神話、伝説

ギリシア全知全能の神「ゼウス」は好色で浮気しまくりだった

ギリシア神話で最も有名な全知全能の神・ゼウス

タイタン神族と怪物達を打ち負かし、天界を支配し、ゼウスの雷は宇宙を破壊できるほど強力だとされている。

しかし、ゼウスの日常のほとんどが、女神や人間の女性関係にあった。

正妻「ヘーラー」には、鳥に変身して求愛

ゼウスとヘーラー (アンニーバレ・カラッチ/画, 1597)

正妻・ヘーラーは、もともとギリシア先住民が崇拝していた女神で、しかもゼウスの姉であった。

ヘーラーは「貞淑な身持ちの固い」女性だった。そのため、ヘーラーは当初「女好き」のゼウスを拒んでいた。

しかしある日、ヘーラーは寒さで震えている一羽のカッコウを見つけ、可愛そうに思い抱きしめ温めていると、突然そのカッコウがゼウスに変身したのである。

ゼウスの「浮気癖」を知るヘーラーは拒んだが・・熱心なゼウスの求愛についに折れてしまうのだった。

ゼウスのせいか元々の性格からか、ヘーラーは嫉妬深い恐妻としても有名である。

ゼウスの最初の妻・女神メティスとアテナ誕生


ヘーラーの前の妻・知恵の女神メティスは、ゼウスの子供を懐妊した。

しかし祖母ガイアに「この妻から、ゼウスに変わる支配者が産まれる」と預言された。それを恐れたゼウスは女神メティスを飲み込んでしまった。

ゼウスはメティスを飲み込んだものの、メティスは既に妊娠しており、その胎児はゼウスの頭部に移って生きていた。

ゼウスは激しい頭痛に襲われプロメテウスに頼み、頭を斧で割ってもらう。するとその中から戦いの女神アテナが誕生したのであった。

テュロスの王女「エロウペ」を「牡牛」で拉致

ヘーラーと結婚した後もゼウスの「浮気癖」は変わらず、浮気を繰り返すのだった。
テュロスの王女エロウペに、警戒される事なく近づくため、ゼウスは「牡牛」に変身するのだった。

大きく美しい牡牛に化けたゼウスは、なんなくエロウペに近づき、エロウペは牡牛に乗りクレタ島まで連れて行かれてしまうのである。

そこでゼウスと結ばれ、後のクレタの王「ミノス」ら三人の息子を産んだ。

英雄ペルセウスの母・ダナエには黄金の雨!?

メドゥーサの首を切り落としたペルセウス。アントニオ・カノーヴァ作

アルゴスの王アクリシオスは「娘が産む息子に殺されるであろう」という神託を受け、娘ダナエを青銅の部屋に閉じ込めてしまう。

それを見ていたゼウスは彼女に恋をし、ここでも「変身」し黄金の雨になり、屋根のわずかな隙間からダナエの膝に注ぎ落ち、想いを遂げる。

そしてダナエは男の子を出産する。

神託の実現を恐れたアクリシオスは、ペルセウスと名付けられたその男の子と、妻ダナエを木箱に入れ、海に流してしまうのだった。

トロイア戦争の美女ヘレネの父親もゼウスである。

水浴びをしていたスパルタ王妃レダの美しさに、ゼウスは「白鳥」に変身し、身ごもらせ生まれたのが「ヘレネ」である。

正妻ヘーラーに攻撃されるゼウスの愛人たち

ゼウスとヘーラー (アンニーバレ・カラッチ/画, 1597)

前述したゼウスの正妻ヘーラーは「結婚の女神」でもあった。

大神ゼウスを攻撃するわけにもいかないヘーラーは、ゼウスの愛人達に矛先を向けるのである。

ヘーラーに仕えていた女神官イオ

ヘーラーの視線を感じたゼウスは、慌てて愛人だった女神官イオを牛に変身させる。

それを知っていたヘーラーは「美しい牛ですね。わたくしに下さい」とゼウスから牛(イオ)を譲り受け、百眼の巨人の元で鎖に綱がせた。

ゼウスはまったく手が出せず、息子のヘルメスに頼み、百眼の巨人を笛で眠らせた。

その間に牛(イオ)は逃げようとしたがそれに気づいたヘーラーは、巨大アブの大群に牛(イオ)を襲わせるのである。

ゼウスはヘーラーに頭を下げ許しを請う。

エジプトのナイルで元の姿に戻ったイオは、そこで後のエジプト王エパポスを産むのである。

デバイ王女セメレ

夫ゼウスが、デバイ王女セメレとも浮気していることに気づいたヘーラーは女官に化け、王女セメレに「王女様をたぶらかす為にゼウス様の名を語っている輩かもしれません。正体を確かめてみては?」と王女に告げる。

王女は妻ヘーラーの企みとは知らずに、ゼウスに「本来の姿を見せてくれ」と告げる。

やむなくゼウスは王女セメレの目の前で「稲妻と落雷」に包まれた本来の姿を現し、王女はその力に耐えきれず焼け死んでしまった。

「大熊座と小熊座の由来」になったニンフのカリスト

狩猟・貞潔の女神アルテミスに純潔を誓ったカリストは、ゼウスに一方的に惚れられ犯されてしまう。

日に日に大きくなっていくカリストのお腹に気付いたアルテミスは、誓いを破ったカリストを問答無用で森から追放する。

その後、男子を出産したカリストはヘーラーの制裁を受け、熊に変えられてしまう。カリストが産み落とした男子はアルカスと名付けられ、母の事を知らずに成長するのである。

月日は流れアルカスは15歳になり、狩猟で森に入り大きなヒグマに出くわせる。

そのヒグマは母カリストであった。
カリストは、成長した自分の子の姿に嬉しくなり抱きしめようとするが、アルカスは大きなヒグマが襲ってきたと思って槍を構える。

間一髪ゼウスが二人を天上にさらい「大熊座と小熊座」に変えたが、星座になり天上にあがった事さえ許せずにいたヘーラーは「この二つの星座を休ませないで」と願い、この二つの星座は地平線に沈まず、絶えず夜空に輝く事になったのである。

ヘラクレスの母 アルクメネ

ヘーラクレースを産むアルクメーネー

英雄ヘラクレスの母・アルクメネの美しさに惹かれたゼウスは夫の留守を狙い、夫に姿を変え関係を持ちアルクメネをはらませ、彼女は双子のヘラクレス・イピクレスを産んだ。。

ヘーラーはヘラクレスの誕生を遅らせたり、生後8か月のヘラクレスに毒蛇を放ち殺そうともした。

しかし、皮肉にもヘーラーの迫害は、逆にヘラクレスの超人的な力を見せつける場面にもなるのである。

浮気癖のゼウスの節操のなさは、結婚の女神だったヘーラーを嫉妬に狂う「鬼女」に変えてしまったのである。

「ギリシア神話は色々な意味で、あらゆる話の根源であると言えるかもしれない。

 

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草の実堂編集部

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草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

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コメント

    • タツヤ
    • 2026年 5月 05日 11:03pm

    エロウペではなく、エウロペあるいはエウロパではありませんか?ちなみにEuropeの語源でもあります。

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    • ご指摘ありがとうございます。表記については「エウロペ」「エウロパ」など複数の表記が見られ、「エウロペ」も一般的に用いられる表記の一つです。
      記事では表記の統一方針に基づいておりますが、今後も分かりやすさを意識してまいります。貴重なご意見ありがとうございました。

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