古来、国や地域を問わず、共通の伝説や伝承が残っている例は多い。
ノアの箱舟のような洪水伝説とともに、世界で伝わるのが「巨人伝説」である。
時には人間の敵として、時には友人として、そして時には神としてその存在は語り継がれてきた。
現代でも「進撃の巨人」の大ヒットなど、我々人間は巨人というものに対して恐怖とともに憧れも抱いてきた。
だが、ただの伝説だけで世界各地に残るとは考えにくい。その真偽のほどはどうなのだろうか。
ギリシア神話の巨人
巨人を意味する英語「Giant(ジャイアント)」は、ギリシア神話で巨人を指す「ギガス」に由来する。その複数形は「ギガンテス」となるが、ドラゴンクエストなどのファンタジーゲームに登場する巨人で有名だ。
やはり、巨人のルーツを辿るとギリシア神話に行き着く。
地母神「ガイア」は女神でありながら、天と地そのものであり、最初の神であった。ガイアは一人で神々の母となり、その血族が「ティターン」という巨神である。
つまり、ギリシア神話における神とは巨人であったということだ。さらにガイアの子供たちはティターン神族だけではない。
山ほどの大きさの岩を投げることができるほどの腕を100本と50の頭を持つ「ヘカトンケイル」、英語読みのサイクロプスで知られる単眼の巨人「キュプロークス」、山々を投げ飛ばしてオリュンポスの神々と戦いをした「ギガス」など、巨人(巨神族)ばかりである。
旧約聖書の巨人
旧約聖書にも巨人は登場していた。
古代のユダヤ史をまとめた「サムエル記」には、現在のパレスチナに住むペリシテ人の兵士「ゴリアテ」が登場しており、身長6.5キュビト(約290cm)もある。
羊飼いのダビデが投石器で倒したというエピソードは聞いたことがあるだろう。スタジオジブリの「天空の城ラピュタ」に登場する300m級の飛行戦艦にも同じ名が用いられている。
他にも、アダムとイヴ、ノアの方舟、バベルの塔などが記された「創世記」には、神と人間の子たちとして「ネルフィム人」という巨人族が、最後の審判などが記された「第一エノク書」には天使たちと人間の子たちである巨人が登場している。
この巨人たちは3000キュビト(1350m)もの身長があった。これは、富士山の富士宮口五合目から山頂までの高さと同じだ。
北欧神話の巨人
霜の巨人「ヨートゥン」は、最高神オーディンが長となった「アース神族」と敵対する精霊の種族である。
北欧神話では、9つの世界から出来ているとされるが、彼らが住むのは「ヨートゥンヘイム」という世界であり、大自然によって人間世界から隔てられていた。
そもそも、彼らを指す jotunnという古代ノルド語は、英語や古代ゲルマン語の「食う」の由来とも言われているため、「人食い」の一面を持つ巨人だったようだ。
一般的にはトロルの名で知られるこの巨人たちは、混沌を象徴し、大自然が持つ破壊的な荒々しさを表している。この巨人たちは、醜悪な容姿を持ち、悪役として登場していた。
山の巨人もおり、こちらはアース神族の王国であるアースガルズの城壁をその怪力で修理している。自ら申し出たというこの巨人は無名の巨人だったというが、「石工」という技術を習得した巨人であり、その点では「鍛冶」の名人だったギリシア神話のキュープロスとの共通点が見える。
朽ちたノアの方舟
欧州以外にも、インド、中国、日本、北欧などでも巨人伝説は残るが、「巨人が実在した」と考える人はまずいないだろう。
しかし、ノアの方舟が実在していることは知っているだろうか?
その物語については説明するべくもないが、ノアたちを乗せて漂流した方舟はアララト山に漂着した。そうした旧約聖書の記述を元に今まで多くのものが方舟を探している。そもそも、アララト山はトルコの東にある標高5,137mの山で、富士山と同じ「成層火山」として円錐形の美しい形をしている。しかし、その標高もあって、純粋な科学調査のためだけに簡単に登頂できるものではなかった。
2010年、トルコと中国の考古学者たちによる合同チームがアララト山の標高約4000mで発見した木製の構造物を発見。炭素年代測定によって、約4800年前のものだと判明した。
これは時期的にも聖書の大洪水が起こった時期と一致していたのだ。もちろん、方舟だと決定付ける証拠はないし、考古学会では否定的な意見が強い。
アララト山のノアの方舟らしきGoogle Earthの写真 ↓
Google Earthで
39 26’26.69″N,44 14’04.67″E
で検索するとノアの箱船らしき場所に飛ぶことができる。
消えた巨人の楽園
昔から、定説に異議を唱えると眉をしかめられるのが歴史の常である。
天が動くのではなく大地が動いていること。恐竜は巨大隕石の落下によって絶滅したこと。そして、巨人がかつてこの地球の支配者であったこと。
今までも巨人のものとしか説明できない巨大な人骨のようなものが発見されてきた。しかし、それらも学者の嘲笑とともに人々の記憶から消えてしまったのだ。だが、巨人が実在したという「ヒント」はある。人間の住まない家は、レンガ造りであっても約500年で痕跡すらなくなるほどになにもかもが風化してしまうという。
さらに旧ソ連の科学者でもあったアレクサンドル・ゴルボフスキーは1966年に書いた「失われた文明」のなかで12,000年前の超古代文明について記している。
つまり、12,000年もあれば、文明の跡が消えるには十分な長さなのだ。それまでに巨人の楽園が地上に存在していた可能性は十分にある。12,000年前といえば、アフリカを脱した人類が北米にたどり着いた頃。さらにムー大陸が太平洋に沈んだ頃でもある。
人間のDNAのなかに巨人と接触した記憶が残されていてもおかしくはない。
最後に
果たして、超古代に巨人は存在したのか。
現在の人間よりも背の高いゴリアテほどの身長ならば、ありえるだろう。だが、第一エノク書に登場する1,350mの巨人もいたと思える考察がある。
それは、古代の地球上が巨木世界であったとする説だ。
これをもとに考えると、より存在した可能性は高くなるといえる。
この記事へのコメントはありません。