勝って兜の緒を締めよ
サッカー日本代表はドイツ代表とトルコ代表にそれぞれ勝利し、2連勝を飾りました。
昨年のカタールW杯以来となったドイツ代表には連勝。日韓W杯以来の対戦となったトルコ代表にもリベンジを達成しています。21年前、日本は決勝トーナメント1回戦でトルコとぶつかり、0−1で破れています。
長年サッカーを見てきた者として、あのドイツを粉砕したシーンには、何とも言えない感慨を覚えました。
しかし客観的に戦力を分析したとき、現在の日本代表メンバーはまさにオールスターです。
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ヨーロッパの第一線で活躍する選手が大半で、両チームのメンバーを比較しても「日本選手の方が優れているのではないか」というのが正直な思いでした。
今回の結果を受けて、多くのメディアは日本代表をポジティブに伝えています。しかし次のW杯に向けて、日本代表が抱える課題を少しずつ克服していく必要があります。
目の前の結果ばかりを見て、過程(プロセス)を無視すれば、本来の目標(W杯ベスト8)を達成することはできません。
「勝って兜の緒を締めよ」ではないですが、今回の記事では、あえて日本代表が抱える課題について見ていきたいと思います。
森保監督には戦術がない
監督の役割は多岐にわたります。チームのビジョンを設定し、その達成のために明確なプロセスを示すことが求められます。
とくに重要な仕事として「戦術」を定めること、そして「守備の決まり事」を決めることです。
当たり前ですが「守備の決まり事」は、試合の流れや結果に大きな影響を与える要素です。
どの選手がどの位置で守るのか、ボールを失った際の反応、プレッシングのタイミングや強度、そして選手間の確認事項などが含まれます。
またセットプレイにおける守備の組み方や、相手の選手に対するマークの仕方なども、監督が事前に指示するべき重要なポイントです。
残念ながら森保ジャパンには、チーム内における戦術の共有ができていません。そのため「守備の決まり事」もありません。
つまり、選手によるその場の判断に依存しているのです。そのため、試合のパフォーマンスにムラが出てしまい、選手は安定した力を毎回出すことができません。
カタールW杯を思い出していただきたいのですが、初戦のドイツ戦に勝利した日本代表は、第2戦のコスタリカに負けています。そして第3戦のスペインに勝利し、決勝トーナメント進出を決めています。
ドイツやスペインのような強豪国に対して、戦術がない日本は“守る”しかないため、ある意味でチーム内に“守るだけ”という戦術の共有ができます。
ドイツとスペインに対して“守るだけ”の戦術を取った日本は、相手のミスを待ち続けました。前半にリードを許して相手チームが油断した後半、相手選手のミスを誘発し、逆転に成功。勝利することができました。
しかしコスタリカやクロアチアのような、日本と同等レベルのチームに対しては、攻撃もデザインしなくてはならならず、結果として戦術の共有が再びできなくなってしまうのです。
チーム戦術を植え付けることができない森保監督は、チームとしての戦術的な積み上げもなく、行き当たりばったりのチーム運営を以前からしてきました。
残念ながら「監督」としての能力は厳しいと判断せざる得ません。
救世主、現る
そして今回の欧州遠征ですが、森保監督に救世主が現れます。
冨安健洋です。
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イングランドの名門アーセナルに所属する冨安ですが、もともとは身体能力に優れた選手として評価され、イタリアのボローニャからアーセナルに移籍しました。
2021年から在籍するアーセナルでは、監督のミケル・アルテタから守備のロジックを叩き込まれ、持ち前の身体能力だけなく論理的な守備もこなせるようになり、着実に成長を遂げています。
ミケル・アルテタはジョゼップ・グアルディオラの弟子にあたります。ジョゼップ・グアルディオラはマンチェスター・シティーの監督を現在務めており、ヨーロッパクラブのナンバーワンを決める、UEFAチャンピオンズリーグの優勝を3度経験した名将です。
昨季の冨安は怪我が重なってしまい不本意なシーズンを過ごしましたが、今シーズンは途中出場が多い中でも抜群の存在感を示しています。今後は先発の機会が増えるはずです。
優れたリーダーシップも兼ね備えた冨安は、ポジショニングの位置など仲間に対して的確な指示を送りつつ、自分自身のタスクも完璧にこなして日本の守備を支えています。
アーセナルで学んだ守備の理論を日本代表に持ち込んだ結果、冨安は日本の守備に安定感をもたらします。
今回のドイツ戦、冨安は相手エースのレロイ・サネと対峙。試合中、サネに訪れた2回の決定機を完璧に封じています。
冨安の出場で、日本の守備は驚くほど改善しました。しかし本来ならば、監督がしなければいけない仕事のはずなのですが…。
冨安をはじめ優れた選手たちが、試合の状況によって臨機応変に対応しているのが、日本代表の実態なのです。
レアル・マドリードの監督になるべき?
本来ならきちんと戦術を指導できる監督を就任させるべきですが、日本サッカー協会にはお金がないため海外から優秀な監督を招くことができません。そのため森保監督が続けるしか選択肢がないのです。
それでは森保監督に、これから何を求めればいいのでしょうか。
現在の日本代表メンバーは、ヨーロッパのトップクラブで活躍する選手が多くを占めるようになりました。
在籍するクラブでは一流の監督から指導を受けているため、森保監督が新しく教えられることはないでしょう。
そうなると森保監督の仕事は、適切なポジションに選手を配置し、気持ちよく試合をしてもらうようにするだけです。今後も変なこだわりを持たず、現在のように選手の判断に任せるやり方を続けるべきでしょう。
同じようなチームが、スペインの強豪レアル・マドリードです。世界中から超一流選手(オールスター)を集め、選手の個人能力だけで勝利を目指す戦略を採用しています。
いまやオールスターのようなドリームチームを編成できる日本代表。森保監督はレアル・マドリードの監督に似た役割を担うのがベストだと思います。
ただ、冨安などのキープレーヤーが怪我で欠場してしまうと、チームのパフォーマンスは大きく落ちてしまう点は注意しておきたいところです。
参考文献:Leo the football、木崎 伸也(2023)『蹴球学 名将だけが実践している8つの真理』KADOKAWA
ギャラをレオザに半分渡した方がいいくらいの受け売り記事。
参考文献としてレオザの本が挙げられてるけど、実際はYouTubeの方からの引用が多い気がするけどどうでしょう?