天賦の才を受け継ぐ愛娘
ライザ・ミネリ(Liza May Minnelli)は、米国のミュージカル映画「オズの魔法使い」(1939)、「スタア誕生」(1954)など、第一線で活躍し続けてきた、ジュディ・ガーランドを母に持つアメリカの女優で、歌手です。
カリフォルニア州ロサンゼルス出身で、父親はイタリア系アメリカ人の映画監督・ヴィンセント・ミネリです。
ライザは、映画「Good Old Summertime」で、2歳でスクリーンデビューしました。
以降、映画「キャバレー」(1972)では主演を務めるなど多くの映画に出演し、米倉涼子さんがブロードウェイで演じたことでも知られる大人気ミュージカル「シカゴ」(1975)の出演など、母の遺伝子を感じさせる存在感と名演は絶賛されました。
「キャバレー」での、サリー・ボウルズ役では、アカデミー主演女優賞とゴールデングローブ賞をダブル受賞し、「歌唱力と表現力は母譲りだ」と当時の観客たちを唸らせています。
ジュディ・ガーランドとレインボーフラッグ
ライザの母、ジュディ・ガーランドは、弱者の立場に立つ人物でした。
父である、映画監督のヴィンセント・ミネリは、ゲイでした。
ジェンダーレスについて無理解な時代でしたが、ジュディの夫を思いやる行動は、ゲイの人達から尊敬の念を抱かれていました。
ゲイ雑誌でもそのことは広く取り上げられ、ゲイを公表することに躊躇いがちな男性の多くは、自分のことを「フレンズ・オブ・ジュディ」、「フレンズ・オブ・ドロシー」と呼んでいました。
ジュディが演じた「オズの魔法使い」のヒロイン・ドロシーの友だちという隠語は、ゲイであることを公表しにくい当事者にとって、世間の偏見から守ってくれるオブラートに包まれた自己表現だったのです。
1969年のジュディの葬儀には、彼女を弔う多くのゲイ男性が集いました。
ストーンウォールの反乱
ジュディの葬儀の後日の6月28日、ニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン (Stonewall Inn)」が、警察による踏み込み捜査を受けたことで、居合わせたLGBTQ当事者らが警官に反発し、「ストーンウォールの反乱」という暴動が起こりました。
ジュディの葬儀は、6月27日にストーンウォール・インの近くの教会で行われており、店には葬儀に参列した多くのLGBTQ当事者がいたのです。
現場に駆け付けた警察官たちは、そんな彼らに侮辱的な言葉を投げ付け、彼らの自由と個性を否定するばかりでした。
しかし、「ドロシーの友だち」であるゲイの男性たちは、自分達の名誉のために戦い、運動を続けました。
彼らがここで一致団結したのは、ジュディの死の影響が大きかったとされています。
どんなに警官達に阻止されようと「ジュディは最期までセクシャルマイノリティーの味方だった」と強く主張し続けながら歩きました。
「オズの魔法使い」の主題歌「オーバーザレインボー」は、現在でも多くのアーティストにカバーされ続けています。
Z世代の若者にはあまり聞き馴染みはないかもしれませんが、「虹の彼方の空は青く、夢は叶う」という強いメッセージが込められているのです。
レインボーフラッグの由来
LGBTQのシンボルともいえる「レインボーフラッグ」は、この名曲が由来です。
レインボーフラッグは多様性や個性を表しており、赤は「命」、オレンジは「癒し」、黄色は「太陽」、緑は「自然」、ターコイズは「芸術」、藍は「平穏 / 調和」、紫は「精神」の意味が込められています。
レインボーフラッグが掲げられている店は、「ゲイフレンドリーなお店」と認定されています。
ジュディの意志を受け継ぐように、娘のライザも発達障害がある子供達への寄付金支援を行ったり、エイズの研究にも長年協力しています。
母の勇気を受け継ぐライザ
ジュディには3人の子供がいて、ライザは長女です。
子供達は皆、ジュディのことを「愛情深く、とても尊敬できる」と口を揃えています。
特にライザは母のことをとても誇りに思い、以下のように語っています。
「母は本当に素晴らしい人で、ユーモアもあって私達をいつも楽しませてくれた」
そんな偉大な母を持つライザですが、長年アルコール依存症や薬物中毒に苦しみ、さらにウィルス性脳炎で闘病していました。
その後、治療を重ねてなんとか復帰しましたが、2010年に本人役で出演した、「セックス・アンド・ザ.・シティ2」を境に、表舞台から退いています。
ライザ・ミネリは現在、77歳です。
現在は健康と上手に付き合いながら、様々な慈善活動を継続中です。
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