鎌倉殿の13人

【鎌倉殿の13人】北条時政との政争に敗れた比企能員の最期を、佐藤二朗が演じ切る!

令和4年(2022年)5月9日、俳優の佐藤二朗さんがTwitterを更新。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で自身の演じる比企能員(ひき よしかず)が最期を迎えるシーンのリハーサルがあったとか。

源頼朝(演:大泉洋)の亡きあと、鎌倉殿の跡目を継いだ源頼家(演:金子大地)を支える宿老の一人として存在感を発揮した能員でしたが、北条時政(演:坂東彌十郎)らによって粛清されてしまうのでした。

果たしてどのような最期を遂げたのか、予習を兼ねて紹介したいと思います。

頼朝の側近として活躍、頼家の乳母父も務める

比企能員は生年不詳、藤原氏の流れをくむ武蔵国の豪族・比企氏の一員ながら、その両親についてもよく分かっていません。恐らくは一族の仲でも身分が低く、立場が弱かったのでしょう。

それが頼朝の乳母であった比企尼(演:草笛光子。能員のおば)の養子となったことから源氏に接近し始めます。

比企能員。「大日本歴史錦絵」より

通称は藤四郎(とうしろう。藤原氏の四男)。養子縁組によって比企朝宗(ともむね)・丹後内侍(たんごのないし)・河越尼(かわごえのあま)・比企尼三女(実名不詳)と義兄弟になりました。

比企朝宗はその娘である姫の前(ひめのまえ)が北条義時(演:小栗旬)に嫁ぎ、丹後内侍は安達盛長(演:野添義弘)に嫁ぎ、河越尼はその娘である郷御前(演:三浦透子。)が源義経(演:菅田将暉)に嫁ぎ、三女は伊東祐清(演:竹財輝之助)後に平賀義信(ひらが よしのぶ)に嫁いています。

つまり能員は義時と義経にとって義理のおじであり、盛長と祐清、義信の義兄弟と言うことに。当時はこういう血縁関係が複雑に絡み合っており、実にややこしいですね。

さて、鎌倉に基盤を築いた頼朝は流人時代に受けた比企尼からの恩義に報いようと、能員を猶子(ゆうし。相続権のない養子)に迎えて重用。

寿永元年(1182年)に誕生した源頼家(万寿)の乳母父となり、姉妹の比企尼三女と能員の妻(渋河兼忠の娘?ミセヤノ太夫行時の娘?大河ドラマでは。演:堀内敬子)が乳母となりました。

ただ頼朝のお気に入りであるのみならず武勇にもすぐれて平家討伐でも活躍、その滅亡後は平宗盛(演:小泉孝太郎)に頼朝からの言葉を伝える役目を務めます。

文治5年(1189年)の奥州征伐では北陸道大将軍、建久元年(1190年)に起きた大河兼任(おおかわ かねとう)の乱では東山道大将軍として出陣しました。

頼朝の上洛にも随行して御所への参院にも供奉、これまでの勲功により右衛門尉の官職を与えられます。

建久9年(1198年)には娘の若狭局(演:山谷花純)が頼家の正室となり、間もなく嫡男となる一幡(いちまん)を産みました。

そして建久10年(1199年)1月に頼朝が急死すると頼家を補佐する13人の宿老に加わり、鎌倉の幕政に大きな存在感を発揮するのですが……。

頼家の危篤に乗ずる北条時政

「このままでは、非常にまずい」

頼朝の死に焦りを感じていたのが、北条時政。今までは「鎌倉殿の舅」として影響力を示していましたが、頼家が鎌倉殿となると、舅のお株を能員に奪われてしまいます。

能員に立場を脅かされ、焦る時政(イメージ)

もちろん、頼家は自分の娘である政子(演:小池栄子)が産んでいるので祖父としての立場が失われる訳ではありません。

しかし、やはり「おじいちゃん≒前世代の人」と「妻とその父≒現世代の人」では、後者の方が意思決定に有利です。

「何とかせねば……」

今までの権力を手放したくない時政がやきもきしていたところ、建仁3年(1203年)7月に頼家が急病で倒れ、8月には危篤状態に。

しめた!孫が死にかけていようがチャンスはチャンス。「もしもの場合に備えて」ということで、時政は「関東28か国を一幡様に、そして関西38か国を源実朝(演:柿澤勇人)様に相続させてはどうか」と提案。

普通に考えれば「権力を分割したら、いらぬ対立の原因になりゃしないか」と思ってしまいます。しかしいかんせん一幡は幼すぎて朝廷も心配だから、一幡が元服するまでの補佐として実朝を並び立てようと言うのです。

「絶対反対!内部対立を煽ることになりますぞ!」

とうぜん能員は反対したものの、既に時政は他の宿老たちに手を回しており、衆議は決してしまいました。

「これは北条による謀叛の企みに違いない!」

能員は若狭局を通じて意識を取り戻した頼家に「北条討つべし」と訴えます。それを障子の陰から聞いていた政子が時政に通報、先手を打って能員はじめ比企一族を殲滅するのでした……。

