西洋史

【冷戦はいつから始まったのか?】 第二次世界大戦中、ソ連が抱いた不信感とは?

冷戦は第二次世界大戦後に始まった

多くの人はこのように考えていますが、その対立の火種はすでに大戦中から燻っていました。

現代史では、冷戦による対立を中心にして語られることがほとんどであるため、冷戦の原因をきちんと理解することが重要です。

今回の記事では「冷戦の対立構造はどのように始まったのか?」について見ていきましょう。

第二次世界大戦中にソヴィエト連邦が不信感を抱いた、資本主義側の態度について詳しく解説していきたいと思います

戦争には勝った、しかし…

画像 : 第二次世界大戦 public domain

第二次世界大戦は「連合国」と「ファシズム」の対立でした。

ファシズムを掲げる国々(ドイツ、イタリア、そして日本)は、ある意味で封建的な国家と見なすことができます。

ファシズム国家と戦ったのは、資本主義を掲げる国々(アメリカ、イギリス、フランス)と、社会主義(共産主義)のソビエト連邦でした。

第二次世界大戦とは、ファシズムの拡大に対抗するため、資本家と労働者が手を取り合って立ち向かった戦争と言えるでしょう。

連合国が勝利を収めたことにより、連合国の間で世界の再分割が行われました。しかし連合国の内部には勝利の余韻のような雰囲気はありません。

アメリカ、イギリス、フランスは資本主義を採用していましたが、ソビエト連邦(ソ連)は共産主義の国でした。

共通の敵であるファシズムに対しては協力関係にありましたが、資本主義と社会主義は本質的に「水と油」のような関係です。

ファシズムとの戦いが終われば、次は共産主義との戦い…」という予感が漂っていたのです。

第二次世界大戦の末期、ドイツの首都ベルリンは陥落寸前となり、あとは日本が残るのみでした。

異様な雰囲気のヤルタ会談

【冷戦はいつから始まったのか?】

画像:ヤルタ会談の様子 public domain

勝利が目前に迫るなか、連合国の首脳たちは、クリミア半島の避寒地ヤルタに集結します。
イギリスはチャーチル、アメリカはフランクリン・ローズヴェルト、ソビエト連邦はスターリンです。

集まった目的は勝者として世界の再分割を決めることでした。テーブルに広げられた世界地図を囲んで、彼らはファシズムが支配していた地域について話し合いました。

ここまでは私たち資本主義陣営が管理することにしましょう」「ここから先はソ連が引き受けます」といった具合です。

各々が世界地図に線を引きながら、管理する領域を決定していきました。

地図上には北緯38度の直線が引かれ、日本が統治していた朝鮮半島について、北部をソビエト連邦が、南部をアメリカが占領することになりました。

しかし会議の雰囲気は重苦しいものでした。勝者による世界の再分割であるにも関わらず、現場の空気はとても張り詰めていたのです。

第二戦線形成問題

【冷戦はいつから始まったのか?】

画像:チャーチルに何度も救援を求めたスターリンだが、救援はなかったため、資本主義側に不信感を募らせた public domain

この雰囲気の背景には、第二戦線形成問題がありました。

第二戦線形成問題とは、アメリカやイギリスに対して、ソビエト連邦が求めた救援が遅れたことを意味します。

まず「第一戦線」とは、ドイツとソビエト連邦との間で行われた東部戦線のことを言います。この戦線だけで、両国は第二次世界大戦中に約3000万人近くの死者を出しました。

第二次世界大戦における各国の死傷者数は「日本大百科全書」によると、ソビエト連邦が2500万人、フランスが206万人、イギリスが200万人、アメリカが150万人、ドイツが1000万人、日本が950万人、イタリアが646万人となっています。

第一戦線で甚大な被害を受けたソビエト連邦は、同じ連合国であるアメリカとイギリスに対して救援を要請します。

ソビエト連邦の男性の20%が死亡している。アメリカとイギリスには、ドイツの西側に第二戦線を形成し、後方から攻撃してほしい」と伝えていたのです。

ファシズムと共産主義が共倒れすればいい

画像:共産主義を心から嫌ったチャーチル public domain

しかし同じ連合国であるにも関わらず、アメリカとイギリスは救援行動に積極的ではありませんでした。

たしかにフランスはすでにドイツに占領されており、アメリカは日本と太平洋で戦っていました。

しかしイギリスに関して言えば、救援できない大きな理由はありません。ドーバー海峡を越えて、手薄になったドイツ軍をただ傍観しているだけです。

チャーチルの本心は、ファシズムと共産主義が共に弱体化することでした。

ファシズムと共産主義が共倒れになれば良い。資本主義の陣営は、何もせずに見てればいい」という考えがありました。

第二次世界大戦後、共産主義陣営との対立が必ず生じると予想したイギリスは、大戦中にソビエト連邦の力を削ごうと計画していたのです。

参考文献:ゆげ塾(2017)『3時間半で国際的常識人になれる ゆげ塾の速修戦後史 欧米編』ディスカヴァー・トゥエンティワン

 

村上俊樹

村上俊樹

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“進撃”の元教員 大学院のときは、哲学を少し。その後、高校の社会科教員を10年ほど。生徒からのあだ名は“巨人”。身長が高いので。今はライターとして色々と。
フリーランスでライターもしていますので、DMなどいただけると幸いです。
Twitter→@Fishs_and_Chips

コメント

  1. アバター
    • 永井幸雄
    • 2024年 2月 20日 4:06pm

    😀😙あのヤルタ会談が原因で北方領土問題や朝鮮半島の分断が起こる原因になった🤗😙これもアメリカが主導で引き起こされた事だ🇺🇸何もかもアメリカが原因を作っている😑😢ヤルタ会談の結果、朝鮮民族は、南北に引き裂かれて、自らヤルタ会談の犠牲になったのだ😑🇺🇸

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    • アバター
      • 永井幸雄
      • 2024年 2月 20日 4:14pm

      🇺🇸🇰🇵🇰🇷もし、ルーズベルトが生きていれば、北海道の北半部も、ソ連領になっていてきっと日本も分断されていたに違いない🇺🇸🇰🇵🇰🇷日本も本当に危なかった?!🇯🇵🇺🇸🇰🇷🇰🇵

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  2. アバター
    • 永井幸雄
    • 2024年 2月 20日 4:10pm

    🇰🇵🇰🇷朝鮮戦争が起こったのも、ヤルタ会談が起因している🇺🇸🇰🇵ヤルタ会談が朝鮮民族の悲劇の始まり🇰🇷🇺🇸

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