戦国時代

あなたは何問解ける?戦国時代のなぞなぞ集『後奈良院御撰何曾』を紹介

皆さん、なぞなぞは好きですか?

子供のころ、色んななぞなぞを考えて出し合った思い出は誰でもあるかと思います。

昔の人たちも気の利いたなぞなぞを楽しんでいたようで、今回は現存する日本最古のなぞなぞ集『後奈良院御撰何曾(ごならいんぎょせんなぞ)』を紹介。

なぞなぞ好きだった?後奈良院(画像:Wikipedia)

その中から特に面白いものを何問かピックアップしてみたので、頭の体操に挑戦してみて下さいね。

練習問題「雪は下よりとけて……」

問題はこんな感じで出されます。

「雪は下よりとけて水の上に添ふ」

【意訳】雪は下からとけて、水の上に添って流れる。これ何だ?

正解は弓(ゆみ)。何でそうなるのか解説します。

雪(ゆき)の下つまり「き」の字がとけてなくなると、残る文字は「ゆ」。水(みず)の上に添うつまり上の文字は「み」。

「ゆ」と「み」を合わせて「ゆみ」つまり弓という具合。よく考えたものですね。

この調子でどんどんいきましょう。

問1「をとヽひも きのふもけふも……」

「をとヽひも きのふもけふも こもりゐて 月をも日をも をがまざりけり」

漢字に直すと「一昨日も、昨日も今日も籠もり居て、月をも日をも拝まざりけり」。つまり一昨日からずっと籠って月も太陽も見ていない……つまり三日間ずっと暗かったという訳です。

イメージ

だから正解は御神楽(みかくら、みかぐら)。三日暗というオチでした。

問2「いろはならへ」

「いろはならへ」

漢字を当てると「いろは習え」。文字を覚えるにはとにかく書くこと。仮名(かな、かんな)を書け……つまり正解は「鉋(かんな)かけ」

鉋とは、材木の表面を薄く削って滑らかにする大工道具。かつお節を削るのも鉋ですね。

問3「ちりはなし」

「ちりはなし」

床一面に「塵はなし」……誰かが箒で「掃いたか」訊いてみましょう。

イメージ

というわけで、正解は「鷂(はいたか)」。現代では漢字で灰鷹(灰色のタカ)とも書かれますが、その語源は「疾(は)し鷹」と言われます。

余談ながらハイタカとはメスの呼び名で、オスはコノリ(小鳥に乗りかかって襲う鳥の意)と呼ばれたそうです。

問4「田」

「田」

た?だ?でん?何だか取り付く島もなさげですが、正解は紅葉(もみぢ)

田んぼは稲の種籾(たねもみ)をまく場所(地)だから、籾地が転じて紅葉に。そんな時期(秋)から籾をまいていたら、とても育ちません(冬の寒さで枯れてしまう)けどね。

問5「い文字」

「い文字」

よく「いの一番」とか「いろはのい」なんて言う通り、「い」はすべての仮名の先頭つまり「仮名頭(かながしら)」です。

カナガシラ。画像:八面六臂 様より

カナガシラと言えば、カサゴ目ホウボウ科の海水魚。正解は鉄頭(かながしら。金頭・方頭魚・火魚など)になります。

あまり馴染みのない食材ですが、旨味と歯ごたえが強いらしいので、ぜひ食べてみたいですね。

問6「母には二度あひたれども……」

「母には二度あひたれども父には一度もあはず」

母には二回会うけど、父には一回も会わないもの。何だ……正解は唇(くちびる)

昔はハ行がファ行(φ音)だったとされるため、母を「ファファ」と読めば確かに唇が2回触れます。父(チチ)は口が「イー」の形で発音されるので、唇は1度も触れませんね。