というのが俗説ですが、そもそも政子と頼家は同居しておらず、何かモノひとつ伝えるにも使者を派遣する間柄。これは後世の人々が面白おかしく脚色したものと見られます。

「あンな老いぼれ一匹に……」天野遠景は笑う

ともあれ、建仁3年(1203年)9月2日。時政は挙兵以来の同志である天野藤内遠景(あまの とうないとおかげ)と仁田忠常(演:高岸宏行)を連れて大江広元(演:栗原英雄)を訪問。能員粛清の根回しです。

「大江殿(下段右)、後でちょっとよろしいか」相談をもちかける時政(下段左。イメージ)

その帰り道、荏柄社(現:荏柄天神)の前で遠景と忠常に命じます。

「よし決めた。今日(能員暗殺を)決行するから、兵隊を集めろぃ」

【吾妻鏡】能員謀叛を企つるによって、今日追伐すべし。おのおの討手たるべし

しかし、遠景は鼻で笑って言いました。

「兵隊なンざ要らねぇや、あンな老いぼれ一匹に。てめぇの自宅に呼べよ。さっさと殺っちまおうぜ」

【吾妻鏡】軍兵を発するに能わず、御前に召し寄せてこれを註せらるべし。かの老翁何事かあらんや

やたらと人数を集めてしまうと、かえって警戒されてしまう。だからあえて少数精鋭で手早く仕事を済ませる……そうやって、今まで暗殺に手を染めてきた遠景の自信がうかがわれます。

「さっさと殺っちまおうぜ」実に手慣れたモンである(イメージ)

それで行けるかなぁ……ちょっと心配なので、時政はさっき会った広元を今度は自宅に招いて相談します。広元としては、行かねば殺される、行っても態度一つで命が危ないという状況。常に護衛をそばに置いて話したそうな。

「まぁ、それも一策でしょう」

午の刻(正午ごろ)に広元が帰ると、いよいよ計画を実行に。能員に対して

「最近制作していた薬師如来像がついに完成したので、そのお祝いに法要を営むことになったので、ぜひ来てほしい」

と呼びかけました。いや絶対罠でしょこんなの。しかし、能員はあえて行くことを決断。

「ここは一つ、鎌倉殿の舅として度量を示してやらねばのぅ!」

「だったらせめて護衛を……」

「要らぬ。我らは攻め込むのではなく、あくまで結縁(けちえん。仏様とご縁を結ぶこと)に参るのだから……」

能員は郎党2名と雑色5名のみを連れて時政の館を訪ねたところ……

『星月夜顕晦録』より、比企能員(中央)を暗殺する遠景(右。当時出家している)と忠常(左)

「「死ね!」」

待ち構えていた遠景と忠常に両手を掴まれてホールドされ、瞬時に殺されてしまいました。

比企一族の滅亡と頼家の破滅

「バカが、まんまと引っかかりやがった!」

返り血を浴びて笑う遠景と忠常。後は御家人たちへ根回しした通り、比企一族を攻め滅ぼすだけ。比企討伐に参加した主要メンバーは以下の通り。

  • 北条義時
  • 北条泰時(演:坂口健太郎)
  • 平賀朝雅(ひらが ともまさ。平賀義信の子)
  • 尾藤知景(びとう ともかげ)
  • 工藤行光(くどう ゆきみつ)
  • 金窪行親(かなくぼ ゆきちか)
  • 仁田忠常
  • 小山朝政(演:中村敦)
  • 長沼宗政(ながぬま むねまさ。朝政の弟)
  • 結城朝光(ゆうき ともみつ。同じく)
  • 畠山重忠(演:中川大志)
  • 榛谷重朝(はんがや しげとも。重忠の従兄弟)
  • 三浦義村(演:山本耕史)
  • 和田義盛(演:横田栄司)
  • 和田常盛(つねもり。義盛の子)
  • 土肥惟光(どい これみつ。土肥実平の孫)
  • 加藤景廉(かとう かげかど)
  • 加藤景朝(かげとも。景廉の子)
  • 後藤信康(ごとう のぶやす)
  • 所朝光(ところ ともみつ)……など。実に周到な根回しに、時政の老獪ぶりが判ります。

比企一族の滅亡(イメージ)

こうして比企一族は滅亡し、一幡も戦火の中で亡くなってしまいます。そして最大の後ろ盾を失った頼家は時政・政子らによって出家を迫られ、程なく非業の死を遂げるのでした。

報道によれば「そうだ。忘れてはならね。諦めず、高みへ。普段大好きなこの北条の親子と、最期まで憎悪の火を燃やそう(下記より)」とコメント。

佐藤二朗さん演じる比企能員の最期がどう描かれるのか、拝見できるのはしばらく先ですが、実に楽しみですね!

※参考:

・鎌倉殿の13人に関する記事一覧

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