「30,004,000人」
これは、東京ディズニーランド、東京ディズニーシーを運営するオリエンタルランドが公表している2016年度の両パーク合計の入園者数である。
初めて3,000万人を越えた2013年度以降、順調に3,000人台をキープしている。東京ディズニーランドの開園直後の目標入園者数が1,000万人だったことを考えると、実に飛躍的な伸び方を見せた。
その理由は語る必要もないが、2018年早々にあるニュースが飛び込んでくる。
「第3のテーマパーク建設か?」
新パークの必要性
撮影:gunny
そもそも私がディズニーの魔法に魅せられたのは、キャラクターでもパークでもなくオリエンタルランドのビジネススタイルであった。
ビジネスマン時代にその運営手法に興味を持ち、実際にパークを訪れて驚いたのは、そのホスピタリティだ。
ゲストとキャストの距離が近く、誰もが笑顔。今では当然のことでも当時の私には鮮烈な印象を残す。だが、最近のパークはその距離が離れつつあるように感じる。それもそうだ。仮に両パークが入園者数を年間1,000万人ずつと想定して造られていたとしたら、現状はどちらのパークも1.5倍の入園者が訪れていることになる。それはそのままキャストの負担となり、心から笑顔でゲストを迎えることは難しい。
実際に私も、開園当初は時期によって空いていたディズニーシーが年々混雑し、サービスの質も低下してきたことを感じていた。
東京ディズニースカイになるのか?
そこに「第3のテーマパーク」構想のニュースである。
確かに舞浜の埋立地はほぼオリエンタルランドが所有しており、自由になる土地も残ってはいる。今回はディズニーランドの駐車場を立体化し、隣接地を買収することで用地を確保するという。
今回、ニュースとなったのは、オリエンタルランド本社を挟むようにある両パークの南側、下の画像で赤く塗りつぶされたスペースである。
【※新パークの予定地】
面積そのものは既存のパークより狭いが、ここにゲストを呼び込めばかなりの混雑緩和になる。
2018年3月現在、オリエンタルランドは公式に「第3のパーク」という名言はしていないが、まず間違いないだろう。ランドに続いたシーは、世界で初めての海をコンセプトにしたパークだったため、今回も世界初の「空」をコンセプトになるのではとの報道がされているが、こちらも現段階では明言されていない。
オリエンタルランドの決意
【※東京ベイ舞浜ホテルより新パーク用地となる駐車場を望む。右手に東京ディズニーランド、前方に東京ディズニーシー(撮影:gunny)】
その他、現在分かっていることは、今年の5月をめどに詳細を詰めること、2019年度に着工、22年度の開業を目指していること、そして、投資額は約3,000億円という巨大なプロジェクトになるということだ。
東京ディズニーシーのときは、3,350億円を投資したが、東証一部上場により約1,400億円を調達している。しかも、過去に例がないテーマパーク事業を行う会社の上場申請のため、ハードルは高かった。しかも、東証二部を経ずに直接一部上場を目指したのだ。
例えば、パーク内にある香水の店が東京証券取引所には「不採算店舗」と見なされて、もっと売れる店を出すべきだと主張された。確かに数字上は採算が取れないが、それはパークの雰囲気醸成のためには大切な存在である。
このようにして、オリエンタルランドは次々と日本で前例のないビジネス展開をしてきたのだ。
工事は最後の工程
さて、22年度の開業と聞くと「かなり長いな」と思うだろうが、オリエンタルランドにとっては、実際の工事は「ほぼ最後の行程」である。
ディズニーシーのときは、1990年に本格的なビジネス交渉がはじまり、2001年に開園した。もっとも、パークのコンセプトを決める段階で一度契約を解消したり、双方のイメージが折り合わなかったことなので、かなりのロスを生んだために着工までに時間が掛かってしまったが、今回はもう少し短期間で話が進んだと思われる。
とはいえ、新パークの開園に向けて行うことはロイヤリティ率の設定、パークのコンセプト決めというふたつの大きなハードルがある。パークのコンセプトというのは「どのようなパークにするか」という漠然としたものではなく、エリアや店舗、そこで提供するサービスまで具体的に詰めていく。徐々にではあるが、コンセプトだけで空想のパークを完成させてしまうわけだ。
ディズニー社との駆け引き
そして、ロイヤリティ。
実はこのロイヤリティがクセ者で、ディズニー社はなかなか妥協しない。「夢と魔法の国」とはいえ、ビジネスである以上は日本の企業以上に強気なスタンスなのは仕方がないことだ。
しかも、日本のお土産文化に馴染みのないディズニー社は「お土産など採算が取れない」と、過去にグッズ販売のロイヤリティ率を低いまま契約したことがある。ところが、蓋を開けてみればパークでのグッズ販売は絶好調で、悔しい思いをしたというのだ。両社にとって「付き合い方」を学ぶ機会が多かったのが「新パーク(ディズニーシー)プロジェクトであり、そのおかげで今回の新パークプロジェクトでは、スムーズに話が進んだことだろう。もちろん、丁々発止やりあってのことだろうが。
こうした水面下での駆け引きこそ、新パーク建設へ向けた最大の山場であり、オリエンタルランドはこの交渉を上手くまとめたということがわかる。
最後に
オリエンタルランドほどの企業ならば、キャストの福利厚生はしっかりしている。しかし、対応できないほどのゲストが来園することで、キャストも疲弊し、サービスも手が行き届かなくなる。そこでキャストの一部が「ブラック企業だ」とでも発言すれば、今の時代、どうなるかは明白だろう。
早期に第3のパークをオープンさせ、混雑を緩和することは、キャストにとってもゲストにとっても、そして、オリエンタルランドにとっても「Win-Win-Win」になることは間違いない。
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