事件史

松山刑務所の大井造船作業場に行ってきた その3【魔のそのほか】

大井造船作業書での点呼

松山刑務所の大井造船作業場に行ってきた その3【魔のそのほか】

大井造船作業場は大変忙しい施設です。人員点呼を例にあげると、普通は動作の順番は、ゼンインキョウツケ→マイエナラエ→ナオレ→バンゴウ
まあ、これが刑務所に限らずごく普通の点呼だと思いますが!

毎朝の朝礼や出寮時、帰寮時、行事の際は、集合がかかると、全速力で集合場所に走り、あらかじめ自分の並ぶ位置と順番は覚えておきます。班長が点呼をとり会長に報告し、会長は職員に報告するのですが、班長の号令が特別早口で

ゼンツケナラエゴー!

その瞬間、班員は自分の位置の番号を全員で合唱します。 順番でなく全員一緒にです! 各班競争で報告するのでモタモタするとまた罵声がとびます!
各班その間約3~4秒。世界一速い点呼として、ギネスブックに挑戦するのも良いかも?

持ち場まで走って通勤

造船所は敷地が非常に広いので、大井の作業員は自分の持ち場まで整列して走って通勤します。定かではありませんが周囲4キロぐらいあるのではないかと思います。
走るときは息まで揃えるほどです。道路の横断、曲がり角は直角に、無駄話一つせず整列して走ります。

皆バラバラの場所で作業をしているので近場の作業場なら楽ですが、遠い作業場はかなりの距離を走らなければなりません!
それでなくとも、朝食後は寮のグランドを7~8周デカイ声を出しながら走ります。しかも安全靴でヘルメット!

昼食は寮に戻り食べるので一日2往復することになります。
本所の訓練で体力が付いたと錯覚していた私は、朝のグランド周回だけで身体はヘトヘト!
やはり錯覚だったと思い知らされました!

団体行動の動作についても非常にキビキビしそのスピードが速く、最初は着いて行けず大変でした。そこらの軍隊より団体動作は負けません。モタモタしているとひどい目に合うからです!

魔の「そのほか!」

全員集合で行事やレクレーションが終わると、やはり同じ忙しくて速い人員点検があり、解散の前に必ず連絡事項を伝えたり、衛生係から「うがい、手洗いの励行・・・」の毎度おなじみの定形文の棒読みのような注意があり、その後会長から「他に連絡事項は?」と聞いた後、魔の「そのほか!」が始まります!

魔の「そのほか!」とは、行事中や集会、団体行動中にヘマをやる奴が必ず1人や2人出て来ます。ヘマと言っても些細な事です。

例えば集合の時、全力で走らなかった、足が揃わなかった、首が動いた、などなど、本当に些細な事です!

会長:「他に連絡事項は?」なければ「そのほか!」(注意指導する人は挙手します!)
注意する人:「××君!お前!集合がかってるのに全速力で走ってねーだろー!おいこら!テメー!何様だ!おい!おい!
××君:「はい!どうもすみませんでした!」と叫ぶ他はなく、口答え、言い訳、そんな事言ったら100、200倍になって返ってきます。毎度のように5~6回の叫び声で済ました方が利口!全員の前でつるしあげられる恥ずかしさを我慢して
はい!どうもすみませんでした!」叫び声!
注意する人:「・・・・・・・だろー!こら!
はい!どうもすみませんでした!」叫び声!
注意する人:「・・・・・・・おい!おい!
はい!どうもすみませんでした!」叫び声!
注意する人:「・・・・・・・いい加減にしろ!こら!
はい!どうもすみませんでした!」叫び声!

注意する人:「はい、いいですよ!」最後の言葉は何とも、あっけなくおわります。

注意指導をする方もいずれ上役になりたいが為か「俺は注意指導が出来るんだぞ!アピールも兼ねているので特にデカイ声で! 特にしつこく!」という感じです。
こちらはただあやまるだけではありません。あやまる度に腰から45度前傾し「はい!どうもすみませんでした!」多い時には10回、15回。

前回の記事でも少し触れましたが、1日3~4回違う人に注意指導を受けてしまと、夜にも再度「あやまり!」に行かねばならないので、時間が全て終わってしまいます。

全員で集まる機会が多く、教室での集まりの時などは両膝はピタリと着け、足の付け根に両手を置き、背すじをのばし2時間も3時間も居眠りを我慢しています。しかし幹部5役は、膝はこれ以上開けないレベルでおっぴろげて、居眠りまでする人もいます。

そんな幹部が:「××君!何!足開いてんだよー!えー!えー!こら!そんなに偉くなったんだ!へー!
私達下の者は:「はい!どうもすみませんでした!」(自分だって足おっぴろげ居眠りしてただろー!)と言いたいところを我慢して「はい!どうもすみませんでした!

幹部5役を注意指導できるそれ以上の役職が無いので、同じ懲役でしかもこの施設での決まり事を幹部5役だからと言って破るのは理解できず、しかも破ってる本人に注意指導を受けるとは何か変だな?と感じながら、またしても「はい!どうもすみませんでした!」と謝ってる自分も理解できませんでした。

昼間謝っているのに、夜にもまた謝るのか? 1日何度あやまればいいの? そんなに悪い事した?足を開いただけで!頭が揺ただけで!そんなにむきになって怒る事なの?

最初のうちは何が何だか解らず、とんでもないところに来てしまったと思いました。異様な世界!
瀬戸内海の美しい景色の中に白い建物は、楽園のように見えましたが、バスを降りた瞬間からまたしても私の錯覚だったと気が付きました!

しかし人間は瞬間的に環境に順応する能力があります!。順応し始めると、この寮の良いところが段々見えてきました。

また機会がありましたら次は良いところを、ご紹介したいと思います。

松山刑務所の大井造船作業場に行ってきた その2【塀のない刑務所】
松山刑務所の大井造船作業場に行ってきた その3【魔のそのほか】
大井造船作業場に行ってきた その4【雨天朝礼】

関連記事:
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刑務所に6回入所。計16年程の服役。みなさんが知らない裏側の刑務所情報、本当の仕組み、本当の生活状況、など書ければと思っています。

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