新たな発見
2011年6月4日、更に詳しい発掘調査が開始した。
「百戲俑坑」の位置は始皇帝陵の東南部にあたる場所である。面積は約700平方メートルの広さであった。1999年3月には40平方メートルの広さで発掘が進められたが止まっていた。
この時は、以前より大規模な発掘調査が進められることとなった。
2012年6月9日、秦始皇帝陵博物院の発表によると、新たに30体余りの人形が出土したという。
そしてついに始皇帝の宮廷で演技を披露したであろう「娯楽雑技団」が、世の中にお目見えすることとなったのだ。非常に興味深い発見だ。
中国古代の皇帝達には「死如事生」という考え方がある。「死後も生前と同じようにしなければならない」という意味である。「死」に関して現代の私たちとは違った考え方を持っていた。
「生」は一瞬のことで「死」は永遠であるという考え方だ。そのため死者の埋葬に関して非常に重視していたのである。つまり始皇帝の墓の中に共に埋葬されていた物を見れば、始皇帝の生前の生活を垣間見ることができるというわけだ。
百戲陶俑の中には、非常にふくよかな体型の者(個人的なイメージでは「腹踊り」をしそうな体型)がいた。それぞれの人形のポーズはバラエティに富んでいる。
彼らが身につけていた衣服には多くのい美しい紋様が施されていた。踊り手なのであろうか、人目を引くその衣装は着色が残っていれば非常に美しかったであろう。
その中でも、一際目立つ人形があった。
それは「巨人陶俑」と呼ばれ、巨人の陶器人形でという意味である。
すでに黒く変色しており、身長が二メートル以上あるという。
仰向けの人形
2022年6月11日、最新の情報が発表になった。
最近復元された人形の中に非常に奇妙なポーズのものがいたという。
それは「仰向け」の人形で両手を上に挙げて、上半身をアーチ状にそらせている状態であった。
そして足は折り畳まれており、体を上手にささえている。
しかし初めはどこからが上半身で、どこからが下半身かよく分からない状態であったという。
実際、写真を一目みただけでは、うつ伏せなのか、仰向けなのかよく分からない状態である。
その姿勢はまるで「ヨガ」をしているかのようである。
ヨガ人形の保存状態は悪く、約72の大きな陶器の破片、約12の小さな破片を組み合わせて復元された。頭部と両手の先は見つかっておらず欠落した状態だ。
そのため復元作業はとても難航し、9ヶ月の期間をかけて行われたという。
復元後のヨガ人形の身長は約154センチほどであったという。重さは101.4キロほどであった。
この発見は歴史的に非常に貴重で、当時の娯楽雑技の文化の研究に大いに役立つものとなった。
秦始皇帝博物館は特別に雑技団にコンタクトをとり、どのような姿勢であったか討論を重ねた。それと共に人を使って再現することにした。
秦の時代にすでにヨガがあったのか?それとも何かを演じているのだろうか?
ある種の踊りなのか?多くの推測がなされている。
このヨガ人形に関してはまだ不透明な部分も多くあり、今後の発掘調査の結果が待たれる。
その他の特徴も発見された。
ヨガ人形の体には独特な製作の印が残っていたという。腹部には繋がった三つの指紋が残されており、肩の部分にはとてもはっきりとした「夾紵」と呼ばれる技法が施されていた。
「夾紵」とは古代中国の漆技法の一つで、麻布を漆で挟む様に貼り合わせて造形することである。
そして、どの膝にも二度ずつ粘土で覆った痕跡があった。
このどれも製作段階での技術を探る上での良い資料になりそうである。
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