中国史

【4000年以上前の謎の古代中国遺跡】 三星堆遺跡の発掘の歴史 「発掘はまだ1000分の1」

三星堆遺跡

画像 : 縦目人の仮面 public domain

三星堆遺跡(さんせいたいいせき)とは、中国の四川省広漢市、三星堆の鴨子河付近で発見された文化遺跡で、20世紀最大で最も偉大な発見とされている。

出土品の多くは青銅であり、その技術の高さと精巧さに専門家は驚愕した。
その姿形は非常に美しく実に奇妙で、多くの歴史ファンの興味を惹いてやまない。

発掘された遺物の中で最も古い年代のものは、4000年以上も前ということが分かっている。なんと中国4000年の歴史を超えてしまったのだ。

「今まで空白だった歴史を埋めることができるかもしれない」と多くの考古学者たちは考えている。

三星堆遺跡発掘の歴史

1930年代から始まった発掘によって、すでに多くの出土品が発見されている。
その度に専門家たちは調査を重ね、ある程度の成果を出してきたが、実のところ「発掘すればするほど、謎が深まる」状態となっている。

これまでに1950年代、1980年代に大規模な発掘調査が行われた。

1950年代の大規模な発掘調査からしばらく発掘は停止され、1986年に再び発掘が再開されることとなった。
その際に、青銅神樹象牙青銅縦目仮面などが発掘されて世界の注目を浴びている。

画像 : 青銅神樹 public domain

その後、またもや発掘中止が発表された。

その理由として「発掘された出土品に非常に奇妙な部分が見つかったこと。それまでに考えられていた年代と差異が生じてしまったこと」などが挙げられた。

しかし、この2度の発掘停止により「まるで何かを隠蔽しているのではないか?」という憶測や噂が飛び交うこととなってしまった。

「やはり三星堆遺跡は宇宙人の文化ではないか?」という噂まで飛び交ったのである。

更なる発掘再開

画像 : 発掘のために建てられた建物。(最新の機材が設置されている。中の湿度や温度も徹底管理されている。)

2020年、なんと34年という期間を経て発掘が再開された。

発掘がこれほど長い間中断されていた理由として、研究者は以下のようにコメントしている。

過去に発掘された出土品の調査に技術が追いついていなかったため、非常に長い時間がかかった。もし未熟な技術で調査を強行すると重要な事実を見逃してしまったり、不正確な事を歴史の事実として公表してしまう恐れがあった。

34年という長い停止期間が、三星堆遺跡の規模の大きさと謎の深さを証明している。

画像 : 発掘の様子

今回の発掘では、金の仮面や、シルクの残留物、金杖など驚くべき出土品が姿を現した。

画像 : 黄金の仮面 public domain

そして新たに6箇所の祭壇と、1万3千もの出土品が発掘された。とてつもない量である。

三星堆遺跡は古代中国の古蜀国文化による遺跡とされており、今回の調査では古蜀国は独立した国家だったという結論に達している。

古蜀国の最初の王は「目が縦」だった?
https://kusanomido.com/study/history/chinese/77475/#i-2

2023年8月23日の発表によると、この時点までの発掘においても三星堆遺跡の発掘進度は何と千分の一にしか満たないと言う。

これまでかなり長い期間、発掘と調査を行ってきたにも関わらず、まだ千分の一しか進んでいないというのは驚きだ。さらに現在までに発掘されたのは、宗教目的で使用された祭壇ばかりだという。

今後は、古蜀国の人々の生活区や宮殿などの発見が期待されている。

あとどのくらいの月日をかければその全貌が見えてくるのか?期待は高まるばかりだ。

参考 :
三星堆遗址为何突然间停止发掘 | 考古专家

他の三星堆遺跡の記事一覧

 

アバター

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 中国語における外来語について調べてみた 「ホットドッグは熱狗、F…
  2. 漢の高祖・劉邦の4男『文帝』の墓から発見された 「奇妙な副葬品」…
  3. 『古代中国』 戦国時代の「古代墓」「剣や戦車」が大量に発見される…
  4. 漢の高祖・劉邦のサイコパスエピソード「息子と娘を馬車から投げ捨て…
  5. 白起 ~春秋戦国時代伝説の不敗将軍【捕虜40万を生き埋めにした人…
  6. 始皇帝陵で「ヨガのポーズの人形」が発見される
  7. 毛沢東暗殺を企てた文化大革命の中心人物、林彪の謎の死とは?
  8. 秦の中国統一を数百年早めた名将・蒙恬 【漫画・キングダム】

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

【どうする家康】家康の人生最後の大問題とは 「忠輝と政宗の謀反の噂」

前編では、家康が「終活」として天皇や宗教勢力、外様大名を封じ込めるために発布した各種の法度について解…

恐竜「イグアノドン」を発見した化石マニア医師「ギデオン・マンテル」

2番目に命名された恐竜1824年、これまで見た事のない化石が発見され、1億年以上も昔に現在の動物…

織田信長に仕えた黒人・弥助は武士か否か? その生涯をたどる

織田信長に仕えた黒人・弥助(やすけ)。天正9年(1581年)2月23日に信長と謁見してから、…

滝川一益について調べてみた【悲運の織田家武将】

関東方面軍を率いた 滝川一益滝川一益(たきがわかずます)は織田信長が本能寺の変で討たれるまで…

刑務所では本当にタバコが吸えるのか?

基本どこも吸えない以前、刑務所でタバコが吸えるようにする法律ができそうになりましたが、ある国…

アーカイブ

PAGE TOP