最近、台湾料理店が多い。私の住まいは静かな田舎町だが、それでも2軒は知っている。
とりわけ自宅から近い1軒はよく利用させてもらっているが、ランチがすごい。ボリュームと安さが吊り合っていない。客としては嬉しい限りだが、どこも閉店した飲食店を居抜きで開店したり、コンビニの店舗を改装したものばかりだ。
これは一体どういうことか調べてみた。
台湾料理店 ランチ・ショック!
私が月に数回ランチに利用する台湾料理店も、以前は日本蕎麦屋だった店舗を居抜き(内装はそのまま)で営業している。平日のランチはメイン+ラーメンのセットにライス、サラダ、揚げ物が付いて税込み750円という安さだ。メインは20種類ほどあり、「海老のチリソース炒め」や「回鍋肉」、「ピーマンと牛肉の細切り炒め」といったスタンダードなものから「ホルモン炒め」「エビマヨ」という完全に日本スタイルなものまで幅広い。
しかもメイン、ラーメンともに一人前分はある。さらに、ライスはおかわり自由。つまり、二人前+αということになる。絶対にデートには向かないが、一人でなら遠慮なく大食いできる。ラーメンは「醤油」「味噌」「台湾」と選べるのだが、「台湾料理にも味噌ラーメンはあるのか?」などと考えつつも、もっと根本的なことに気付いた。
「台湾ラーメン」は台湾料理にはない。醤油ベースのスープに挽肉、ニヤ、もやしを唐辛子と一緒に炒めて麺の上に乗せたものだが、これは名古屋発祥のラーメンである。逆に台湾では名古屋ラーメンと呼ばれている。
ブローカーの影
こうしたことに疑問を持ちながらも、味はいいので構うことはなかったが、調べてみると「やはり」という部分と「意外」と思える事実が判明した。
「やはり」というのは、台湾人が日本にまで大量に出稼ぎに来ているとは思えないこと、仮に台湾人でも提供される料理が中華料理ばかりという点で、実際は中国人が経営しているんだろうとは思っていた。従業員の日本語も片言で、愛想はいいが長年日本に住んでいるとは思えないレベル。しかも、家族経営で店には1歳くらいの赤ちゃんを抱いたまま接客する女性がいる。差別するわけじゃないが、そういったところもアットホームというより大雑把なのだ。
やはり、こうした台湾料理店の経営者は中国人で、調理人は東北地方の出身者が多いらしい。もちろん、個人的に日本へ出稼ぎに来ているわけではない。中国のブローカーが斡旋していたのだ。
働くのは本物の料理人
中国側にブローカーがいても、日本で受け入れる人間がいないとこうした仕組みは成立しない。
そこで日本側の受け入れ先(斡旋業者)は、日本に帰化している中国人である。そうした中国人は、すでに日本で中華料理店を経営している者が多いらしい。従業員を増やしたり、業務拡張のために本国から人を呼ぶ。
こうして日中の業者が日本で働きたい中国人を募集して、仲介手数料を受け取るわけだ。もっとも、そう簡単には日本で働けないので、中国で調理師として実績があり、就労ビザが下りるかどうかの審査が事前にあるとか。しかも、本人が調理人であれば、妻のビザは不要だという。そう考えると私の行き付けも開店時期を考えれば、日本で子供が生まれていたとしてもおかしくない計算だ。
まぁ、このようにして現地での審査に通れば日本に来ることができる。
永住を夢見て
そして、また「やはり」と思ったのが、仲介手数料の相場。
これが、150万~200万円ほどするらしい。簡単には比較できないのだが、中国の農村部などに住む低所得者層の年収が平均100万円以下(推測5億人)、サラリーマン層で平均250万円~(推測2億人)というから、仮に150万でも集めるのは大変だろう。
だが、そこは文化の違いで親戚から借りまくるのだそうだ。中国では親戚内での金の貸し借りは良くあることらしく、ましてや日本へ出稼ぎに行くということなら充分返せるアテがあるということにある。さらに、日本で頑張って永住権までとれば、両親や親戚も日本へ呼べる。だから初期投資として150万でも支払う。
そこで気になるマージンだが、なんと「100万円」近くになるのだとか。これもやはりといった感じだが、実際のところ、このマージンで調理人を2~3人呼べば新規オープンでもすぐに儲けが残る計算になる。現地のブローカーに支払う分け前や、調理人への給料などは日本円で安くても十分なので、経営者はマージンの大半を手にできるという仕組みになっていた。
意外なことも
さて、ここからは「意外」と思った点だが、まずはこのシステムが生み出されたのが名古屋だったことだった。
ここで初めて台湾ラーメンと結びつく。そして、大盛りなのはコスパの良さをウリにしているだけでなく、もともと彼らの出身地の中国東北地方の料理は大盛りなんだそうだ。味付けが濃い目なのも同じ理由で、日本人の舌に合うように味を調えつつ、ガッツリ系の味付けになっていた。
さらになぜ「中華料理店」ではなくて「台湾料理店」かというと、単純にイメージの問題らしい。老舗や個人経営の中華料理店ならいざしらず、新規に続々オープンする店が中華料理店ばかりだとイメージが良くないと思っているらしい。そこで、本来は関係ないのに台湾料理店を名乗っている。店の外装がどこも同じような理由も、日本にいる中国人の看板屋がテンプレートを持っていて、派手な看板も簡単にできるのだそうだ。
意外だったり、納得だったりするわけだが、そうして真面目に日本で働いている中国人には、早めに借金返済ができるといいなと思っている。
最後に
一種の「華僑ネットワークを駆使したビジネス」だが、招く側も大変らしい。永住権だけでは物件契約が難しいために、日本へ帰化しないといけない。やはり、信用度が違うということで、出稼ぎの調理人は、ある程度の稼ぎが貯まれば帰国できるが、経営者側は日本の地で生活していかなければならないのだ。
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