問7「うはぎえしたる雪ぞたえせぬ」

「うはぎえしたる雪ぞたえせぬ」

雪の上が消え、その状態が絶えない=常にあるとはこれ如何に。雪(ゆき)の上がとけてなくなった、つまり残っているのは「き」の字。

イメージ

それが常(つね)にあるのだから……「き」が「つね」にある。つまり正解は「きつね(狐)」となります。

問8「三里半」

「三里半」

一里はおよそ4キロ。それが三里も半ばを過ぎ、もうすぐ四里にかかり……ということで正解は「寄りかかり(側几)」

12キロ以上も歩いてお疲れでしょうか。誰かに寄りかかりたくなりますね。

問9「竹の中の雨」

「竹の中の雨」

竹は矢の材料になり、それが生えているので矢生(やぶ)。雨は村雨(むらさめ)などと読むように、これをつなげて「やぶさめ」。

イメージ

だから正解は「流鏑馬」。その語源は「矢馳馬(やばせめ。馬を馳せながら矢を射る)」と言われますが、竹林に降りしきる雨も趣き深いものです。

問10「御前にさふらふ」

「御前にさふらふ」

主君の御前(ごぜん/おんまえ)に侍(さぶら)ふ、つまり命令を待っている状態。御用を待つから五葉松(ごようまつ)。これが正解となります。

また「さふらふ」は候(そうろう)とも読めますから「主君の御前であるぞ(だから大人しく御用を待っておれ)」とも解釈可能(どのみち答えは同じ)です。

他にもたくさん!雑談の小ネタにどうぞ

「まぁ、よく考えたモンだネ」ついつい笑み(苦笑?)がこぼれてしまう(イメージ)

けふの狩場は犬もなし⇒尺(たかばかり=鷹ばかり)

十三になれどもひだるい⇒串柿(くしがき=9+4食っても餓鬼のように空腹)

廿人木にのぼる⇒茶(ちゃ。十と十と人と木で茶の字になるから)

春の農人⇒襷(たすき。稲作の前に田んぼを鋤くから)

五輪の下の化物⇒袴(はかま。五輪は五輪塔=墓、その下に化物=魔がいる)

ぬれぶみ⇒干海松(ほしみる。濡れ文とは艶書のこと、濡れているので干してから見る)

春日の社⇒奈良紙(ならがみ。春日大社は奈良の神様≒紙)

酒のさかな⇒けさ(今朝、袈裟など。さけのさかなとは、逆さ読みにした名)

……などなど、こんな感じでなぞなぞが続きます。よく考えたものですね。『後奈良院御撰何曾』には他にもたくさんなぞなぞがあるので、読んでみると面白いですよ。

※参考文献:

  • 大野晋 編『本居宣長全集 第十二巻 本居内遠全集』筑摩書房、1989年8月
角田晶生(つのだ あきお)

角田晶生(つのだ あきお)

投稿者の記事一覧

フリーライター。日本の歴史文化をメインに、時代の行間に血を通わせる文章を心がけております。(ほか政治経済・安全保障・人材育成など)※お仕事相談は tsunodaakio☆gmail.com ☆→@

このたび日本史専門サイトを立ち上げました。こちらもよろしくお願いします。
時代の隙間をのぞき込む日本史よみものサイト「歴史屋」https://rekishiya.com/

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 戦国大名が生まれた3つのルーツとは 「織田家、武田家、毛利家…ど…
  2. 【戦国時代】 武士が過剰に気にした合戦前の『吉凶』とは 「女に近…
  3. 本庄繁長『一度は上杉に背くも越後の鬼神と称された武将』
  4. 蒲生氏郷 【信長に認められ秀吉に恐れられた武将】
  5. 長篠城へ行ってみた【日本100名城】
  6. 上泉信綱 〜新陰流を起こし剣聖と称された求道者
  7. 現地取材でリアルに描く『真田信繁戦記』 第5回・大坂冬の陣編 ~…
  8. 川中島の戦いの真実 ②「実は経済戦争だった」

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

開戦から80年…真珠湾攻撃の暗号「ニイタカヤマノボレ」ってどこの山?

時は昭和16年(1941年)12月8日、大日本帝国がアメリカをはじめとする連合国軍に対して宣戦布告、…

大友宗麟の「国難レベルの女遊び」をやめさせた、立花道雪の「天岩戸作戦」

立花道雪とは立花道雪(たちばなどうせつ)とは、九州の戦国大名・大友宗麟の片腕・軍師として…

【世界最古の木造建造物】法隆寺の歴史を解説 ~誰がいつ建てたのか?

関西地域は、古墳時代にヤマト王権が支配を開始して以来、朝廷や都が設置される拠点であり、長い歴…

秀吉が担ぎ上げた「三法師」こと、織田秀信はどうなったのか?

本能寺の変の後、織田家の後継者および領地再分配を決めるために開かれた清洲会議は、歴史の転換点…

天皇機関説事件について調べてみた【学説上の憲法解釈に圧力を加えた事件】

定説とされていた 天皇機関説天皇機関説事件 は1935年(昭和10年)に当時の軍国主義の風潮を反…

アーカイブ

PAGE TOP