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実は作り込まれている『エガオノダイカ』の小ネタ

『エガオノダイカ』に散りばめられた小ネタ


ロボットに戦争、そして主人公の覚醒フラグといった王道設定を盛り込み、名作になる下地を見事に無駄にしてしまった『エガオノダイカ』だが、細かいところや後で明かされた設定を知れば実は作り込まれた作品である事が分かる。

今回は、気付けば『エガオノダイカ』に散りばめられた小ネタを紹介する。

「星」を意味するバレバレな親子


主人公の一人であるステラは養子として帝国の家庭に引き取られるまでの記憶がなく、現在名乗っているステラ・シャイニングが名付けられた時期も、本名(出生名)も不明なのだが、公式サイトで各キャラクターが発表された時からステラに関係すると思われる人物がいた。

それは、元帝国の研究者にしてユウキの母親代わりとして熱心に教育していたレイラ・エトワールである。


ステラとレイラに共通する泣きボクロも気になっていたが、二人の名前に入っているステラ(Stella)とエトワール(Étoile)はどちらも「星」を意味する言葉だ。

あまりにベタな伏線なのでまさかと思ったが、4話でレイラが元は帝国の人間であると告白した事に加え、彼女にはテロで夫と娘を亡くしたというあからさまなフラグで視聴者はレイラの娘が誰かはもう分かっていた。

最終話で親子は再会するが、戦闘によって落ちて来た天井からステラを守る際にレイラは下敷きになって命を落としてしまう。

レイラはすぐにステラが自分の娘であると気付いたが、ステラはレイラを王国の人間としか認識しておらず、何故敵である自分を庇ったのか、母親であるレイラの口から聞く事は出来なかった。

早い人は放送開始前から、遅くても4話の時点で分かっていたので二人が親子である事に驚く声は皆無だったが、監督がこだわっていた「戦争のリアル」を生き別れた親子にまで持ち込む必要があったのだろうか。

自身の好みの話になってしまうが、筆者は使い古された展開が好きではなく、いわゆる「テンプレ」と言われる作品は敬遠するタイプだが、奇を照って外すよりは定番の展開で纏める方がむしろ安心して見られる事を学んだ。(中身がテンプレでも視聴者を飽きさせないようにするのが監督の仕事であり、戦争のリアルを描くにしても予想外な展開を狙いすぎて滑ってしまったのは悪手だったと言わざるを得ない

初見では気付かない車椅子の描写

帝国のビュルガー分隊に所属するピアース・ソーンは6話の戦闘中に負傷して、7話で除隊となるのだが、7話で登場した時は車椅子だった。

車椅子である時点で相当な重傷だった事が伺えるが、誰もピアースの状態に言及しなかったため何故車椅子になったのかは下記のツイートが投稿されるまで明かされなかった。

7話を見返すと、確かにピアースの右脚にブーツの皺が出来ており、前回の戦闘で脚を失ったという事実を暗に伝えている。

なお、軍を離れて隊長のゲイル・オーウェンズが運営する孤児院で働く事になったピアースは他の傷病兵達と一緒に国に帰る道中に何者かに襲われ、命を落とす事になるが、誰がピアース達を襲ったのかは最後まで明らかにならなかった。

謎が謎のまま終わるのはスッキリしないし消化不良と言わざるを得ないが、当初は帝国が用済みの兵士を始末して、それを知った帝国軍が王国に寝返り、ユウキの指揮の元で反旗を翻す熱い展開を期待する声が多かった。

過去の歴史を見ても樊城で于禁を破った関羽が投降兵を抱えすぎたため兵糧不足になったという逸話があり、それを避けるため帝国が秘密裏に使えなくなった兵士を始末したのも説得力がある説だ。

公式に発表されていないため真相は謎のままであり、だからこそ戦争のリアルを感じるが、リアルにこだわった結果がアニメとして肩透かしな結末というのは視聴者が求めていたものではなかったはずだ。

キャストも驚いた名前の秘密


主要人物が2話で死亡、理想論にこだわって戦況を自ら不利にする指揮官と家臣が対立した挙げ句次々に命を落とすなど終始チグハグだった王国の面々だが、ここで5人の名前に注目していただきたい。

Yuki Soleil
Joshua Ingram
Leila Etoile
Harold Miller
Izana Langford

普通に名前を見ただけでは現実にもありそうな名前という印象しかないが、それぞれのファミリーネームを入れ替えると、ある英単語になる。

Soleil
Miller
Ingram
Langford
Etoire

そう、5人の名前はSMILEという単語のアナグラムであり、ニコニコ生放送の生配信で名前の秘密が明かされた時は番組に出演したキャストも驚いていた。

こういう小ネタは個人的に大好きであり、厳しい評価をする一方で『エガオノダイカ』という作品が好きな理由でもあるが、5人が笑顔を見せるシーンはほとんどない上に、最後はユウキ以外全員死亡という結末は、戦争に関する方針の違いからユウキと対立していたとはいえ「やりすぎ」と言わざるを得ない。

もっとも、レイラ、ハロルド、イザナがユウキとともに降伏していれば無事だったという保証は何処にもない(彼らの命懸けの行動が最終的にはソレイユ王国を守っている)ため、戦争を泥沼化させた上に自らの死を招いた彼らの行動が愚行だったという事も出来ない。

ユウキも勝つために戦争をしている訳ではないため消極的な采配にフラストレーションも貯まるのだが、三国志に代表される戦争を題材にした作品が人気なのはあくまでフィクション(中心となる人物がほぼ全員優秀)だからだと実感している。

松岡禎丞が明かすオーディションの裏話


原作者など制作サイドからの直接オファーという例外もたまにあるが、アニメの役は9割以上オーディションで決まる。

『エガオノダイカ』のキャストもオーディションで決まった訳だが、気になるオーディションの内容をヨシュア役の松岡禎丞が語っている。

オーディション受験者は「第○話より抜粋」と書かれたオーディション用の台本を渡されると、そのセリフを演じるよう言われた。

そのセリフは明かされていないが、明らかに死亡フラグ満載なセリフに松岡禎丞は「こいつは死ぬ役だろうな」と思いながら演じていた。

オーディションの結果、松岡禎丞は見事にヨシュア役を手にするが、現場に入ると音響監督を初めとしたスタッフが何かを言いたそうにしており、周囲の態度に違和感を感じていた。

収録が始まると、待っていたのは僅か2話で迎えるヨシュア・イングラムの早すぎる死だった。

前述した通りオーディションの時点でヨシュアの死は予想出来たが、それが2話とは夢にも思ず、ヨシュアを演じた松岡禎丞が一番驚いていた。

視点を変えれば楽しめる


今回は『エガオノダイカ』の小ネタを紹介したが、戦争とは何かを考えさせられる今だからこそ目を逸らせないストーリーであり、紹介しきれなかった小ネタや裏設定も豊富なため一部で酷評されるような作品ではないと思う。

前回「迷作」と表現したように名作とは言えないし粗も目立つが、今回挙げた小ネタや裏設定を後から知ればなるほどと唸らされるので、見方を変えれば十分に楽しめる。

練られた裏設定を作品に活かせなかったのは残念だが、評価の低い作品でも『エガオノダイカ』のような輝く小ネタが隠された作品はたくさんあるので、新たな楽しみ方として少しでも興味を持っていただけたら幸いである。

関連記事:
名作になれなかった迷作 『エガオノダイカ』

 

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