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年間読書数100冊超えの筆者が選ぶ!作家別オススメ作品《江國香織・編》

この記事では、年間100冊以上の小説を読む本の虫・アオノハナが、作家別のおすすめ作品についてご紹介していきたいと思います。

国内国外ジャンル問わず、さまざまな小説を読みふけってきた筆者だからこそ、他の王道ランキングとは一味違った、オススメの作品をご紹介できるかと思います。

第一弾は、直木賞受賞作家でもあり、日本の女性作家の中でも抜群の語感力・表現力を持つ、江國香織さんの作品について選んでいきたいと思います。

江國香織とは

まず初めに、江國香織さんの簡単なプロフィールについてまとめてみました。

江國香織(えくに・かおり)
1964年東京都調布市生まれ。1984年に「草の丞の話」でデビューすると、「きらきらひかる」や「落下する夕方」「神さまのボート」など、美しい日本語と少し不思議な世界観が人気となり、直木賞をはじめ、山本周五郎賞や紫式部文学賞、谷崎潤一郎賞など、数々の文学賞を受賞している。
また、小説の他に、海外の絵本や児童文学の翻訳、古典の現代語訳や美術評、詩作などさまざまなジャンルの文学を手掛けている。
父はエッセイストで俳人の江國滋(1934~1997)。

江國香織さんの作品の魅力といえば、なんといってもその圧倒的な日本語力です。
彼女の作品を読んでいると、「日本語とはこんなに美しいことばなのか…」としみじみと感じてしまいます。

江國香織作品の心理描写や背景描写は、とても繊細でこまやかで、時には情熱的です。
そのため、視覚を通してだけでなく、味覚や聴覚など、読み手の五感に直接訴えてくるものが多いのです。

特に食事の描写、肌から感じるものの描写が圧倒的です。

江國香織作品の物語には、ドラマチックなストーリーはあまり存在しません。
そのため、物語の中の時間はいたって静かに流れていくのですが、とにかく描写のディティールがすさまじいのです。

ある文芸評論家は、そんな江國香織作品のことを「無駄の美」と称しています。
必要ではないものかもしれないけれど、だからこそ美しい。
江國香織作品には、そんな贅沢な時間が流れているのです。

江國香織 オススメ作品①『ホリー・ガーデン』(1998年刊行)

<あらすじ>

高校まで同じ時間を過ごした親友、果歩と静枝。
2人は外見も性格も正反対であるものの、ふと気づくと相手がそばにいて、お互いを知り尽くしている関係である。
世間的には、幼馴染みであり親友でもある、大の仲良しの2人なのですが、ここまで相手を知り尽くしているからこその葛藤が生まれ始めて…

<おすすめポイント>

女同士であるからこそ、唯一無二の親友だと思える部分と、そんな親友にモヤッとした感情を抱いてしまう複雑な気持ちが繊細に描かれています。
一見、自立した大人の女に見える静枝は、長いこと不倫関係を清算できずにいますし、ふわふわしていて楽観的に見える果歩は、昔の恋愛を引きずっていて、その傷がら立ち直れずにいます。

2人はともに30歳になったのですが、高校生の頃のようにキラキラした面だけではなく、大人になったからこその葛藤や、閉塞感を感じています。
そのため、互いのことを思いやっているはずなのに、顔を合わせるとピリピリとした空気が生まれてしまうのです。

そんな2人の不器用さや葛藤が、自分が大人になるにつれてとても共感できるのです!
日々を戦いながらも楽しんでいる、そんな大人の女性に読んでいただきたい一冊です。

江國香織 オススメ作品② 『とるにたらないものもの』(2006年刊行)

<あらすじ>

とるにたらないけれど、かけがえのないものもの。輪ゴムやレモン搾り器、石鹸やりぼん。日常の中の、ささやかだけど愛おしいものたちにまつわる記憶や思い。

<おすすめポイント>

江國香織さんは小説家として有名ですが、実は多くのエッセイも刊行されています。
それらエッセイの中でも、特にオススメなのがこちらの作品。

このエッセイに出てくるものたちは、日常生活の中でいつも使っている、本当にささいなものばかり。
本来ならば気にも留めないような、そんな小さなものたちに関するエピソードや、それらのこだわりについて、江國香織さんならではの瑞々しい感性が炸裂しています。

特に筆者が大好きなのは、「フレンチトースト」「ピンク色」について書いてある章。
フレンチトーストに関しては口の中いっぱいに甘い味が広がって、つい食べたくなってしまいます。

「ピンク色」に関しては、女の子の永遠の憧れであるピンクという色に関して、こんなに豊かに描写ができるのか…!と感動してしまいます。

江國香織 オススメ作品③『なかなか暮れない夏の夕暮れ』(2017年刊行)

<あらすじ>

本ばかり読んでいる稔を取りまく人々は、みな個性的。
姉の雀、元恋人の渚、その娘の波十に、稔の友人の大竹と淳子。
大人の恋と官能、そして多くの人々の日々の何気ない幸福を描く長編小説。

<おすすめポイント>

若い頃の江國香織さんの作品は、とても情熱的な恋愛小説が多かったのですが、この本を執筆された時には、彼女は50代になっています。
50代になった江國香織さんは、新たな作風に挑戦していて、初期の作品とはまた違った味わい深さがあるのです。

主人公の稔は50歳の男性なのですが、とにかく本が大好きで、この小説の中には稔の読んでいる小説がたくさん出てきます。個性的な物語の構成なので、人によってはこの本は読みにくいかもしれませんが、初期の江國香織さんの作品をあらかた読んでしまったという“江國香織上級者”にはぜひ読んでほしい作品です。

物語の登場人物はなんと33人!こんなに多くの人の日常を書き上げることができるって、本当にすごいことだと筆者は思っています。

最後に

この記事では、筆者の独断と偏見による「江國香織」作品のおすすめをピックアップしてみました。

圧倒的な美しさを持つ日本語の表現と、繊細な観点が魅力的な江國香織さん。
近年では積極的に新作を出版しており、2020年2月には最新作『去年(こぞ)の雪』が刊行されました。

この作品も、「なかなか暮れない夏の夕暮れ」のように、多くの登場人物が主人公になったアンソロジー的一冊になっています。

江國香織さんのエッセンスを最大限に味わうことのできる超大作だと思いますので、ぜひともお手にとっていただければと思います。

 

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アオノハナ

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