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五月病になる前に人間関係対策をする
新学期、新年度がスタートして、多くの人が新たな環境や新しい人間関係を構築し始めている。
4月はまだ手探り状態で、新生活に慣れようと努力している時期かもしれない。
しかし、1ヶ月も経てば、街や部屋、学校や職場に少しずつ慣れてきたり、人間関係が固まってきて自分のペースやパターンが掴めるようになってくる。
ここで発症しやすいのが五月病だ。
期待していたほど新生活を楽しめず、人間関係にも馴染めず、学校や職場に行くのが憂うつに感じるようになる症状である。
「五月病はとくに、人間関係がうまくいかなくてご相談にいらっしゃる方が多いですね」
心理カウンセラーのA先生は言う。
それならば、新生活がスタートし始めた今の時期から対策をしておけば、多少なりとも五月病を避けられるのではないだろうか。
A先生に、「うまくいかない人間関係を乗り越えるコツ」を取材してみた。
「正しい・間違い」「善・悪」の二項対立構造を手放す
「新学期や新年度に限りませんが、人間関係で思い悩む人は、たいてい自分にも他人にも厳しいんです。
自分の意に沿わなかったり、コミュニケーションがうまくいかないと、相手のせいにするか自分を責めるかしてしまう。
どちらが正しいか間違っているかとか、善か悪かとか、二項対立構造に陥って身動きがとれなくなり、苦しみを感じてしまうのです。そうなっている自分に気づいたら、「正しい・間違えている」「良い・悪い」という二項対立の価値判断自体を手放すとラクになれますよ。
人間関係の目的、そしてコミュニケーションで大切なのは、『正誤や善悪にこだわるのではなく、いかにお互いの違いを理解してつながり、一緒に幸せを築いていけるか』ですから。」(A先生)
たしかに筆者自身も人間関係で思い悩む時は、「自分が正しくて相手は間違っている」とか、逆に「自分は間違っていて相手が正しいんじゃないか」とか、「相手が悪いことをしたのだから向こうから謝るべきだ」などと思っているうちに関係がこじれていくことが多いことを思い出した。
A先生がおっしゃる、「お互いの違いを理解してつながり、一緒に幸せを築いていく」という人間関係とコミュニケーションの目的をつい忘れてしまうのだ。
正誤や善悪の二項対立を手放したら、次はどうしたらいいのだろうか。
相手のことも自分のことも許す
「許すことですよね。
正誤や善悪の二項対立を手放せれば、自然とこだわりが薄れて相手や自分への許しが起きてきますから、関係がこじれたことを悔いていることを相手に伝えてつながり直すことで、お互いにとって必要なご縁であれば仲直りしやすくなります。」(A先生)
しかし、それでも相手のことが生理的に嫌いになってしまったり、深く傷つけられた場合は再びつながることに怖れを感じてしまうケースもあるのではないだろうか。
相手を許せない自分のことを許す
「そういう場合は、相手を許せない自分のことを許す、ということをしてみてください。
『今は、相手を許せないくらい、自分に余裕がないんだな』
『私には、この人を受け入れたくない何らかの理由があるんだな』と、
許せない自分自身をいったんそのまま肯定して受け入れてみるんです。
『今はこれでいいんだよ』と自分の中の子どもに声をかけてあげるイメージです。すると、自分の中で何かがスルリとほどける感覚が湧いてくるでしょう。」(A先生)
筆者も関係がこじれて以来、許せない人がいて、ことあるごとに脳裏に浮かんで不快な思いをすることがあるのだが、「相手を許せない自分を許す」ことをしてみたら、ハートのあたりがゆるんでラクになれたような気がした。
自分との関係を良好にする
「日本人は自分に厳しくて、無意識のうちに心の中で自分のことを責めている人が多いんです。
つまりそれは、自分との関係がうまくいっていないということ。
自分との関係がうまくいっていないのに、他者との関係がうまくいくはずがないんですよね。
ですから、他人との関係を気にする前に、まずは『自分との関係を良好にすること』がとても大切です。そのためには、日々、いかに自分のことを責めているか、気づくように意識するいいですよ。
その度に自分のことを心の中で許してあげてください。自分を許すことが習慣になると、他の人への見方も変わってきて、コミュニケーションのすれ違いが起こっても自然と許せるようになってきます。
あるいは、すれ違い自体が起こりにくくなってきます。それだけでも人間関係の悩みがずいぶん減るはずです。」(A先生)
自己受容は過去形、自己肯定感は未来形
ここ数年、「自己肯定感を高める」「自己受容する」といった自分を愛するメソッドがはやっているが、「自分を許すこと」と何か関係があるのだろうか。
「もちろんです。
自分を許すことは自己受容そのものです。『自己受容』は、過去の自分を認め、受け入れて許すこと。
『自己肯定感』を高めるのは、未来の自分をよりよく生きるため。自己受容が深まると自己肯定感も少しずつ高まっていきますから、まずは自己受容を深めることを意識してみてくださいね。」(A先生)
「自己受容」と「自己肯定感」に、過去と未来のベクトルの違いがあることはあまり知られていないのではないだろうか。
未来の自分が自信を持って人生を輝かせられるように、まずは過去の自分を受容することから始めてみるのがいいのかもしれない。
また、今うまくいかない人間関係が目の前に横たわっているなら、「人間関係がうまくいかない自分を許す」ことも必要だ。
「何より大切なのは、人間関係では、無理して相手に合わせてつきあう必要はない、ということを知っておくことです。
自分にとって、相手との心地よい距離感を探ることも、健全な人間関係を築くためのコツのひとつです。」(A先生)
つい我慢したり自分を責めたりしがちな日本人ならでのアドバイスといえるだろう。
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