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西洋魔術 について調べてみた【オガム・ルーン文字】

呪文を唱えた直後に放たれる火球。稲妻が襲い掛かり、大地を凍らせる。

西洋魔法は、このようにファンタジーRPGの影響を強く受けたイメージが強い。日本における密教、陰陽術なども同様だが、その根本は「技術としての体系」であり、儀式に近いものがある。

敵を前にして物理的にダメージを与えるようなものではない。

オガム文字

西洋魔術
※ケルト人の分布 (青)紀元前1500年から紀元前1000年 (赤) 紀元前400年

ブリテン諸島(イギリス)の民族として有名なケルト人系民族は、騎馬文化や鉄器と共に中央アジアからヨーロッパに渡来した。古代ローマ人からはガリア人とも呼ばれていたが、ガリア人は、ブリテン島南部などガリア地域に居住してガリア語を話していた民族ともされる。

紀元前400年頃にはフランスを中心に中部ヨーロッパに広く分布していた。

そんなケルト人のシャーマンをドルイドという。シャーマンは霊魂や精霊など超自然的な存在と交流する職業的な魔術師のことである。ケルトの人々は神官であるドルイドのもと、樹木崇拝をしていた。
古代のヨーロッパは大森林が存在しており、人間が開拓した場所も点在したが、それ以外は深い原生林。ケルト人は森とともに生きていたのである。ドルイドという言葉も「樫の木の賢者」という意味である。しかし、「ドルイドの教えは文字にしてはいけない」という掟があり、ケルトの人々は独自の文字を持っていなかった。

バルカン半島のケルトの民が日常の記録用にギリシア語を利用するなど、ケルト人は近隣の民族のアルファベットを使っていた。ところが、4世紀頃、アイルランドで「オガム文字」が開発される。ゲルマン民族のルーン文字と同じように、木や石に刻みやすい形になっており、魔術的な用法も出来る文字であった。

伝説の英雄、クー・フーリンは「片手と片足と片目だけで樫の枝の輪を作れぬ者はこの先通るべからず」とオガム文字の碑文を残し、追っ手を足止めした。また、ゲッシュ(禁忌(タブー)を意味するアイルランド語)という利用法もある。オガム文字を使って誓いを立てると加護を得られるのだ。例えば、前出のクー・フーリンのようは「犬を食べない」というゲッシュを立てた。やり方はやはり武器や碑文などにオガム文字を刻むことだ。

オガム文字は一文字、一文字すべてに意味があり、魔力を秘めていたが、やがてラテン語が普及すると使われなくなっていった。

ルーン文字

西洋魔術
※ルーン文字

ゲルマン人とは、古代ローマ人がゲルマニアと呼んだ地方に住んでいた民族の総称である。ゲルマニアはライン川より東、ドナウ川より北、現在のドイツあたりになる。ナチスドイツはゲルマン民族という概念を作ったが、古代においては様々な民族の総称であり、ゲルマン人たちに民族意識があるわけではなかった。

そんなゲルマン人たちが使っていたのがルーン文字である。石や木に刃物で刻めるような直線的なデザインの文字だ。縦と斜めの線だけで構成されているのは、水平の横線が木目と見間違えるためだという。

ルーン文字は、北欧を中心とした地域で使用されたが、東は黒海、西はグリーンランドまで使われていた形跡がある。また利用されていた時代も長く、3世紀から13世紀まで使われていた。

簡略化されたルーン文字もある。第二のルーン、枝のルーンとも呼ばれるものだ。枝のルーンはヴァイキングが使用していたとされ、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーなどで多数発見されている。北欧神話によると、ルーン文字はオーディンが自分を槍で突き、首を吊って冥界へ赴き、手に入れたとされている。ルーンは神々の力を備えた文字なのだ。

ルーンにも一文字ごとに「財産」「豊作」といった異なる意味がある。魔力を得るには目的に合致したルーンを物に刻むのだが、文字を色で染めることでより効果が強くなるとされ、自分の血を用いて染めることもあった。北欧神話の軍神、テュールのルーンは「↑」の形をしており、これを武器に刻むことで神の加護が得られるといわれる。

西洋魔術
※ルーン文字で表記した「SS」、別名“黒地に銀の重ね稲妻”

実はルーンが魔術に利用されはじめたのは、ラテン語が普及した後らしい。

人々は古代のルーン文字を神秘的だと感じ、魔術に用いていたのだ。その例として、ナチス親衛隊の「SS」という黒字の稲妻マークは、太陽を意味するルーンを結合させたものであり、古代の神秘的な力を現代に復活させようと考えるものは、いつの時代にもいる。

大魔術師マーリン

西洋魔術
※マーリン

アーサー王伝説に登場するマーリン・アンブロジウスは、物語においてアーサー王の育ての親であり、アーサーの父親と母親を引き合わせたり、エクスカリバーを石に立てたのも彼だとされている。アーサーを陰ながら支える脇役と思いきや、帽子やフードを被り、ローブを身にまとう老いた魔術師の姿は、マーリンが作り出したものだ。

さらに彼のモデルとされる預言者ミルディン・ウィルトら、複数の魔法使いは、古代において有名な魔術師ばかりだったという。

現在のヨーロッパでは、マーリンもまたアーサー王に負けない人気を誇っている。

最後に

他にも民族により、様々な魔法が残っている。
今回は、民間信仰に近く、知名度の高い魔法を調べてみたが、文字の意味が気になる人は調べてみてもらいたい。オガムもルーンもすぐに見付かるはずだ。

しかし、用いるならあくまで自己責任が原則となるが・・・。

関連記事:マーリン
アーサー王伝説について調べてみた

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