洋画のホラー作品として有名な『13日の金曜日』の主人公・ジェイソンと言えば、ホッケーマスクにチェーンソーがトレードマーク。
日本ではあまりなじみのないチェーンソーですが、アメリカでは開拓時代から庶民の暮らしに広く根付いており、それがジェイソンの凶行にリアリティを与えると共に、恐怖を引き立てています。
さて、チェーンソーは便利ですが危険な道具でもあるため、日本で取り扱うためには所定の特別教育を受講しなくてはなりません。
そこで今回は、筆者がチェーンソーの取り扱い資格をゲットしてきたエピソードを紹介したいと思います。
チェーンソーの使用は「ご安全に!」
お世話になったのは、株式会社IHI技術教習所神奈川センター。ここではクレーンやフォークリフト、ガス溶接など、さまざまな技術を学ぶことができます。
※以下、教習所によって条件が異なることも考えられるため、あくまでご参考程度に願います。
筆者がチェーンソーの特別教育を受けたのは、別にジェイソンごっこがしたかったのではなく(危険なのでやめましょう)、災害時の救助活動(倒木の除去など)に必要だったからです。
受講コースは3日間の通学、学科9時間と実技9時間の合計18時間、料金は24,000円で資格・経験は不問とのこと(※ただし、日本語が通じない方は受講を断られることがあるので注意)。
全体的な流れとしては、初日はまるごと学科、2日目は午前中学科で午後は学科試験&実技、3日目は実技で修了となります。
学科では、チェーンソーの主用途であろう林業の話(作業の安全管理や伐木の方法)と、本体の構造やメンテナンス、健康管理(振動障害など)や法令(保護具の着用義務など)について学びました。
「林業なんて、ただ樹をビャーッと伐るだけだろ?」と思われるかも知れませんが、伐った樹木は当然倒れるわけで、その方向によっては自分や仲間を下敷きにしてしまうリスクがあります。
だから、やみくもに刃を入れるのではなく、樹木が倒れる方向をきちんと管理して、自分や仲間の安全を守る配慮とテクニックが必要なのです。
また、振動障害とはあまり聞きなれない言葉ですが、エンジン駆動するチェーンソーを両手で保持するため、長時間作業が続くと手指のしびれや冷えなどが、悪化すると末梢神経を傷つけ、運動障害に発展してしまいます。
なので、チェーンソーでの作業はなるべく短時間に留めると共に、適度な運動や休息など、予防に努めるべきことが強調されました。どんな仕事も健康あっての物種です。
さて、2日目の学科試験は正誤2択のマークシート式(鉛筆かシャープペンシル)で、正答率80%で合格となります。
普通に講義を聞いていればもちろんのこと、仮に半分くらい聞いていなくても「これは常識的に危険だろ」という選択肢さえ選ばなければ合格できるレベルでした。
そしてみんなが無事に合格すれば、午後からは実技となりますが、2日目はチェーンソーの実物を示しての説明が半分、もう半分は「かかり木」の処理とチェーンソー(エンジンはかけず、持つだけ)の取回しとなります。
「かかり木」とは伐り倒した樹木が別の(まだ立っている状態の)樹木と枝がからむなどして倒れきらなかった状態で、このままだといつ倒れるかわからない危険な状態です。
そういう時にどうすればいいのか、専用の道具や手法を用いて、学科で聞いた通りに引き倒します。実際には幹が太く、枝も絡み合って簡単には倒れないでしょうが、実習を通して要領をつかむことはできました。
そして3日目、いよいよエンジンを回して丸太を伐採。輪切りに斜め切り、舞い散るおがくずと材木のよい香りが辺りに漂います。
これまでチェーンソーは何度か取り扱っていますが、ここは基本の大切さを学ぶための教習所ですから、なまじベテラン面をせず、初心で安全第一に努めることが肝要です。
最後にチェーンソーのメンテナンスで終了。丁寧な手入れは、丁寧な仕事の集大成。次の作業に備えて、なるべく丹念に整備しました。
実技は全体的に待ち時間が長い(受講者数にもよりますが、チェーンソーの台数が少ない)ため、冬は防寒対策、夏は熱中症対策が不可欠です。
終わりに
修了証をもらったらすぐに解散、あっけない感じもしますが、これで晴れてあなたもジェイソン……と、後で調べたところ、ジェイソンがチェーンソーを使って攻撃したことは一度もないそうです。
※「ジェイソン≒チェーンソー」となったのは類似の他作品とイメージが混同したためだそうで、むしろマチェット(鉈の一種)や斧を使うことが多く、被害者が反撃手段として用いた以外、チェーンソーは登場していないとのこと。
怖いのは好きではないので、本作を観たことはありません(今後も観たくありません)が、ともあれチェーンソーは安全第一で本来の用途に活用させていただきます。
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