歴史

世界最初の貨幣と古代の貨幣の歴史

世界には様々な貨幣が存在している。人類は貨幣を古代から使用してきた。

はじめ人間ゴン」というアニメーションでは作中、石で出来た貨幣が出てくるがこれは本当に存在していたのであろうか?

今回は古代の貨幣の歴史と貨幣経済の仕組み、更に変わった貨幣について解説したい。

世界最初の貨幣と古代の貨幣の歴史

世界初の貨幣として記録されているのは古代メソポタミア文明である。
を使って取引をしていたことが、楔形文字による記述で残っている。

これは現在の硬貨のような形ではなく、秤を使って銀を重さを量って取引していた。
世界初の貨幣は、どうやら石の貨幣ではなかったようだ。

紀元前14世紀ごろのエジプトでも天秤の壁画が存在していたことから、金属を秤って取引をしていたことが推測される。

現在発見されている硬貨の中で一番古いのは、紀元前7世紀にリディア王国というトルコ西部にあった国の「エレクトロン硬貨」と呼ばれる硬貨である。

世界最初の貨幣と古代の貨幣の歴史

エレクトロン貨(エレクトロンか、Electrum) wikiより引用

金と銀の合金によって作られたこの硬貨は、金と銀の割合や重さを変えた複数の硬貨が存在し、それぞれ価値が異なっていた。

お金の単位は「スタテル」で、表面には王の紋章であるライオンと硬貨の重さが記されていた。
貨幣の誕生で物々交換や金属の重さを秤って取引していた社会に、貨幣という「物を交換させるための物」が誕生した。

リディア王国の金貨を参考に古代ギリシアが硬貨を使うようになり、そこから交流のあったペルシャ、そして紀元前5世紀末のフェニキアのテュロス、カルタゴなどの地域にも硬貨が広まった。

古代アテナイのテトラドラクマ銀貨

エジプトではアレキサンダー大王の征服後、マケドニア人の王朝であったプトレマイオス朝の時代から使用している。
インドにおいてもこの時代にギリシアの文化を受けて硬貨を使い始めた。

アレキサンダー大王の東方遠征によってエジプト、インドにギリシア文化が広まったことが大きい。

古代の中国はどうだったかというと、の時代は貝殻(※タカラガイ)を使っていたようである。

世界最初の貨幣と古代の貨幣の歴史

貝殻(タカラガイ)

その後のの時代では、亀の甲羅もお金として使う様になり、貨幣が多様化していく。

王朝の時代、始皇帝が行った政策で「度量衡」がある。これはそれ以前の国によってバラバラであった単位を統一する政策で、長さ、重さ、そして貨幣価値も含まれていた。秦はこの時に銅製の硬貨を採用した。

古代ローマの時代になると硬貨は青銅貨の「アス」が最初に作られ、ギリシア様式を採用した。

ギリシアのポリスはそれぞれが独自の硬貨を発行していたが、ローマは各地を征服して単一の政治機構のもとで貨幣制度を統一した。
アジアとの貿易も活発になり、遺跡から「デナリウス銀貨」や「アウレウス金貨」がインドの遺跡から発見されている。

世界最初の貨幣と古代の貨幣の歴史

デナリウス銀貨

ローマ帝国は兵士の給与に銀貨を大量に使ったため、地中海世界では銀貨、および銀貨を補う高額通貨の金貨と、小額通貨の銅貨が定着した。

貨幣の価値を決めているもの

貨幣の流通量や価値を決めているのは「」(ゴールド)である。金は世界中で絶対的な価値として存在している。
国は金を使用した通貨を発行し、金の含有量によって貨幣価値が決まる。

しかし金だけでは持ち運べる硬貨の量や金自体の量に限界がある、このことを解消するために金を貨幣の保障として補助貨幣を流通させる、これらの一部が銀貨や銅貨である。こういった金を貨幣の保障として通貨発行するのが金資本制である。

金の流通量が多すぎた場合、金の価値は低下する。すると連動して銀貨、銅貨の価値も低下し、結果的に物価が上昇してインフレーションが起きるのである。
お金を沢山作ればみんなお金持ちになるという短絡的な考えは、実は非常に危険である。
かつてこのようなことをしてインフレーションを起こし大変な事態になった国がある。

ローマ帝国である。

古代ローマ時代、皇帝ネロは金貨に他の金属を混ぜて成型し、大量に金貨を発行した。その結果、金の含有量が減り信用を失った金貨が市場に蔓延してインフレーションを招いてしまった。

インフレーションの結果、物価は1年で23%近くも上昇し続けた。

世界の変わった貨幣

世界最初の貨幣と古代の貨幣の歴史

刀銭

刀銭(とうせん)

刀銭は、中国で紀元前210年まで用いられてきた刀の形を模した青銅製の貨幣である。刀の形は狩猟民族が建てた国を象徴しているとされる。

春秋戦国時代、斉・燕・趙・魏で鋳造された。

刀銭はとても重く外出時に何本も持ち歩くことは出来ず使い勝手が悪かった。中国統一を成し遂げた始皇帝は刀銭を廃止し、穴の開いた円形のコイン通貨を発行した。

お給料を意味する「サラリー」の語源はラテン語の「サラリウム」で、これは「塩のお金」を意味する。

米や塩は貴重品であり長持ちして持ち運びも容易だったので、物品貨幣として便利だった。

ローマ帝国では兵士や市民にお給料として塩が支給されていた。

文明の進歩に影響を与えた貨幣制度

貨幣の登場は文明に大きな影響を与えた。貨幣登場以前は物々交換で物を取引していた。
例えば、私の作った小麦1キログラムと、あなたのとった魚1匹を交換する場合は、互いに納得がいけば交渉成立である。

しかし、物々交換では必ずしも互いの物が交換材料になるとは限らない。このことを解消してくれるのが貨幣である。貨幣が物と物の間に入ることで取引に自由が生まれ活発になり、経済が発展していく。

他国との貿易が活発になることで国は発展し、より大きな国が誕生し、文明も進歩していったのである。

 

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草の実堂編集部

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草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

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