日本史

伊勢神宮は何の神様? 飛鳥時代から続く「式年遷宮」とは 〜2033年にも遷宮予定

伊勢神宮は何の神様?

画像:内宮宇治橋鳥居 wiki c MaedaAkihiko

日本の神社界で頂点に位置する伊勢神宮

昔から伊勢神宮への参拝は特別なものであり、多くの人が伊勢を目指して旅をしていた。
江戸時代には不思議なことに約60年に一度の周期で「お伊勢参り(お蔭参り)」が流行するという現象も起こっていた。

今回は、伊勢神宮にはどんな神様が祀られているのか、そして「式年遷宮(しきねんせんぐう)」についてもわかりやすく解説する。

伊勢神宮には何の神様が祀られている?

伊勢神宮は何の神様?

画像 伊勢神宮内宮正殿 wiki c Ocdp

伊勢神宮には天照大御神(アマテラスオオミカミ)が祀られていることは広く知られているだろう。

これは正解であるが、伊勢神宮は一柱の神様が祀られているわけではない。
普通の神社でも、主祭神(しゅさいじん)と合わせて複数の神様を祀っている場合がある。

伊勢神宮は、天照大御神を祀る神社というだけではなく複数の神社の集合体であり、125社の神社が鎮座する神社群の総称なのである。

伊勢神宮には内宮(ないくう)と呼ばれる皇大神宮(こうたいじんぐう)と、外宮(げくう)と呼ばれる豊受大神宮(とようけだいじんぐう)の二つの正宮(しょうぐう)がある。

内・外両宮には、正宮に次いで尊いとされる別宮が計14社、正宮や別宮の神とゆかりの深い神を祀る摂社が43社、さらにそれらの神々とゆかりのある神を祀る末社24社と所管社42社が鎮座している。

この神社群の中心に祀られているのが、内宮の正宮に祀られている天照大御神なのである。

天照大御神は、何の神様なのか?

伊勢神宮は何の神様?

画像:天照大御神 public domain

伊勢神宮に祀られている天照大御神とは、伊弉諾(イザナギ)が伊弉冉(イザナミ)を追って出向いた黄泉の国から帰ってきた際に、穢れの禊(みそぎ)を行ったときに生まれた「三貴子」と呼ばれる最も尊い神の1柱である。

天照大御神は「天を照らす」という通り、太陽を神格化した神なのだ。

天照大御神は孫神であるニニギを地上に送り出すと、ニニギは地上で生活をはじめる。
海幸彦・山幸彦の伝説である山幸彦はニニギの子であり、山幸彦の孫が初代天皇の神武天皇となる。

このことから天照大御神は天皇家の祖先神であり、日本人の氏神といえるのである。

「式年遷宮」とは

画像:第59回内宮式年遷宮(上が新殿舎、下が旧殿舎)public domain

伊勢神宮は、天皇家の祖先神を祀る聖域である。
この聖域には「常若(とこわか)」と呼ばれる思想があり、常に若々しい様子を意味している。

そして「式年遷宮」とは、伊勢神宮の内宮・外宮で定期的に行われる遷宮のことである。

原則としては20年ごとに行われることとなっており、社が20年おきに新しくされるのである。
壊してから新しく立て直すのではなく、東西に同じ広さの敷地を持ち、交互に新しい社を造り直し、ご神体が移される。

つまり伊勢神宮自体の歴史は古いが、神社の神殿は古くても20年ということになるのだ。

式年遷宮の歴史は飛鳥時代から

伊勢神宮は何の神様?

画像:天武天皇 publicdomain

伊勢神宮の「式年遷宮」の歴史は非常に古く、なんと飛鳥時代までさかのぼる。

当初、伊勢神宮における式年遷宮を立案したのは、第40代天武天皇とされている。

天武天皇の発意から、第1回の式年遷宮が行われたのは690年、第41代持統天皇の時代である。
つまり、1300年前の飛鳥時代から現代に至るまで、遷宮は何度も繰り返されてきたのだ。

戦国時代には一時中断されたこともあったが、式年遷宮は20年に1度行われ続け、直近では2013年10月に62回目の遷宮が行われた。

次回は2033年に、第63回の式年遷宮が行われる予定となっている。

この2033年の式年遷宮については、既に動きが始まっている。

2024年4月8日に伊勢神宮の久邇朝尊(くにあさたか)大宮司は、「御聴許」と呼ばれる許可を今上天皇より賜った。
ご神体を新しい正殿へ移す最も重要な儀式である「遷御の儀」を行うことを目指して、正式な準備の第一歩を踏み出すこととなったのだ。

一生に一度は伊勢神宮を参拝してみよう

画像:内宮板垣南御門 wiki c MaedaAkihiko

天照大御神は皇室の祖先神であるとともに、我々日本の人々すべてを守護する神でもある。

神宮には数多くの神が祀られており、日本国中すべての神社の頂点となる聖域であることから、日本人なら一度は参拝したいパワースポットである。

例え20年に一度建て替えられた新しい建物だったとしても、建築様式は1300年間引き継がれてきた飛鳥時代から今に引き継がれたものである。
他の神社や最新の建物とは違う建築様式を、実際に見てもらいたい。

神宮領域に足を踏み入れたときに感じられる神聖な雰囲気を、ぜひ体感していただければと思う。

参考文献
・日本の神社と神様 株式会社宝島社
・ビジュアル百科写真と図解でわかる!天皇〈125代〉の歴史 西東社

 

アバター

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 『日本書紀』 が示す日本の国家形成における真実とは?
  2. 大化の改新は646年? 「蘇我入鹿を排除せよ」
  3. 桃太郎伝説はどこから始まったのか 「実際の人物がモデル?」
  4. 明智光秀の有能さと戦歴について調べてみた
  5. 日本刀の作り方 使い方について調べてみた
  6. 戦国時代の女性の生活について調べてみた
  7. 暗殺された7人の総理大臣 【安倍元総理は戦後初】
  8. 関ケ原の戦い以降の長宗我部氏と土佐について

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

戸沢盛安【若すぎる死が惜しまれた北の猛将】

夜叉九郎の異名戸沢盛安(とざわもりやす)は、安土桃山期に出羽の角館(秋田県仙北市の地名)…

小四郎の名を継ぐ者がここに。義時の隠し子?北条時経とは何者か【鎌倉殿の13人 外伝】

北条義時(ほうじょう よしとき)の息子と言えば、「俺たちの泰時」こと北条泰時(やすとき)はじめ6人が…

築山殿事件で瀬名と命運を共にする少女“たね”とは何者?その実像に迫る【どうする家康】

瀬名と命運を共にする少女たね[豊嶋花 とよしま はな]名門関口家の侍女として、瀬名の…

【初詣の起源】いつから始まったのか? 「大正時代の私鉄の企業戦略だった」

新年の幕開けとともに、多くの日本人が神社仏閣へ足を運び「新年も良い年になるように」と願掛けを…

袁術が建国した2年間だけの伝説の王朝「仲」

2年間だけ存在した伝説の王朝長い中国の歴史の中で、自称皇帝を名乗る人物によって2年の間だ…

アーカイブ

PAGE TOP