グローバル化が進む日本
近年、日本にも多くの外国人が仕事や留学、結婚などの理由で移住してきている。
筆者の住んでいる地域では以前は中国人が圧倒的に多かった。自動車部品工場には若い20代の中国人女性が技能実習生としてやってきていた。市内にある大学の留学生もほとんどが中国人だった。
しかしそれも約10年前のことで、現在では中国人はほとんど見かけない。
現在はネパール、ベトナム、スリランカの人が圧倒的多数で、浅黒く堀が深い人たちを多く見かける。
留学生たちの現状
留学生として日本にやってくる外国人たちも様々だ。
筆者は今回、某食品工場に入って外国人留学生のアルバイトの現状について調査する機会があった。そこではネパール、ベトナム、インド、スリランカなどの国の留学生が100人近くアルバイトしていた。
話しかけて日本語の理解度を確認してみると、大体の人が簡単な会話はできるようだった。
しかし日本での生活が2年以上という人でも、基本的な日本社会のルールがわかっていない人が多かった。
アルバイトを雇用する側も、色んな場所に英語やベトナム語など各国の言葉で注意書きをしていた。
しかし指示を出す側の人間が日本語で話す場合、外国人からすると分かりにくい表現を使ってしまう例が多いのである。
例えば悪い商品を見て「これははぶいて」と言う。製品にならないので捨てろという意味だ。
しかしこれは外国人にとって非常にわかりにくい。そしてさらに悪いことにあまり返事をしない外国人もいる。わかったのかわからないのか意思疎通が難しいのである。
これでは単純作業とはいえ、仕事がスムーズに進まない。
やさしい日本語
「やさしい日本語」というのがあるのをご存知だろうか?
外国人向けのいわゆるわかりやすい日本語のことである。これは全く日本語ができない人向けではなく「ある程度理解できる人」向けの日本語となっている。
外国人が日本に住むためには、色々な手続きが必要となる。日本人が国内で引越しするときも同じだが、区役所、市役所に行って転居手続きなどを行わなければならない。現在デジタル化が進んだとはいえ、多くの場面で書面にサインしたり、細かい規約を理解しなければならないのである。
毎回通訳がついていくわけにもいかず、多くの場合は自分で処理しなければならない。
共通語と言われる英語も、日本においては満足に話せる人は少ない。
ではどうするか?外国人側の日本語スキルを上げるのが一番良い方法だ。いずれその人たちも日本で働いたり、生活しなければならないからだ。
「やさしい日本語」は、1995年1月に起きた阪神淡路大震災の経験が元になっている。
日本人だけでなく、外国人の多くも被害を受けた。中には、英語も日本語も満足に理解できず被害を受けた方もいる。
そこで考えられたのが「やさしい日本語」なのである。
例えば、敬語や丁寧語など文章の重要な情報と関係のないものは省く。対象者、発信元、連絡先、日にちや時間など重要な部分は省略しない。
特に災害発生時に有効となる。
例
通常文 「高台に避難して下さい」
やさしい日本語 「高い 場所へ 逃げて ください」
この文章の場合、「高台」や「避難」といった単語を知らない場合があるので、簡単に理解できる言葉に言い換える。
助詞を使うときも注意する。助詞の学習は多くの外国人にとって困難なため、用途が多くある助詞はなるべく使わないようにする。
上記の例文であると「に」は用法がいくつかあるため、方向を示すのに使う「へ」を使う方が伝わりやすいのである。
日本語は多くの場合敬語や遠回しな表現、時には逆接を使って表現したりする。そうなると外国人は理解できない。
そこで、一番シンプルに言いたいことを伝える方法が「やさしい日本語」なのだ。
日常生活のちょっとしたことであれば、少しばかり意味を履き違えてもいいのだが、命に関わるような大切な情報は確実に正確に伝えなければならない。
文化や言語の違う人たちが共に快適に暮らす社会の実現への道は、まだまだ課題が多くある。
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