家電に詳しい人でも「HUAWEI(ファーウェイ)」の名前は聞いたことはないかもしれない。
しかし、最近注目の中華系スマートフォン・メーカーである。中華系といえば、香港のレノボや台湾のASUS(エイスース)が有名だが、どちらも純中国製というわけではない。では、ファーウェイのスマートフォンはどこが日本のマーケットに刺さったのか?
[ikemenres]驚きの発表会
2018年1月、KDDI(au)の2018年春モデルの発表会で驚きの機種が発表された。
auとしては始めての中華系スマートフォンがラインナップに加えられたのだ。このメーカーこそ中国・深せん市に本社を置く「華為技術有限公司(ファーウェイ・テクノロジーズ)」である。日本では2014年にSIMフリー市場に参入し、格安スマホの分野では早くから好調に業績を伸ばした。さらに、2015年には全世界におけるスマートフォンの出荷台数は1億台を超え、サムスン、アップルに続く第3位という記録を残す。
その順位はいまも変わらず、Android OS搭載機種として見事に躍進した。日本向け製品としては、今までもソフトバンクやY!mobileブランドでの製品展開が行われていたが、国内的にはどうしても「中華=安いだけ」というイメージが払拭できないでいた。
HUAWEI(ファーウェイ) 日本での大躍進
中華系メーカーというネガティブなイメージを払拭したのが、2016年に発売された「HUAWEI P9」だった。ドイツのライカと専用のレンズを共同開発し、カメラを背面に2つ搭載、デュアルレンズを備えたことで一眼レフのような本格的に味のある写真を撮影できるようにした。
このP9は、よりハイエンドの「Mateシリーズ」が加わり、同社のフラッグシップモデルとなる。それまでの格安スマホは、本体価格が約3万前後というのが主流だったが、このP9は当時、6万円ほどの価格にもかかわらずヒットした。
この頃、すでにiPhoneは磐石の態勢で、サムスンも有機ELディスプレイを搭載したGalaxyシリーズでiPhoneに負けないパフォーマンスを見せ付けている。そこで、ファーウェイが着目したのがカメラだった。
iPhoneを超えた!
【※HUAWEI Mate 9】
もともとは、1987年に携帯電話のインフラ整備のため通信機器などを提供するために設立されたファーウェイは、東南アジアやヨーロッパでの事業が好調に推移したこともあり、自社端末の開発製造に乗り出した。現在でも、売上高の10%以上を研究・開発に投資するなど堅実に将来を見据えている。
そして、スマートフォン市場に参入するに当たって、マーケティングに力を注いだ。後発メーカーということで価格だけでは生き残れない。結果、若年層がスマートフォンを選ぶ際にカメラの性能を重視していると判断、P9で日本市場も席巻した。このP9シリーズは、世界での出荷台数が450万台を超え、翌年には1200万台を超えるという驚きの結果を残している。
また、2017年に後継機のP10シリーズが発売されるとさらにその勢いは加速する。AppleのiPhone7とほぼ同じ大きさのP10だが、画素数では2倍以上、バッテリー容量も約1.5倍とその性能を大きく凌いだのだ。そして、価格もP9とほぼ変わらないままで。アップルの弱点といわれてきたカメラ機能に狙いを定めた商品開発だった。
誠実な技術向上
【※日本本社のある丸の内ファーストスクエア】
とはいえ、ファーウェイブランドがいきなり日本に受け入れられたわけではない。
2009年にイー・モバイルのWi-Fiルーター「Pocket WiFi」をリリースし、UQモバイルと並んでポケットWi-Fiというジャンルを確立するヒットとなった。だが、スマートフォン端末となると2012年にNTTドコモから「Ascend HW-01E」を発売するも、製品の個体差があり「やっぱり中国製は・・・」という評価を残してしまった。
その後も後継機がドコモへ供給されたが、発売が遅れるなどのトラブルにより、短期間でその成果を発揮することはできなかったのだ。しかし、そうした日本企業との提携によって、ファーウェイは日本の品質管理の大切さや、「安かろう悪かろうでは世界では通用しない」ことを学び、品質管理と技術の向上に積極的になる。
その結果、日本国内での格安スマホブームが追い風となって、低価格・高品質のイメージが世界で根付くようになった。
今のニーズが空洞化?
今回、auから発売される「nova 2」は、販売価格が3万円前後になるという。中級機種という位置付けらしいが、価格を考えるとかなり割安感が漂う。
これはauが「ユーザーのニーズがもっとも集まるボリュームゾーン」の機種と考えているためだ。高価格と低価格の両極化が進んだ日本市場において、あえて空洞となったゾーンに投入してきた。さらにそのなかでも「中華系メーカーの端末をキャリアが扱う」という安心感は大きい。さらに中国では多くのメーカーがひしめきあっているが、auでは現在のところ他社の採用についてはあまり前向きではない。
現在のところ、日本のキャリアが認めた唯一の中華系スマートフォンといっていいだろう。今後もファーウェイの勢いは止まりそうにない。
最後に
以前に私は、「完全ワイヤレスイヤホン はなぜ人気なのか?」といったオーディオ関連記事の中で、今では中華系・ノンブランドのメーカーでも偏見を持たないほうがよいと書いた。オーディオ系では、日本のバイヤーが自ら中国で納得できるものを探したり、メーカー側から販売店に売り込みに来ることがある。こうした日本の品質管理という厳しい目にさらされてきた中国メーカーは侮れない。
ファーウェイも同じで、日本製の端末が凋落していくなか、高品質・低価格の中華系メーカーの製品を身近に感じている若者世代を中心に受け入れられるはずだ。
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ごめんむり