中国史

古代中国では「猫」はどんな存在だったのか? 【黒猫は縁起が良かった】

䤕抓老鼠

古代中国では「猫」はどんな存在だったのか?

画像 : イメージ

中国には、こういう諺がある。

䤕抓老鼠(猫はネズミを捕まえる)

猫がネズミを捕まえるのは、抗えない本能である。
この諺は「逆らうことのできない道理がある」という事を語るときに使われる。

昔、猫は可愛いペットとしてではなく、ネズミを駆除するために飼われていた。
いわゆる仕事をする動物、家畜としての扱いだった。

猫の記述は歴史的にも古くからある。日本でも多くの美術作品のモチーフとなり、文学作品の中にも登場している。

では、古代中国において猫はどのような扱いだったのだろうか?

新石器時代

古代中国では「猫」はどんな存在だったのか?

画像 : イメージ

近年、泉護村遺跡(新石器時代・紀元前約4000年~2000年)から二匹の猫の骨が見つかった。
8個の骨格が発掘され、その中には下顎と骨盤が含まれていた。

その中の一匹から、明らかに大量の穀物を食べていた形跡が見つかった。そのことから元々肉食であった猫が、人間が栽培していた農作物を食べていたことが分かった。そしてその猫は非常に高齢であったという。

つまり、人間に飼われて手厚く世話を受けていたことが明らかになったのである。
中国では、新石器時代から猫と人間は非常に近い距離で生活していた。

猫 vs ネズミ

唐朝の時代、猫はネズミを追うために飼われていた。

仏教の経典など大切な書物をネズミから守るために、猫が飼い始められたという。

元々猫は中国には存在せず、唐の時代に書物を守るために持ち込まれたという説もあるが、先述した通り新石器時代に飼われていた痕跡があり、秦朝以前の多くの文書にも登場している。

清朝の人が好きだった猫

現代でも品種の流行があるように、清朝の時代にも好まれる「猫のタイプ」があったようだ。

清代の『相猫経』という書物にはこんな記録がある。

「猫は、黄色が一番良い。その次は純白、その次は純黒である。」

清代の人々は、猫の毛色でランク分けをしていたのである。

現代における黒猫は、魔女が連れていたり「朝一番に黒猫が前を横切ると、縁起が悪い」といった迷信がある。

古代中国では「猫」はどんな存在だったのか?

画像 : イメージ

ところが清代では、黒猫は神秘的でまるで仙人のようなイメージを持たれていた。
黒猫は邪気を払う縁起の良い猫」とされていたのである。福を呼ぶ猫として珍重されていた。

最も好かれていた黄色の猫は、現代でいうと虎猫といったイメージだろうか。

金絲虎」と呼ばれていた。

画像 : 虎猫 イメージ

毛色がまるで黄金のように輝いて見える事から「純金のように価値のある猫」とされていた。

ちなみに、黄色の虎猫はオスが多く、黒猫はメスが多かったようで、虎猫のメスや黒猫のオスは貴重がられたそうだ。

その他、体が純白で頭や背中が黒い猫は「将軍の印」、背中や頭が黄色い猫は「白袍金印」と呼ばれ、重宝されていた。

清代の人たちは、猫の毛色別で性格なども分析していたようである。

このように中国では、古代から人と猫は親密な関係だったのである。

参考 : 中國人何時開始養貓 聊聊古文獻中的「貓」

 

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 毛沢東暗殺を企てた文化大革命の中心人物、林彪の謎の死とは?
  2. ビッグモーターと毛沢東 【過剰なノルマの行き着く先は?】
  3. 古代中国の謎民族「毛民」、仙人となった「毛女」……毛にまつわる不…
  4. 秦の始皇帝が行った恐ろしい刑罰とは
  5. 謎の古代中国遺跡で発見された「イヌ型ロボット?」 三星堆遺跡の神…
  6. 傾国の美女・楊貴妃 「いびきが大きく体臭がキツかった」
  7. 則天武后の半生について調べてみた【中国唯一の女性皇帝】
  8. 宦官について調べてみた【中国史の陰の主役】

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

「死の魔術」が行われていた冥界への入口がエルサレムの洞窟で発見される

ローマ帝国時代の異教徒たちが行っていた降霊術の証拠エルサレム近郊のテオミム洞窟の岩の隙間から、1…

【イエズス会の野望】 日本と中国の征服を計画していた 「日本人奴隷を輸出し、秀吉が激怒」

16世紀、ヨーロッパからやってきたキリスト教宣教団イエズス会は、日本での布教活動を精力的に行…

化け猫の伝説 鍋島騒動【肥前佐賀藩 龍造寺家と鍋島家のお家騒動】

鍋島騒動とは鍋島騒動(なべしまそうどう)は、肥前佐賀藩で起きたお家騒動である。戦…

家康は絶体絶命だった伊達政宗を秘かに助けていた 「関白秀次連座事件」

豊臣秀吉は、奥州仕置(東北の領土処理)後、甥の豊臣秀次を関白(天皇を補佐し、政務を行う役職)とした。…

曹仁の実像 「過小評価された曹操一族最強の名将」

魏の名将は徐庶の噛ませ犬?ゲームのシステムを理解するまで苦労する『三國志』シリーズだが、どのシナ…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP