中国史

【中国の2つの謎の古代文明】金沙遺跡と三星堆遺跡とは 「高度な技術を持つも消失」

2つの高度な古代文明

中国西南部にかつて存在していた高度な文明についてご存知だろうか。

この文明は古代エジプトやマヤ文明のように、驚異的な文化と技術を誇りながらも、謎の消失を遂げた。

その文明とは、三星堆文明(さんせいたいぶんめい)と金沙文明(きんさぶんめい)である。この2つの文明は数多くの驚きと謎を提供し続けている。

三星堆遺跡と金沙遺跡には深い関係があるとされている。

今回は、その類似点について触れていきたい。

三星堆文明

三星堆文明は中国四川省広漢市に位置している。

この文明は紀元前2800年から紀元前800年にかけて栄えたとされ、非常に高度な文化と技術を有していた。

三星堆遺跡は1929年に偶然発見され、その後の発掘で驚くべき遺物が多数見つかっている。

金沙遺跡と三星堆遺跡とは

画像 : 三星堆遺跡で発掘された蚕叢を模したとされる青銅縦目仮面 public domain

特に注目されるのは、縦目仮面や青銅器の数々である。

これらの遺物は、その精巧さと異様なデザインから、「三星堆遺跡は宇宙人が作ったに違いない」と考える人もいるほどだ。

中国古代文明の中でもかなり異質な存在であり、その起源や文化的背景については多くの謎が残されている。

※三星堆遺跡について詳しくは
【古代中国の宇宙人遺跡?】 三星堆遺跡と「目が縦」だった謎の王様とは
https://kusanomido.com/study/history/chinese/77475/

金沙遺跡とは

金沙遺跡は中国四川省成都市に位置する。2001年2月8日、成都市の建設現場で水道工事中に発見された。

発見された遺物の数々は、この地が三星堆文明の後継である金沙文明の中心地であったことを示している。金沙遺跡と三星堆遺跡の距離はわずか38kmと非常に近く、その出土品の多くは三星堆遺跡のものと驚くほど似ていたのだ。

金沙遺跡からは、金器、翡翠、銅器、石器、象牙、漆器などが出土している。

これらの遺物は、その姿形や精巧な作りから、三星堆遺跡の文化を引き継いでいることを示唆している。

時代背景と文化の継承

金沙文明は、紀元前1200年から紀元前500年前に栄えたとされる。
時代としては、商朝の後期から西周の時代にかけてである。

三星堆文明は紀元前2800年から紀元前800年にかけて栄えたとされ、古代の夏王朝と商朝時代に至る。

このため、三星堆文化が金沙文化へと継承されたと考えられている。

実際に金沙遺跡から出土した小さな青銅像は、三星堆遺跡の青銅大立人と酷似している。

金沙遺跡と三星堆遺跡とは

画像 : 金沙遺跡から見つかった青銅人 public domain

画像 : 三星堆遺跡の青銅大立人 public domain

その姿勢や形状までがほぼ一致していることから、両文明に文化的つながりがあった可能性は極めて高いだろう。

また、金沙遺跡で発見された黄金マスクも大きく縦に見開いた目や高い鼻を持ち、三星堆遺跡の青銅マスクと酷似している。

太陽神鳥金飾と古蜀人の精神世界

金沙遺跡で発見された有名な遺物のひとつに「太陽神鳥金飾」がある。

画像 : 金沙遺跡で発掘された太陽神鳥金飾 public domain

これは一枚の金箔で作られており、4羽の神鳥が太陽の周りを舞う姿を表現している。
大きさは外円が12.53cm、内円が5.29cm、厚さは0.02mm、重さは20gで、金箔の金含有量は94.2%と非常に高い。

この金飾には12の突起があり、神鳥は太陽の周りを飛ぶ方向とは逆方向に渦を巻いている。

この12の突起は1年の12ヶ月、4羽の神鳥は4つの季節を表しているとされ、この文明を起こしたと考えられている「古蜀人」が自然の規律を理解していたことを示している。

画像 : 蜀の位置 public domain

古蜀(こしょく)とは、呼んで字のごとく「古代の蜀」である。
の位置は三国志の時代でいえば、劉備が治めた国といえばイメージしやすいかもしれない。そのはるか昔にあった国である。

三星堆遺跡でも同様に「太陽」と「神鳥」の出土品が見つかっており、これらは主に宗教儀式に用いられたと考えられている。

画像 : 三星堆遺跡で発掘された「神樹の鳥」 public domain

古代エジプトを始めとする古代文明は、太陽を神化して崇拝していた文明が多い。

古蜀人もそうであったと考えられている。
彼らは太陽とその一番近くを飛ぶ鳥は、非常に深い関係があるとしていた。十の太陽があると信じており、日が落ちると鳥の姿に変化すると考えていた。

このように、古蜀人は太陽と鳥を非常に関連性の高いものと考え、崇拝の儀式に使用してきたのだ。
古蜀人には「人と神の交流」という概念があった。「人神交往」「通天」という考え方である。

また、両遺跡からは大量の象牙も発見されている。これらの象牙は、当時の交易や文化交流の証拠とされている。

一般公開とその影響

2007年に始まった一般公開で、金沙遺跡は一気に有名になった。

三星堆遺跡と合わせて、世界中から注目を浴びることとなり、古蜀文化の神秘的で魅力的な側面を広く知らしめることとなった。

これにより、三星堆と金沙という2つの遺跡は、共に中国の古代文明の中で重要な位置を占めることとなったのだ。

最後に

三星堆文明と金沙文明は、中国西南部における高度な古代文明の証である。

これらの文明は、驚くべき技術と文化を持ちながらも、その消失には多くの謎が残されている。両遺跡の出土品は、その精巧さと美しさで人々を魅了し続けており、古蜀人の高度な文化と精神世界を現代に伝えている。

三星堆と金沙の関係性やその文化の継承は、これからも多くの研究者によって探求され続けるであろう。

参考 : 金沙遗址博物馆

草の実堂編集部

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草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

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