じゃあ始めるよ。君は空に幾つの星があり、地上には幾つの穀物(コメ、ムギ、マメなどの穀類)があるか、眉毛は何本あるか、知ってるかい?」
誰がこれらのものを数えたことがあるだろうか?世界でも最も難しい質問のように思えた。
子供はこう答えた。「空の高さは測ることができない、地上の広さも測ることができない。毎日空には一晩分の星があり、地上には一年分収穫できるだけの穀物がある。眉毛は黒と白の二種類の眉毛がある。」
このなんとも知恵のある答えに、孔子もこれ以上答えることができなかった。
さて、次は子供の番だ。
子供「魚がいない水、煙のない火、葉っぱのない木、枝のない花、これってなんだ。」
謎々のような質問を次々に孔子に投げかけた。
孔子「水があるのに魚はいない、火はあるのに煙がない、葉がないと木にはならない、枝のない花はない……」孔子が答えに困っていると、子供は言った。
子供「はは!分からないでしょう!教えてあげましょう。井戸の水には魚はいない。蛍の火には煙はない。木は枯れると葉っぱもない。雪の結晶(中国語では雪花という)には枝がない。どうですか?」
孔子は子供の答えを聞いて「後生可畏,我當拜你為師!」(末恐ろしい子供だ。君を私の師にしよう)」と言ったという。
孔子という人物
孔子は偉大な思想家であり、教育家であった。彼には3000人の弟子がいたとされる。
正しい人で温厚で明るい性格だったという。自分の信念を貫き学ぶ事に苦労を惜しまない人物だった。音楽を好み、気に入った歌を聴くともう一度歌ってもらい、自分も習ったという。とても憐れみ深い人で、誰かに不幸があったと聞くと一日中泣いたという。
孔子には5つの美徳があったと言われる。
「温」温和、温厚
「良」品格がある
「恭」礼儀正しい
「儉」自制心がある、倹約家
「謙」謙遜
子供とのこのエピソードからも、孔子は非常に謙遜な人であったことが伺える。
学びの精神が旺盛で、どんな人からも、どんな出来事からも学ぶ事を忘れない人物だったのだ。
こういう人物であったからこそ、偉大な思想家として現代に至るまで多くの人を魅了しているのだろう。
参考文献 : 孔子伝
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