大正&昭和

【かつて信者数30万人を獲得した新興宗教】 大本と出口王仁三郎

オウム真理教と大本

オウム真理教は1990年代の日本で数々の事件を引き起こし、最終的には地下鉄サリン事件などのテロ行為に及んだカルト集団でした。

教祖・麻原彰晃(本名・松本智津夫)を始め、各凶悪事件の実行犯らに対する死刑が2018年に執行されました。

当時、敵対する人物の拉致・監禁、殺害や化学兵器・サリンを使用した無差別テロなどあらん限りの犯罪を犯していたものの、当初は状況証拠でオウムを犯罪者扱いするのは戦前の大本の宗教弾圧に通ずる恐れがあるとして、マスコミ各社・識者の中には擁護する姿勢が大勢を占めていました。

オウムでさえも過去のことになりつつある中で、そもそも戦前の宗教弾圧と言われた大本(おおもと)について調べてみました。

出口王仁三郎と出口なお

大本と出口王仁三郎

※出口なお 1916年撮影

大本 は「開祖」と称される出口なおという女性が1892年(明治25年)、56歳のときに突如として日本神話における高級神「国常立尊」(くにのとこたちのみこと)の神憑りを起こしたという事象から端を発した宗教です。

当時の日本では天理教などの他の新興宗教でも神憑りから発しており、日本古来からある巫女の系譜に繋がるものと見做されています。

なおは文字が読めなかったも関わらず、神憑りをすると自動書記で大量の文章を書くようになったと伝えられています。

しかし新興宗教としての大本は、なおの住んでいた京都丹波地方の一宗教に過ぎず、大本が広く世に知られることになったのは、尚の五女である出口すみの婿となった出口王仁三郎(でぐちおにさぶろう)の出現によるものでした。

大正日日新聞を買収

大本と出口王仁三郎

※出口王仁三郎

出口王仁三郎大本は、なおが死去した後の1919年(大正8年)にかつての戦国武将・明智光秀の居城であった亀山城址を教団の本拠「天恩郷」として整備しました。更に翌1920年には、大正日日新聞を買収して新聞というメディアを通して大々的な普及活動に乗り出しました。

著名な英文学者であった浅野和三郎が入信したことで、知識人たちからも注目を浴びる事になった大本は当時の時代背景、世界的なスピリチュアリズムの流行にも助長されて一躍に知名度を高めて行きました。

また王仁三郎は、現世利益や病気の治癒を求めた人に対しカリスマ的な言動によってその支持を得て、多くの信者を獲得することに成功しました。

信者数30万人を獲得

王仁三郎らの大本は、やがて軍人や皇族までも信者として獲得するに至りました。

これには殊にかつて海軍機関学校の教官を務めた浅野の貢献が大きく、帝国海軍では大本思想の浸透が進みました。戦艦・香取内では公然と布教が実施され、日本海海戦の立役者であった秋山真之も大本を研究したと伝えらえれています。

大本が当時の人々の支持を得た大きな要因のひとつにその終末論が挙げられます。

折しも第一次世界大戦後の荒廃した世相にあって、以後の太平洋戦争や大都市の空襲などを予言して見せたことで、信者の数は30万人とも言われる程に達しました。

弾圧と現在

しかし幸か不幸か、大本はこの信者数の膨張から時の政府に危惧される存在になっていきます。

殊に当時の国家神道と異なり「天照大神」ではなく「国常立尊」を崇め、軍を始め皇族にまでも信者を拡大し、更に国家の滅亡にまで言及するようになった大本は、当局から秩序の破壊を目論む集団と見做されるようになりました。

大本と出口王仁三郎

※「大本教本山宮の取毀ち—十月二十日」(綾部)『寫眞通信』大正十年十月號、大正通信社

大本は1921年(大正10年)には第一次大本事件と呼ばれる不敬罪・新聞紙法違反での取り締まりを受けました。

更に1935年(昭和10年)には警官隊約500人が投入された第二次大本事件が発生、このときは不敬罪と治安維持法違反の罪状での本部施設の破壊など、徹底した取り締まりが行われました。

しかし、日本の敗戦後1945年には復活し、1980年代には内紛により「大本信徒連合会」と「宗教法人愛善苑」に分裂するも現在でも存在しています。

大本には教典となる出口王仁三郎の著、「霊界物語」がありますが、こちらのサイトにて全て無料で購読することができます。

霊界物語無料購読 → 霊界物語ネット  https://reikaimonogatari.net/

関連記事 : 【群馬伊香保に突如できた謎の巨大宗教施設】佛光山 法水寺とは一体何なのか?

 

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