道教とは?
道教は、日本人には聞き馴染みのある宗教の一つだろう。
道教は中国三代宗教の一つに数えられる。時には外来宗教を除いてその後に残る中国の宗教形式をすべて「道教」の名で呼称する場合もある。漢民族の伝統的な宗教で、宇宙や人生の根源的な不滅の真理を指す「道(タオ)」を概念の中枢に置いている。
多神教であり、実はその概念規定は確立しておらず様々な要素を含んだ宗教である。一般には老子の思想を根本とし、その上に不老長寿を求める神仙術や符籙(おふだを用いた呪術)、斎醮(亡魂の救済と災厄の除去)仏教の影響を受けて作られた経典・儀礼など、時代とともに様々な要素が積み重なった宗教とされる。
道教は中国の様々な伝統文化の中から生まれており、中国で古くから発達した金属の精錬技術や医学理論との関係も深い。
道教は後漢末期ごろに生まれ、魏晋南北時代を経て成熟に定型化し、隋唐から宋代にかけて隆盛の頂点に至った。その長い歴史の中で、悪魔祓いや治病息災、占い、姓名判断、風水といった巫術や迷信と結びついて社会の下層に浸透していった。
一方で、社会の上層にも浸透し道士(道教に教義にしたがった活動を職業とするもの。男性の道士は乾道、女性の道士は坤道という)が皇帝個人の不老長生に欲求に奉仕したり、皇帝が道教に力を借りて支配を強めることもあった。
こうして道教とその文化は現代にまで引き継がれ、様々な民間風俗を形成している。
老子
道教のほとんどの宗派で老子は神格として崇拝され、三清(道教の最高神格のこと)の一人として数えられる。「老子」は偉大な人物という意味で、本名は「李耳」である。
老子については諸説あり紀元前6世紀の人物とされるが、ある歴史家は神話上の人物であるとか、複数の歴史上の人物を統合させたという説もある。
儒教の創始者である孔子が、儒教思想における「礼」の教えを受けるために老子のもとを訪れたという記録もあることから、孔子と同時代を生きた人物だと考えられている。
老子は中国文化の中心を為す人物の一人で、貴族から平民まで彼の血筋を主張するものは多い。
老子は周の偉大な歴史家であり占星家とされている。
道徳を修めた老子は自分が有名になることは望んでおらず、ひっそりと暮らしていた。しかし心身や周の国の国力の衰えを感じ、ローマに旅だったとされる。その際に国境の関所にて、役人から「隠居するなら、その前にぜひ教えを書いていただけませんか」と請われ、「老子道徳経」を書き上げた。
老子の教え
老子が書いたとされる「老子道徳経」はおおむね5000文字程度である。大きな特徴として、固有名詞がひとつも使われていないことが挙げられる。そのため、「老子道徳経」は老子の考えをまとめたものではなく、道家のことわざを集めたものであるという見方もあり、これが老子は実在しなかったのではないかという説の根拠になっている。
老子の思想の根源は「無為自然」つまり人はあるがままに生きるべきだという意味である。
孔子をはじめとする儒家の教えには批判的な立場をとっており、老子いわく「仁・義・礼・智・信などがもてはやされるのは現実にはそれらが少ないからであって、大道の存在する理想的な世界においては必要のない概念である」と説いている。
例えば歴史学者が、過去の文献のなかに「立小便を禁じる」という法律を見た場合、「立小便する人が多かった」と判断することに似ている。立小便をする人がいないのであれば、それを禁じる必要もないということである。
老子の名言をいくつか挙げてみよう。
「足るを知る」
すでに十分満足できる状況にあることを知り、感謝することが大切だという教え。
「大器晩成」
大きな器が完成するまでに時間がかかるように、偉大な人物は大成するのが遅いという考え。
「真言は美ならず、美言は真ならず」
正しい言葉は聞こえが良く、聞こえがよい言葉は正しくないという意味。耳に痛い言葉こそ聞く価値があるという教え。
「上善は水の如し」
低い場所に向かって自由に臨機応変に流れる水のような生き方が理想的であるという教え。
「其の光を和らげ、其の塵に同ず」
自ら自慢する者は業績を認められない。自ら才能を誇る者は人の長になれない。このような行いは周りから嫌われるという教え。
「人を知る者は知なり、自らを知る者は明なり」
他人を理解する者が知者であり、自分自身を理解する者は明知の人であるという教え
老子の教えと道教
道教の教えは「道」と一体となるために、錬丹術で不老不死の霊薬を作り、仙人となることが理想だとされる。
実は老子など「道家」と言われる人々の思想と、道教の間に直接的な関係はない。
当時はインドから入ってきた仏教が信仰勢力として台頭していて、それに対抗するために漢民族の土着信仰を体系化する必要があった。その過程で老子を仏教の釈迦や儒教の孔子のような存在として教祖に据え、その理想を取り込んでいったのである。
その後、仙人の存在など古くからの「神仙思想」を基本に、老荘思想や陰陽五行説などさまざまな要素が入り込み、独自の様相を築いていったのである。
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