約1000年も前に、紫式部が生み出した長編小説『源氏物語』。
主人公・光源氏を中心とした男女の恋模様や栄枯盛衰、果ては生きるということはどういうことなのか…いつの世も尽きぬ、生きていくことの悩みや恋の切なさが、現代でも多くのファンを生み出す理由となっている名作古典である。
とりわけ、『源氏物語』の最たる魅力は、物語の登場人物であろう。
光源氏をとりまくさまざまな女性が登場するが、この多くの女性キャラクターの中で誰が人気なのか?
源氏物語好きの筆者が独断と偏見で選んでみた。
目次
第5位 美人じゃないけど癒し系【花散里】
人気ランキング5位は、花散里(はなちるさと)。
初登場は『花散里』帖。主人公・光源氏とは若い頃からの関係があったと思われるが、容姿はそれほど美しくない、と記されている。
しかしながら温和で慎ましい性格で、しばしば他の女性との恋愛に疲れ果てた光源氏をホッとされる、“癒し系”キャラとして、長きにわたり重宝される存在である。
初めは恋人の1人に過ぎなかったが、やがて妻として迎えられ、「夏の御方」と呼ばれた。
尚、後年には光源氏の息子・夕霧や、娘・玉鬘の教育を担うなど、光源氏の妻として、おだやかに采配をふるい、なくてはならない存在になった。
第4位 自由奔放なファムファタル【朧月夜】
4位にランクインしたのは、作中でもきっての自由奔放な美女、朧月夜(おぼろづきよ)である。
彼女は身分の高い女性で、東宮(天皇の息子)の女御として入内する予定であったが、ひょんなことから光源氏と出会い、男女の関係を持ってしまう。
入内後、東宮は朱雀帝として天皇になり、朧月夜は数ある女性の中でも特に寵愛を受けていたが、一方で光源氏とも関係を持ち続けた。
光源氏は朧月夜との関係が世に広まってしまったことで、明石(現在の兵庫県明石市)へと島流しになってしまう。
それでもなお、朧月夜に対する想いが覚めない光源氏は京に戻り、朱雀帝が出家した後も、朧月夜と関係を持ち続けたという。
晩年は出家した朧月夜であるが、それまで出世街道まっしぐらであった光源氏の将来をも狂わせた、まさにファムファタル(魔性の女)である。
第3位 不器用だけど…そこが良い【葵の上】
葵の上(あおいのうえ)は、光源氏が12歳の時に婚姻関係を結んだ、最初の妻である。
当時、12歳の光源氏よりも4歳年長の16歳であった葵上は、本来ならばもっと身分の高い男性を結婚するはずの、良家の姫君として育てられてきた。
そのため、プライドがとても高く、自分が年下の男性と結婚したということが許せなかったのか、光源氏に心を許そうとしなかった。
光源氏は光源氏で、継母である藤壺への秘めた想いに悩んでおり、この夫婦は長い間すれ違いの生活を続けることになる。
が、やがて2人の間に子どもが出来、必死の出産を終えると、葵上は初めて光源氏に対し、素直な想いを口にするのである。
育ちの良さのため、プライドが邪魔をして、なかなか自分の本当の気持ちを言えなかった葵上と、妻を理解し、いとおしく想う光源氏の気持ちが通い合った、美しいシーンである。
しかし、幸せな時間もつかの間、葵上は出産直後、生霊に憑かれて命を落としてしまうのである。
第2位 女性の共感率No.1?【六条御息所】
すべての女性の中にはこの人がいるのではないか?と思うほど、女性の高い共感を集めたのが、六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)である。
彼女は光源氏の年上の愛人で、美しく気品があり、また教養にも溢れていたことから、年上の魅力に夢中になった光源氏も、途中から彼女のことを敬遠し始める。
思うに、女性として人間として、六条御息所があまりにも完璧であったため、まだ若い光源氏には肩の凝る相手であったのだろう。
六条御息所は、年下の恋人である光源氏を独占したい、という想いにかられつつも、貴婦人であるという自身のプライドから、素直な態度をとることが出来ず、本心を押し殺すようになる。
やがてその苦悩は生霊となり、光源氏と夜を共にした女たちに容赦なくふりかかるのである。
この恋する女の苦悩は、多くの女性の共感を呼び、六条御息所のファンは多い。
六条御息所は、嫉妬に狂った自分を恥じ、出家をするが、その死後も光源氏への想いを強く残し、たびたび恋人たちにとりついては、光源氏に恨み言を言いにきた。
第1位 パーフェクトなヒロイン【紫上】
栄えある第1位に輝いたのは、『源氏物語』のヒロインである紫上(むらさきのうえ)である。
作者の紫式部は、この紫上の名前をとって、紫式部と呼ばれていたそうだ。
彼女が初めて登場したのは「若紫」の帖。
光源氏の初恋の人ある藤壺の姪で、登場時は幼い子どもだった。
この若紫に藤壺の面影を見た光源氏は、身よりのない彼女の後見人として、自分の側へ引き取って彼女を育てることにした。
やがて若紫が年頃になり、妻の葵上が没したので、光源氏は若紫を妻とし、以降彼女は紫上として、光源氏の正妻同様の扱いを受けることになるのである。
容姿、知性とともに作中きっての女性と言われており、完璧な女性としてたびたび讃えられるが、光源氏とのあいだに子どもが生まれなかったことや、度重なる光源氏の浮気心に心を痛めるなど、等身大の女性としての苦しみも抱えている。
その苦しみに耐えながらも、生涯をかけて光源氏を愛し、また愛されたその生きざまは、『源氏物語』に登場する女性たちの中でも、ひときわ光り輝いていると言える。
最後に
この記事では、『源氏物語』に登場する女性の中で、特に人気のある女性を挙げてみた。
ここで紹介した女性以外にも、『源氏物語』には魅力的な女性が数多く登場する。
ぜひ、あなただけのお気に入りのキャラクターを見つけていただきたいと思う。
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