海外

なぜハワイでは「レイ ~花の首飾り」を渡すのか?

レイ

ハワイのオアフ島

のんびりとした時の流れに、大自然と都会の賑わいが溶け合った憧れのリゾート地『ハワイ』。

日本人観光客のリピート率94%という記録を持ち、挙式やハネムーンといった人生のターニングポイントを迎える場所としても有名である。日本語が堪能な日系人も多く暮らしているため、日本人にとって親しみと安心を与えてくれる環境でもある。

分厚い『パンケーキ』に、フルーツたっぷりの『アサイーボウル』、味のバリエーション豊富な『マラサダドーナツ』といった日本で一躍ブームを巻き起こしたスイーツも、ハワイでの爆発的な人気が話題を呼び、日本へ伝わった。

その他にも、美容と健康の効果が期待されるフラ(ダンス)、運気を上げてくれるパワーストーンなど、日本の身近なところにハワイ文化は存在しているのだ。

ハワイの大自然が反映された愛情と祈りの象徴「レイ」

日本では、『ホノルル空港』と呼ぶことが定着しているハワイの玄関口『ダニエル・K・イノウエ空港』に到着すると、『アロハ〜!!』の挨拶と共に、ハワイ語で「レイ」と呼ばれる花の首飾りを渡されることがある。

この「レイ」を相手の首にかける姿が、両腕を回して相手をハグする姿と重なって見えることから、歓迎や祝福、感謝の気持ちを相手に表現したい場面で「レイ」を渡す習慣が始まった。

レイ

パレードでレイを身に着ける女性たち

かつては、魔除けや権力を表すために「レイ」を日常的に身に付けていたが、ハワイ文化を象徴する存在として「レイ」が世界中に知られるようになってからは、ハワイの伝統文化であるフラを踊る際にも使用されるようになった。

楽しく優雅に踊るフラは本来、ハワイの宗教儀式の一部であったため、身に着けた「レイ」自身にも自然の神々が宿り、自然と人間を結び付ける『絆』が生まれるという考えがハワイの人々の間で確立されていった。

「レイ」を贈る習慣にみる配慮と感謝の気持ち

結婚式や、卒業式など祝いの場面での活躍が目立つ現代の「レイ」は、贈る相手への愛情と配慮が重視されている。

相手の好きな花を選ぶ時間、花や草木の組み合わせを考える気持ちなど、相手に込めた想いを「レイ」に託しながら創ることが、ハワイの人々の暮らしに受け継がれた新たな伝統文化である。

レイ

レイを創る様子

一般的に、輪の形をしている「レイ」には、たったひとつだけマイナス要素が含まれている。

それは「母親と胎児の命を結ぶへその緒を絡めてしまう」という意味を持ち合わせている点だ。そのため、出産間近の相手に輪状の「レイ」を贈ることはタブーとされ、代わりにマフラーのような輪状に結ばれていない長い「オープンレイ」を贈ることが決まりとなっている。贈る側の「レイ」に関する知識の理解にも十分な注意が必要である。

「レイ」を受け取った側は、翌日に木に提げたり、海に流したりと、感謝の気持ちをハワイの大地に返すことが基本とされている。愛情表現のひとつである「レイ」の受け取りを拒んだり、すぐに首から外してしまう行動は、受け取る側の礼儀に反することに繋がる。

「レイ」に込められた相手の気持ちを快くを受け取ることが、ハワイの人々が最も大切にしている習慣である。

自然の恵みが織りなす「レイ」の魅力

代表的な「レイ」の素材として、思い浮かぶのはハワイの州花でもある『ハイビスカス』と、東南アジアにも生息し、インテリアのデザインに多く起用される『プルメリア』である。

花の色によっても花言葉が異なる『ハイビスカス』と『プルメリア』は、贈る相手に向けた気持ちや願いに合わせて、デザインの組み合わせや色合いを決めることに適している素材だ。

また、ストレス緩和を促す香りを放つ『プルメリア』は、ヘアアクセサリーとしての需要も高い。

レイ

プルメリアの花

色鮮やかな「レイ」に続き、シンプルで男性も身に付けやすい『ククイナッツ』の「レイ」も人気を集めている。

『ククイナッツ』とは、ハワイ州で採れる木の実のことで、皮膚炎などの肌の治療薬や魔除けのお守りとしても使用されている。冷蔵庫で保存することで、花の美しさを長く楽しむことができる生花で創られた「レイ」とは異なり、長い間、繰り返し使うことができるのも好まれる理由だ。

レイ

ククイナッツのレイを身に着ける女性

人の生涯を彩る「レイ」が伝えていること

人間の誕生から最期までを寄り添い、見守り続けてくれる存在であるハワイ生まれの「レイ」。人生の様々な転機を彩る「レイ」は、花や草木に込めた互いの気持ちを繋ぐ愛の形そのものだと考えられている。

イベントで身に着けるときも、誰かを歓迎し祝福するときも、別れの証として故人に供えるその瞬間も「レイ」が伝えているのは、『愛情』ただひとつだという。これは、ハワイ語の挨拶『アロハ(ALOHA)』にも込められた『人と人との出会いと別れにも愛が存在する』という深い意味に通ずるものがあり、常日頃から相手に向けた愛情を大切にしているハワイの人々の心情をも表現している。

ハワイの生花店では、世界にひとつだけの自分で考えたオリジナル「レイ」を創ることができる。

生花のため、航空規定上、日本への持ち込みは禁止されているが、ハワイで過ごす限られた時間の中だけでも「レイ」を身に着け、愛が溢れるハワイ文化に触れながら過ごしてみてはいかがだろうか。

他のハワイの記事一覧

 

アバター

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 永世中立国の意外な側面・第二次世界大戦とスイス
  2. 【50年連続で不自由な国ランクイン】 中国の身分証における監視社…
  3. 【犠牲者436人超】史上最恐の人喰いトラ vs 伝説のハンター「…
  4. 【若者の自殺死亡率上昇】 台湾で始まる「心の休暇」とは
  5. ロシアで遺体を冷凍保存する人たち 「400万円で誰でも可能、日…
  6. 台湾の十分(シーフェン)について調べてみた 「願いと希望が詰まっ…
  7. 【女性のバストに課せられた税金】 ムラカラムとは ~胸が大きい女…
  8. 『プロ野球初の外国人選手』 スタルヒンの野球人生 ~300勝投手…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

天皇陛下のお名前に多い「仁」の字はいつ始まった?歴代天皇の諱を調べてみた

今上天皇の徳仁(なるひと)陛下をはじめ、皇族がたの諱(いみな。本名)を見ると、「仁」の文字が多いこと…

なぜ日本では鳥山明が生まれ、アメリカではスティーブ・ジョブズが生まれるのか

漫画家の鳥山明先生が亡くなりました。68歳という早すぎる旅立ちです。個人的な話になってしまい…

徳川綱吉【徳川5代目将軍】学問の奨励と生類憐みの令

徳川綱吉は1646年に生まれた。父は江戸幕府3代目将軍徳川家光で、4代目徳川家綱の弟にあたる…

なぜチリがワインの名産国になったのか?

近年色々な売り場で見かけることが多くなったチリワイン。安価で美味しく人気のワインとなって…

誕生日石&花【12月11日~20日】

他の日はこちらから 誕生日石&花【365日】【12月11日】情熱的で外交的。冒険心と直感力の…

アーカイブ

PAGE TOP