城,神社寺巡り

東海道の西の起点「京都三条通り」を歩いてみた ~近代建築と処刑された豊臣秀次の菩提寺

江戸日本橋から続く東海道五十三次。その西の終点でもあり、起点でもある三条大橋から延びる道が三条通りだ。

この通りは、平安京の三条大路にあたり、明治になると京都のメインストリートとして栄えた。

今回は、そんな三条通りに点在する、伝統的な京町家と近代建築。さらに隠れた歴史を発見しに、三条大橋西詰から西に向かって歩いてみた。

豊臣家ゆかりの史跡からスタート

京都三条通り

画像:賑わう三条通り(撮影:高野晃彰)

三条通りには、新旧の歴史スポットが、まさに目白押し状態だ。

江戸時代の寺社や旧跡、昔懐かしい伝統的な京町家。レトロ感あふれる近代建築と、お洒落な最新のショップが融合した不思議な魅力に溢れている。

画像:三条大橋西詰石碑(撮影:高野晃彰)

三条大橋西詰には、1590(天正18)年に、豊臣秀吉がこの橋を大改修した際の「銘入り擬宝珠」が残っている。

その擬宝珠の横には、それを記す石碑も建つ。

そんな三条大橋を渡り切り、高瀬川が流れる木屋町通りを左に曲がるとすぐ「瑞泉寺」の山門が見えてくる。

画像:瑞泉寺山門(撮影:高野晃彰)

ここは秀吉の命により処刑された、豊臣秀次とその妻子39名の菩提を弔う寺だ。

秀次は秀吉の甥として生まれ、後に秀吉の後継ぎとして関白に任ぜられた。しかし、秀吉に実子・秀頼が誕生すると、謀反を企てたとして謹慎を言い渡され、高野山に追放となった。

その後、同地において28歳で自害させられた。

この時、秀次に仕えていた大名・武士たちは悉く粛清され、秀次の妻妾34名・子供5名も三条河原に引き出され処刑された。

画像:瑞泉寺墓域(撮影:高野晃彰)

「瑞泉寺」は、1611(慶長16)年に、その処刑地の近くに、豪商・角倉了以が、供養のために建立した寺院だ。

墓域には、秀次の首を納めたと伝わる石びつを奉じる石塔と、愛妾・子息の他、秀次に殉じて自刃した家臣10名の五輪石塔が、そのまわりを取り囲む。

昼夜を問わず賑やかな三条木屋町にあって、ここだけが異世界ともいえる雰囲気を漂わせている。

近代建築と町家の融合エリア

画像:1928ビル(撮影:高野晃彰)

「瑞泉寺」から、高瀬川を渡り三条通を西へ進み、賑やかな三条名店街のアーケードを抜けると、御幸町通りと交差する手前左手にアールデコ調の「1928ビル」が見えてくる。

同ビルは、1928(昭和3)年竣工、明治から昭和にかけての著名な建築家・武田吾一の代表作の一つとされる。

画像:SACRAビル(撮影:高野晃彰)

さらに西へ進み、富小路通りを越えるとすぐ右手に「SACRAビル」が現れる。

同ビルは、1916(大正5)年に造られた洋館で、元々は旧不動貯金銀行京都支店だった。

現在は、雑貨店・カフェなどが入るテナントビルだが、1階がレンガ造り、2・3階が木骨レンガ造りの内装をもつ、大正初期の商業ビルの意匠の特徴をよく示す貴重な建物として、国登録有形文化財に登録されている。

ここからは右手に、1864(元治元)年に創業した江戸時代から続く老舗足袋専門店「分銅屋足袋」、1906(明治39)年竣工の「京都文化博物館別館」、1902(明治35)年建築のネオルネッサンス様式の「中京郵便局」と、見応えがある町家と近代建築が続く。

画像:京都文化博物館別館(撮影:高野晃彰)

京都文化博物館別館」は、旧日本銀行京都支店の建物で、辰野金吾とその弟子・長野宇平治が設計。

1969(昭和44)年に、国の重要文化財に指定された。

また、「中京郵便局」は、昔の建物の雰囲気を残したまま中を改装する、外壁保存の手法が使われた第一号として知られる。

画像:中京郵便局(撮影:高野晃彰)

隠れた歴史も三条通りの魅力

画像:文椿ビルディング(撮影:高野晃彰)

烏丸通りを渡ると、右手に「文椿ビルディング」が現れる。

同ビルは、1920(明治35)年建設の木造洋館という大変珍しいもので、約5mという社寺閣並みに天井の高い造りは、「文明開化という潮流」&「京都という土地柄」が融合された結果ともいえる。

画像:広野了頓邸説明板(撮影:高野晃)

さらに西へ歩みを進め、室町通りを越えると衣棚通りがある。
この通りは、三条通りから南の六角通りまで細い路地となっており、「了頓図子」の別名で知られる。

今は何でもない飲食店や住宅が軒を並べる細い道だが、ここには室町時代から江戸時代にかけて、足利将軍家の幕臣広野家の屋敷があった。

中でも、広野了頓は有名な茶人で、豊臣秀吉や徳川家康が度々訪れたという記録が残っている。

画像:大西清右衛門美術館(撮影:高野晃彰)

衣棚通りの一つ先、新町通りを越えると一帯は釜座町という町名になる。

この辺りは、平安時代から鋳物街として賑わったエリアだ。ここにある犬やらいが目立つリニューアルされた町家が「大西清右衛門美術館」だ。

大西家は千家十職の一人として、古田織部など武家茶人の釜を手がけた初代浄林から、16代にわたり、およそ400年間も茶の湯釜をつくり、その伝統と技を守り続けている。

美術館では、大西家歴代が創った茶の湯釜を中心に、芦屋釜・天明釜、釜座ゆかりの古文書の他、様々な茶道具を公開し、茶の湯の文化を今に伝えている。

さて、堀川通りを越えると、京都を代表する老舗商店街である「京都三条商店街」が千本通りの間、東西800mにわたり続く。
同商店街には約180店舗、衣食住をカバーする老舗から新店舗までバラエティ豊かな店が並ぶ。

今回は、このでローカル色の強い、京都そのものを体感できる商店街を三条通り歩きのフィニッシュとしよう。

※参考文献
高野晃彰編 京あゆみ研究会著『京都ぶらり歴史探訪ガイド 今昔ウォーキング』メイツユニバーサルコンテンツ刊 2022.2
文:撮影 / 高野晃彰

 

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高野晃彰

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編集プロダクション「ベストフィールズ」とデザインワークス「デザインスタジオタカノ」の代表。歴史・文化・旅行・鉄道・グルメ・ペットからスポーツ・ファッション・経済まで幅広い分野での執筆・撮影などを行う。また関西の歴史を深堀する「京都歴史文化研究会」「大阪歴史文化研究会」を主宰する。

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