海外

中国のマイナンバーカードの秘密 「命の次に大切?」

マイナンバー

日本でも国民情報の記号化(マイナンバー制度)が本格的に推進されはじめた。

積極的に登録させるためにマイナンバーポイントなるものまで支給された。 2023年2月末日までの統計によると、マイナンバーの普及率は63.5%だという。

世界を見てみると、マイナンバー制度を導入している国は結構ある。 アメリカ、韓国、中国、台湾、アイスランド、オランダ、カナダなどだ。

一方で、マイナンバー制度にはプライバシーや個人情報保護の懸念も存在する。個人の行動や取引履歴が集中管理されるため、情報漏洩や悪用のリスクが生じる可能性もある。この点に対してセキュリティ対策や監視体制の強化が求められている。

今回は、中国のマイナンバー制度を見てみよう。

中国のマイナンバー制度は、社会の発展や経済の活性化を目指す一環として導入されたものであり、その効果や課題は今後の展開が注目されるところである。

イメージ画像 : 中国の身分証

中国のマイナンバー

中国人では、18桁の番号である「身分證」が与えられる。

子供が生まれて登録されると、それぞれに番号が割り当てられ、16歳になると身分証が発行される。

身分証を持っていれば、電車のチケットを購入したり、ホテルに自分名義で宿泊することができる。携帯電話なども身分証の提出が必要だ。「何をするにも身分証が必要」とされるため、命の次に大切なものといっても過言ではない。

数字の1の位から6の位は、生まれた場所の番号となる。

1~2桁は省、3~4は市、5~6桁は区や県を示す。7~14桁までは生年月日で、15~16桁は戸籍のある場所の派出所の番号である。1~6の数字は、その人が最初に登録した場所を示し、現在の住所や戸籍には影響されない。

17桁の数字は、奇数は男性で偶数は女性となる。18桁の最後の数字は、前の17桁の数字からランダムに割り出される。

ときに最後の数字は「X」になることがあるが、それは10を意味し、10にすると桁が一つ多くなってしまうため、Xで表記することになった。

命の次に大切

上記のように個人情報が詰まっているため、身分証を無くした場合は大変な事態になることがある。

例えば、95年以降に生まれたある女性は身分証を紛失してしまい、三年もの間そのことに気づかなかった。しかしその後、驚くべき事実が明らかになった。

200万元(約4000万円)の借金を抱えていた」という。身分証が不正に使用され、巨額の借金を抱え込んでいたのだ。

中国では、身分証を紛失したまま気づかないでいると、さまざまな被害に遭うケースが多く報告されている。「マイナンバー」制度の導入により、個人情報の管理が一元化されているため、紛失した身分証が不正に使用されると、悪質な犯罪行為に巻き込まれる可能性があるのだ。

不正なクレジットカードの発行や借金の背負いだけでなく、盗まれた身分証を利用して犯罪組織の一員にされるケースも報告されている。身分証の情報は、個人の信用や安全を脅かす要素となり得るのだ。

そのため、もしうっかり身分証を紛失してしまった場合は、速やかに戸籍のある派出所に足を運び、遺失届を出すことが重要だ。紛失したことを証明してもらい、その日以降に不正に使用された場合は無効化する必要がある。

また、盗まれた場合も同様で、最寄りの警察署に被害届を提出し、盗難事件として捜査を依頼することが必要だ。

「マイナンバー」の不正使用による被害を最小限に抑えるためには、迅速な対応が求められる。

身分証のコピー

イメージ画像 : 身分証のコピー取扱

もしも何かの手続きのために身分証をコピーして、それを別の人物や会社に提出しなければならない場合も、細かな規定が存在する。

コピーの上に青か黒のペンで三行に分け、利用目的や提供先を明記し、それ以外の目的には使用できない旨を明示することが求められる。

さらに、提供した日時を明確に記載するよう要求されるのだ。

戸籍がない人たち

中国では以前、一人っ子政策が推進されていた。

もしも二人目の子供を産んでしまうと、仕事を失ったり罰金を課せられたり、厳しい制限があった。

二人目の妊娠が政府に発覚すると、堕胎を強制されることもあり、時には無理やり連れて行かれることもあった。

しかし、政府が全ての家庭を取り締まることは到底難しい。不可能と言ってもよいのだ。

こうした状況の中で、密かに二人目の子供が生まれると戸籍を持つことができない。戸籍がないと、教育を受けることも困難になる。

この無戸籍の子供たちの状況は、現在大きな社会問題となっている。

関連記事 : 【50年連続で不自由な国ランクイン】 中国の身分証における監視社会の実態とは

 

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 本場中国の餃子文化について調べてみた 「餃子の歴史 日本餃子との…
  2. 【16年監禁】突如現れた謎の野生児カスパー・ハウザー 「その正体…
  3. 日本の社畜文化とコロナ 「風邪でも休みにくかった日本人」
  4. 近年の米中関係を振り返る ー中国にとって厄介だったバイデン政権
  5. 『歴史上最も大きな生物』 シロナガスクジラが来たぞ! ~屏東県国…
  6. 中国のビックリする料理 【牛糞、ネズミの踊り食い、猿の脳みそ】
  7. 【スエズ・パナマ】 世界の運河について調べてみた
  8. 世界最強の戦闘民族「グルカ族」の歴史と強さの秘密

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

5月頃、コンクリートの上にいる「小さな赤い虫」の正体 【人に害はあるのか?】

5月ごろになると、ベランダやコンクリートの壁、花などに「大量の小さい赤い虫」が湧いているのを…

夜の濃厚接触!?ハッテン場の知られざる世界

近年話題のLGBTにボーイズラブ。男同士の性愛関係はまだ表沙汰になるのがしく、良くも悪くも好…

重曹の万能さと使い方について調べてみた

重曹と言えば、食品のあく抜きや掃除に使うことができることで知られている。また、食品添加物…

『ホンダの中国・広州EV工場新設』背後に潜む「地政学リスク」の火種とは

ホンダが中国・広州にEV(電気自動車)専用工場を新設し、建設費約730億円を投じてエンジン車からのシ…

餃子ライスが美味しい東京のお店 12選【餃子の歴史】

餃子はすっかり日本に定着している中華料理。今や日本料理の1ジャンルといっても過言ではないです…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP