古代文明

ピラミッドの最新調査について調べてみた【ギザの大ピラミッド】

長年に渡り謎に包まれ、高度な文明発展の裏には「宇宙人が関与していた」などと噂されてきた『古代エジプト文明』。クフ王のピラミッド、王家の谷、王族のミイラなど、現在に残るエジプト文明への「手掛かり」は多い。

その一方で遺跡保護の観点からあまり調査が進められないというジレンマも抱えていた。クフ王のピラミッドに新たな空間が発見されても開けられない、王族のミイラが発見されても解剖ができないなどの壁がある。

しかし、最新の技術により、その「」の先を見ることができる時代がやってきた。

そこで、今回は最新技術により解明されつつある古代エジプト文明の象徴、ピラミッドの調査について調べてみた。

公共事業としてのピラミッド建設

ピラミッド
※ギザの大ピラミッド

エジプト文明最大のミステリーといえばピラミッドだろう。ギザの大ピラミッドは、古代遺跡としては世界的に比類なき規模を誇り、約147mという高さは、古代の建築物のうちで現存するものとしては最大の高さである。底辺も一片が約230mで、勾配は約52度、平均2.5tの石が約280万個も使われている。

建築年代については諸説あるが、紀元前2560年頃にクフ王の王墓として建設されたといわれている。

どのように建設したのか、どのような目的で作ったのかなど、こちらも諸説あるが決定的な証拠は見つかっていない。しかも、調べれば調べるほど新たな謎が増える状況が続いていた。

有名な話では、ピラミッド建設のため数万人という奴隷が長年働かされたというものがある。古代ギリシアの歴史家ヘロトドスも「クフ王のピラミッド建設のため、10万人の奴隷が20年間働かされた」と記述していたことから、それが通説とされてきた。

しかし、近年の調査によりピラミッドの建設工事はナイル川の氾濫期に農民を飢えさせないための公共事業ではないかという見方が強くなってきている。2010年にはギザのピラミッドの近くから建築に従事した労働者のためと思われる墓が発見された。

エジプト考古最高評議会は「奴隷ならば王の墓の近くにつくれなかったはずだ」として、現在では奴隷説を否定している。また、その墓の壁からは「クフ王の友」という文字も見つかっており、いよいよ奴隷説を否定する要素が揃ったことになった。

ピラミッド を透視する調査


※クフ王像(エジプト考古学博物館蔵)

現在、クフ王のピラミッドでは、従来の「手さぐり」な調査方法とは異なる「ピラミッド・スキャン・プロジェクト」が進められている。エジプトカイロ大学、日本、フランス、カナダの4ヶ国の研究チームが参加しており、合同でピラミッドの内部を「透視」しようというのだ。

最新のテクノロジーにより、ピラミッドを傷つけることなく内部構造を調査する。その方法とは、赤外線サーモグラフィー、ミューオンX線撮影法、3次元再構築を組み合わせて行われた。

2015年10月からの調査では、すでにピラミッド東側の何もないと思われていた壁から「異常」が発見されている。その異常とは、一部の壁だけが周囲との温度が6度も異なるというものだった。これは、内部にいまだ発見されていない空間が存在するかもしれない可能性を示している。

世界的な発見


※ギザの三大ピラミッド

この発見は同年11月には発表され、考古学界だけではなく、世界中で話題となった。
長年にわたり可能性を指摘されながらも、調査のすることのできなかった「秘密の部屋」の発見につながるかもしれないからだ。

チームは、結論は早いと前置きしつつも「内部には空洞があるかも知れないし、大きな亀裂や通路の可能性もある」との見解を示した。問題の異常はピラミッド東側、しかも地上からすぐのところで発見された。クフ王のピラミッドは発見されているだけでも、複雑な通路群を持っている。さらに建設途中にも何度か設計が変更された可能性もあり、この異常が即「秘密の部屋」の謎につながらなくても、当時の建設技術を知る手掛かりになるかも知れない。

最先端の調査技術


※屈折ピラミッド

ギザの北に位置するダハシュールには、ギザのピラミッドより以前の時代に建設された屈折ピラミッドがある。地面から立ち上がる下部は傾斜がきつく、上部では傾斜がゆるくなっている。クフ王のピラミッドのスキャン調査に先駆けて、このピラミッドでミューオンX線撮影の実験が行われた。

宇宙から降り注ぐ素粒子「ミューオン」の研究は、世界でも日本がリードしている。

ピラミッドの石を通過するミューオンの特性を利用し、世界で初めてミュー粒子だけに反応する「特殊なフィルム」を使用したこの実験では、すでに発見されている空間の下の部屋にフィルムを敷きつめた。ミュー粒子は石など密度の高いところでは少量しか通り抜けられない。反対に空間があるところを通った場合は粒子の量は若干多くなり、結果、より多くの粒子がフィルムに到達する。その後、フィルムに残された粒子の痕跡を解析することで、方向と数から空間の存在を証明できるわけだが、屈折ピラミッドの実験では見事に成功している。

この実験には名古屋大学、高エネルギー加速器研究機構、そして、NHKが参加しており、このときの実験の模様は「クローズアップ現代・ピラミッド透視 謎の空間を発見!」としてNHKで放送された。

最後に

現在、ピラミッドの調査は人の手によるものと、最新テクノロジーを使ったものの2方向から進められている。先述の労働者の墓からは、労働者の食料が送られていた証拠も見つかっており、免税などの面でも待遇が良好だったことが分かっている。今後はさらに調査のスピードが上がるのは間違いない。

ピラミッドについての新たな発見は、いつ発表されてもおかしくないのだ。

関連記事:古代エジプト
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