城,神社寺巡り

桜の名所・高遠城について調べてみた 「信玄の五男・仁科盛信が最後を迎えた城」

高遠城とは

高遠城

画像:桜の季節の城門 public domain

高遠城の所在地:長野県伊那市高遠町東高遠

高遠城(たかとおじょう)は、長野県伊那市にあった諏訪氏一門の高遠頼継が居城としていた城です。
別名を兜山城といい、城郭構造は平山城となっています。

天竜川水系最大の支流である三峰川(みぶがわ)と藤澤川(ふじさわがわ)の合流地点にあり、標高はおよそ800m。
伊那市街を一望できる場所で、諏訪と伊那を結ぶ交通の要所でもあり、軍事的にも重要な場所です。

この城を居城としていた高遠氏は武田氏によって滅ぼされてしまいますが、その後は武田信玄の信濃進出の拠点として山本勘助秋山虎繁が大規模な改修を行いました。

その後、武田信玄の庶子である武田勝頼が諏訪氏を継承し入城しています。

高遠城

画像 : 武田勝頼(1546 – 1582)の肖像画 public domain

高遠城は織田氏による甲州征伐の際にも、織田氏・徳川氏に対立するための重要な軍事拠点となりましたが、1582年に織田氏の攻撃によって落城しました。

この時、高遠城に籠城していた松姫(信玄の娘)と、城を攻めた総大将・織田信忠(信長の嫡男)は、元婚約者同士であったそうです。

当時、高遠城主だったのは、信玄の五男・仁科五郎盛信(にしな もりのぶ)でした。

画像 : 仁科盛信 public domain

盛信は、織田信忠から降伏を打診されるも応じずに籠城し、織田軍の数万の軍勢を相手にわずか数千の兵で奮戦したものの、城は一日と持たずに落城し家臣の多くは討ち死、盛信も自害しました。

高遠城落城後、甲州征伐を行った織田信長が本能寺の変で落命、混乱する中で武田の旧臣・保科氏が北条氏の力をかりて高遠周辺を手中に収め、徳川家康の家臣となりました。

その後、家康が江戸へ移封されると保科も移動し、その後は城主不在となりました。

現在は高遠城を中心に高遠城址公園として整備されており、土塁や内堀などの遺構も残っており、春は桜の名所として秋は紅葉の名所として観光客のみならず地元の人々にも愛されています。

城内にある「進徳館(しんとくかん)」は、唯一残る江戸時代の建物です。建物の中に入ることはできませんが、当時の面影を今に伝える貴重な建物です。

高遠城址は、日本100名城にも選定されています。

時間があればこちらも

画像:高遠城 移築門 本人撮影

高遠城址公園には移築された高遠城太鼓櫓(移築)や、高遠閣(登録有形文化財)などがあります。

問屋門は、昭和に取り壊されそうになっていた門を有志が買い戻し、移築された問屋役所にあった門です。

上の写真は、長野県岡谷市にある久保寺の山門として移築されている高遠城の搦手門です。
お寺の場所は少しわかりにくいのですが、高台にあり諏訪湖が一望できます。道も狭いので行くのは少し大変かもしれませんが、お時間があれば是非行ってみてほしいところです。

他にも伊那市内に本丸門・本丸冠木門が移築されていますが、こちらは民家への移築です。

また、高遠城址公園では春には「桜祭り」、秋には「紅葉祭り」が開催され、2023年には紅葉祭りの際に、織田氏と仁科氏の戦いが再現されたショーが催され、高遠閣で新蕎麦がふるまわれるなどしました。

終わりに

高い石垣や天守が残っているわけではありませんが、遺構と共に桜や紅葉など季節を感じられる公園として親しまれています。

戦国時代には軍事や交通の要所として、また信濃国を攻める際の重要拠点とされていた場所です。高遠蕎麦や高遠饅頭はお土産物としても人気が高いです。

広い駐車場もあり、のんびりとお散歩するのにも適していますので是非行ってみてください。

参考 :
平山優「天正壬午の乱 本能寺の変と東国戦国史(戎光祥出版)」
河西克造「高遠城(丸島和洋編『武田信玄の子供たち』宮帯出版社)」
伊那市HP観光施設:伊那市公式ホームページ

 

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草の実堂編集部

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草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

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