2023年3月、アステラス製薬の日本人男性社員が中国当局に拘束されてから、2025年で丸2年が経過した。
スパイ容疑で捕らえられたこの50代男性は、いまだに解放の目処が立たず、家族や関係者は不安の日々を送っている。
中国政府は「国家安全保障上の理由」を主張するが、具体的な証拠は一切公表されていない。
この事件は、単なる企業の社員の問題ではない。日本と中国の関係が極度に悪化する中、在中邦人全員が人質同然の状況に追い込まれる“最悪のシナリオ”への序曲なのだ。
特に、台湾有事が現実味を帯びる今、日中関係のさらなる緊張は避けられず、約10万人の在中邦人が籠城を強いられるリスクが急浮上している。
断続的に拘束される日本人

画像 : 止まらない在中邦人の拘束 wiki c N509FZ
中国による日本人拘束は、この事件が初めてではない。
2015年以降、スパイ容疑などで少なくとも17人が拘束され、その多くが長期間にわたり釈放されなかった。
この背景には、中国の「反スパイ法」が2014年に施行され、曖昧な基準で外国人を標的にできる法制度が整ったことがある。
アステラス製薬の男性も、医薬品開発という業務が「国家機密に関わる」と一方的に判断された可能性が高い。
しかし、今回のケースが特に不気味なのは、中国が経済的な報復を超え、政治的な“見せしめ”として日本人を利用し始めた兆候が見られる点だ。2025年現在、台湾を巡る米中対立は激化し、中国は日本を「米国の同盟国」として敵視する姿勢を強めている。
もし台湾有事が勃発すれば、日本が米軍支援の拠点となることは確実で、その報復として中国が在中邦人を拘束する可能性は極めて高い。
想像してみてほしい。台湾海峡で軍事衝突が起きれば、中国は即座に日本への経済制裁を発動し、邦人企業への締め付けを強化するだろう。さらに、日本人が「スパイ」として次々と拘束され、身柄を解放しないまま外交カードに使う。
そうした事態が現実となれば、在中邦人の安全は一気に崩壊しかねない。およそ10万人とされる日本人が、自宅や職場に閉じ込められ、食料や水などの生活必需品すら確保できない“籠城生活”を余儀なくされる可能性もある。
加えて、中国国内で反日感情が再燃すれば、暴徒化した市民が日本人居住区や関連施設を襲撃する恐れも出てくる。過去の反日デモでは、日本大使館が包囲され、邦人企業が略奪や破壊の被害を受けたという前例もあるのだ。
今後も日本人の拘束は続く?

画像 : 99式戦車 中国が開発した第3世代主力戦車 wiki c Tyg728
アステラス製薬の日本人社員が2年もの間、中国当局に拘束されたままであるという事実は、中国が「必要とあらば、いつでも同様の措置を取れる」という無言のメッセージを日本に送っているかのように映る。
解放されない彼の姿は、在中邦人全員の未来を映す鏡なのかもしれない。
仮に台湾有事が現実のものとなれば、日中関係は深刻な悪化を避けられず、多くの日本人が中国国内で孤立無援の立場に追い込まれる可能性がある。パスポートを取り上げられ、出国の自由すら奪われるといった事態も非現実的な話ではない。
それにもかかわらず、日本政府の対応は極めて慎重で、目立った動きが見られない。今こそ企業も個人も、中国からの退避や事業リスクの再検討といった“備え”を進める時ではないか。
2年目の拘束事件は、私たちに残された時間が少ないことを突きつけている。今後、在中邦人全体が“交渉材料”として扱われる日が訪れないとは、誰にも言い切れないのだ。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
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