精神疾患やメンタルヘルスについての情報が多く出回るようになった現代。
SNS上などで話題になる「メンヘラ女子」「サイコパス」等のワード。
これに関連してくるのが「 パーソナリティー(人格)障害 」の概念である。
病みがちな現代人や問題行動に走る人など、色々な人の人格面について理解するヒントがある。
今回は、このパーソナリティー(人格)障害について見ていこう。
パーソナリティー(人格)障害の定義
パーソナリティー(人格)障害とは、
「その人の属する文化から期待されるものより著しく偏った内的体験および行動の持続的パターンであり、ほかの精神障害に由来しないもの」
と定義されている。 (世界保健機構の精神疾患の診断基準(ICD-10)、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-IV-TR 2000))
人格の障害というと、まるでその人の人間性自体が間違っているかのようなイメージを抱きがちだが、そうではないことに注意したい。
素人考えで「あの人は性格が悪くて迷惑だから、パーソナリティー障害に決まっている」という考え方は危険であり、専門家が扱うべき問題と考えたほうがいいだろう。
メンタル系疾患・障害は身体の病気と違って軽く見られがちな風潮はまだある。
パーソナリティー(人格)障害のタイプ
パーソナリティー(人格)障害には、大きく分けて3タイプのものがあるとされている。
●Aグループ(奇妙で風変わりなタイプ)
妄想性パーソナリティー障害 (不信感や猜疑心が強い)
統合失調質パーソナリティー障害 (他者に無関心)
統合失調型パーソナリティー障害* (言動が奇妙でしばしば不適切)●Bグループ (感情的で移り気なタイプ)
境界性パーソナリティー障害 (見捨てられ不安、感情や衝動のコントロール困難)
自己愛性パーソナリティー障害* (弱い自尊心のため、逆に自己評価が過大で褒められていたい)
反[非]社会性パーソナリティー障害 (反社会的で衝動的、他人を利用する)
演技性パーソナリティー障害 (人に注目されたいと思い、わざとらしい行動をする)●Cグループ (不安で内向的なタイプ)
依存性パーソナリティー障害 (他者への過度の依存、孤独に耐えられないこと)
強迫性パーソナリティー障害 (完璧主義で融通性がなく、こだわりが強い)
回避性[不安性]パーソナリティー障害 (拒絶されることへの不安があり対人関係を回避する)
これらの各パーソナリティー障害は、発達段階から兆候がみられる。
物事の捉え方や自己イメージ、気分のコントロールといった「パーソナリティー機能」の広い領域において問題が生じ、社会での対人関係や家族関係などで見受けられる。
いずれにしても、「自分は人に依存しがちだからパーソナリティー障害だ」等と自己判断で決めつけてはいけない。
心療内科を受診し、信頼できそうな医師に相談して何に困っているのかを整理し伝えよう。
パーソナリティー(人格)障害の特徴
このパーソナリティー(人格)障害は、メンタル医療先進国アメリカの統計(2004)によると人口の15%ほどが該当しているという。
それなりの割合になるが、人格障害だから受診するという訳ではなく、「人格障害が引き起こす二次的な精神障害(うつ病、薬物依存、自殺未遂など)」に苦しんで受診するのが実際だという。
人格障害を持つに至る原因は完全に究明されてはいないものの、中枢神経系の制御に問題が出ていると考えられるケースがあり、また、生育環境での苦しい体験によって引き起こされることもあるようだ。
治療では、認知行動療法やカウンセリングといった精神療法や、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や少量の抗精神病薬などを活用した薬物療法がとられることが多いようだ。
パーソナリティー(人格)障害はセンシティブな話題
日本でも少しずつ話題になりつつあるパーソナリティー(人格)障害だが、言葉の分かりやすさとは正反対にセンシティブ(取扱が難しい)な問題だ。
分かった気になってしまいやすいが、他の障害と同様に、
「あの人、人格障害っぽいよね」と噂をしたり、
「私、人格障害だから~」と、軽々しく言ってまわるようなことではない。
まして、ネット上のお遊び半分の診断サイトなどでチェックして、SNSでつぶやきまくるような行為は誰のためにもならないので気をつけたい。
また、他の障害と比較して
「人格障害は甘え」といった否定的な決めつけや
「人格障害に障害年金が出ないのは不公平」といった主観的な主張も控えておきたい。
こういった発言は、SNSが普及しきった現代だからこそ気をつけたい。
生き辛さの中で
色々と生き辛さがつきまとうパーソナリティー(人格)障害だが、SNSでも現実社会でも、どう自己の問題を捉えているかによって幸福度は変わる。
人格障害「だから」人生がうまくいかないのか人格障害「だけど」頑張って生きようとしているのか。
その部分を人は見ているのかもしれない。
障害特性との関係で、他者も自分自身も信頼できないことも多いだろう。
その中でも、精一杯治療していこうとするあなたを応援したい。
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